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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-58.ドリルの威力

 無手になった黒タイツの後ろに回り込み、俺はドライバーを奴の背中に刺した。痛みでのけぞった奴の頭を、トンファーが何度も殴打する。


「悠馬。後ろからも」

「ああ。麻美を守るの忘れるなよ」

「わかっているよ」


 トンファーの片方を渡されたから、長い方の棒を握って飛び出た棒を鎌のように黒タイツの頭頂部に刺す。

 これが致命傷になったらしい。


「先輩! いつでも大丈夫です! フィアイーターをこっちに!」

「わかってる! ほら! ボルトならおとなしく人間に使われてなさい!」

「フィアアアァァァァ!!」


 黒タイツもあらかた倒されていて、魔法少女とラフィオで四人がかりでフィアイーターをボール盤の方に引きずっている。


 ラフィオが巨体でのしかかるようにしながらフィアイーターの体を押して、セイバーとライナーが剣と足でガンガン叩くことで後退させていた。ハンターの矢は、抵抗する怪物の手足を射ていた。

 動きを止めるほどではないけど、少しは阻害できてるらしい。


「よし! 載せるわよ! 横から! せーの!」


 ボール盤の台座に正面から突っ込ませると、六角の頭が支えてしまう。下手をすればドリルが折れてしまう。


 だから俺も協力する。フィアイーターの頭を両腕で掴んで、力を込めて台座の高さまで押さえつける。そして横から差し込むように台座に乗せた。

 暴れる奴の手足を全員で押さえつけて。


「みんなドリルに巻き込まれないよう気をつけて! 危なそうなら言ってね! 麻美! やって!」

「はい!」


 安全管理に抜かりのないセイバーの指示に呼応して、麻美がハンドルを下ろした。


 既に回転しているドリルが、ハンドルに合わせて下降。フィアイーターのネジ部分に刺さっていく。頭のすぐ下だから、喉に当たる箇所なのかな。

 ドリルが入り込んでいくにつれて、細長い捻れた金属がドリルの溝を通って出てくる。


「金属粉とかが飛んできたら危ないから、あんまり近くで見ないでね!」

「先輩、切子が少ないですよ」

「確かに。やっぱり金属なのは表面だけで、中は真っ暗な闇なのねー」

「表面って言っても、それなりに分厚くはありますけどね」

「フィアァアアァアァァアアァ!」


 喉をドリルが貫通しているのに、フィアイーターは苦しげなを声をあげた。根本的に普通の生き物じゃないな。


「逆回転。抜いて。別の所を刺す」

「はい!」

「悠馬! こいつの体をずらして!」

「わかった!」


 ドリルが上がったのを見て、俺はフィアイーターの頭を抱え込んだまま引っ張った。ネジが台座の端に当たってガタガタと上下に揺れる。

 さっき開けた穴よりも少し下に、ドリルが刺さっていく。その穴を覗き込んだけど、コアは見えなかった。


「先輩! さっきより刃が通りません!」


 麻美の言うとおり、ドリルはフィアイーターの胴の半ばまでは刺したけれど、そこから下に行けなさそうだった。どれだけハンドルに力を込めても動かないみたいで。


「ドリルが折れたとか? 普通じゃない使い方してるからね」

「うちの製品じゃないからですよ!」

「こんな安いメーカーのドリルなんて簡単に使い物にならなくなるのよねー」


 それはもういいから。


 ドリルを逆回転させて元に戻す。ドリルに異常はない。

 つまり。


「コアに当たったんだ!」


 ラフィオが言うと同時に、フィアイーターは焦ったように動きを強めた。正解のようだな。

 コアは人間の道具では壊せない。一方で、人間の道具を壊せるほど硬いものでもない。


「よし! この穴に剣をねじ込めば砕けるわね!」

「いや。セイバーの剣は穴より太いだろ」

「そうかもしれないけど!」

「わたしがやります」


 ハンターが、ボール盤の上にぴょんと飛び乗った。


 危ないから、普段は絶対にしてはいけないこと。さっさと終わらせるべく、俺はフィアイーターの体を台座からずらした。

 穴がドリルの真下にあって狙えない状態だったのが、見えた瞬間にはハンターは狙いを定めて、射る。


 矢は正確に穴に吸い込まれて、その下にあるコアを射抜いた。


「フィアッ……フィ……」


 弱々しい声をあげながら、フィアイーターは黒い粒子と共に消えていき、小さなボルトが残った。


「ハンター。そこは、人が乗ったら駄目なところよ。降りなさい。労災になっちゃう」

「はーい。セイバー、なんか仕事できる人って感じですね」

「そうよ。大人になったら、こういう態度も時には必要……」

「ラフィオー! モフモフー!」

「おいこら! やめろ!」

「せっかく格好いいところ見せたんだから、話しを……」


 セイバーの格好がつかないのは、いつものことだな。


「悠馬。あそこに人が転がってたけど」

「ああ。……エリーを殺した奴らだ」

「そっか」


 ライナーと一緒に、京介なる男の方を見る。

 力なく床に横たわっていた。自身の破滅を悟っているのだろうな。


「みんなご苦労さま。エリーの遺体は警察で引き取ったわ。葬儀会社にも連絡している。あなたたちは帰りなさい。警察が規制線を張ってるから、しばらく人は来ないはずだけど」


 樋口が工場の扉から入ってきて、事務的に知らせてくれた。それから。


「京介たちはいる?」

「そこに転がってる。こいつらはどうなる?」

「逮捕されて、取り調べを受ける。それから裁判にかけられる」


 普通の罪人として。

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