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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-57.ボール盤

「こいつ硬い上に重いですよ!」

「そうね! 一度で駄目なら何度でもやるの!」

「それはいいですけど! やり方考えましょうよ! 相手が地面に足つけてたら、どんだけ蹴っても少ししか進みません!」

「じゃあなによ!? ジャンプでもさせればいいって言うの!?」


 言い合いをしながら、剣と足でフィアイーターの両腕をそれぞれ受け止めて、なんとか工場まで押し込もうとしていた。

 連携はうまくいってあたり、仲はいい。言い合いしてるのも、単なる軽口。


「そうですよジャンプさせられませんか!?」

「無茶言わないでよ! それともなに? ちょっとあんたそこでジャンプしなさいとか、昔の不良のカツアゲみたいなこと言わなきゃいけないの!?」

「言ってくださいよ頑張って!」

「ライナーあなたが言いなさいよ!」

「フィアッ!?」


 馬鹿な言い合いを続けていると、フィアイーターが急にバランスを崩した。後退している最中に、奴の足が上がった瞬間に矢が足裏すれすれを通過した。

 もちろんハンターがやったことだ。フィアイーターはそれに足を取られてしまった。


 すかさずセイバーが剣で切り込み、なんとか立ち直ろうとするフィアイーターを押し込む。


「はあっ!」


 ライナーの回し蹴りが炸裂。よろめいた奴の体は地に足がちゃんとついておらず、キックの威力をまともに受けた結果すっ飛んでいった。


 重い体で工場のシャッターをバキバキと破壊しながら内部に入り込むことになった。

 工場内から悲鳴が聞こえてきた。京介と、名前を知らないトライデン社の人間だ。


「ハンターナイスだよ!」

「えへへ! で、なんで工場に入れるんでしたっけ」

「なにか良さそうな機械ないかしらねー。あ、ボール盤あるじゃない」


 ドリルを取り付けて資材に穴を開ける機械を工場の端に見つけたセイバーは、すぐに駆け寄っていく。


 平たい台と、それに向かって下方向に垂直に生えているドリルで構成されている。

 台座に資材を固定して、ドリル回転させながら下ろして穴を開けるって使い方をする。

 トライデン社の要請で銃の部品を作った時にも、さぞ活躍したことだろう。


「フィアイーターの胴体狙って穴を開けようかな。台座を限界まで下げて、ドリルも一番太いやつに付け替えて、と。これうちの製品じゃないわね。けっ。うちを選ばない会社なんて潰れちゃえ」

「お姉さん! こっち手伝ってください!」


 機械が立ち並ぶ工場内で、逃げ出そうとするフィアイーターをライナーがなんとか留めていた。


 もちろん黒タイツたちもライナーに掴みかかろうとしてるから、そっちの対処もしないといけない。ラフィオとハンターも忙しそうだし。

 俺も駆けつけたいけど、作業中のセイバーにも黒タイツが襲いかかっていた。俺はそいつを横から蹴飛ばして、セイバーを守る。


「先輩遅くなりました! どうすればいいでしょうか!?」


 ちょうどいいタイミングで、麻美と赤い魔法少女のコスプレをした剛が工場に駆け込んでくる。


 剛は麻美を守りながら、迫ってきた黒タイツを鉄パイプトンファーで昏倒させた。


「ボール盤があったから、これで奴の体に穴を開けてコアを探すわ! 準備して! 悠馬。あなたも麻美と機械の護衛に回って」

「わかった」


 さっき蹴飛ばした黒タイツにマウント取りながら顔面を殴っていた俺は、武器を探して周りを見る。


 大きめのドライバーを見つけた。プラスとマイナスだとマイナスドライバーの方が凶器としては強そうだから、そっちを選ぶ。そして黒タイツの喉めがけて思いっきり突いた。

 苦しそうなうめき声が聞こえたけれど、殺すには至っていない。武器ではないから殺傷能力には限界がある。ただし動きの止まった黒タイツの顔面を掴んで、手近な機械に頭部を叩きつけて殺した。


「た、助けてくれ!」


 足元から声が聞こえた。見ると、写真で見たことがある京介という男がビニール紐で手足を縛られて床に転がっていた。

 拘束された状態で怪物の襲撃を受けているのだから、怖いのは当然だろうな。すっかり怯えた表情を見せていた。


 その恐怖が敵の目的だっていうのに。本当に俺たちの利益にはならないことばかりしやがって。


「静かにしてろ」


 こいつらがエリーを。一瞬、殺意に似た感情が心を支配しかけたけれど、こんな小物を殺すことに意味はないしそんな暇もない。一発蹴って黙らせた。

 うずくまって痛みに泣き出したから、恐怖は一時的にでも消えたことだろう。


 セイバーの方を見ると、剣で黒タイツの一体の首を跳ねていた。そして続けざまに、ライナーの周りにいる黒タイツたちを次々に斬り殺していく。


「悠馬くんお待たせ! 先輩、このボール盤をどうしてほしいって?」

「ドリルを」

「一番太くて鋭いやつに交換するとか?」

「そう。あと台座を」

「かなり下げてるねー。もう少し下げられるかな? フィアイーターをここに載せるのね?」

「……ああ」

「ていうかこれ、うちの製品じゃないわね」

「姉ちゃんと同じこと言ってるな」


 一緒に仕事してるからか? 同じ仕事してたら考えが似てくるものなのか?


「フィー!」

「おっと」


 馬鹿でかいスパナを持った黒タイツが、こっちにまっすぐ突進してきた。


「悠馬下がって」


 剛の冷静な声。言うとおりにして一歩下がれば、魔法少女のコスプレをした彼がトンファーを握って対峙する。


 振り下ろされたスパナをトンファーで受け止めて、自身も前に出ることで黒タイツの懐に入って正面からぶつかる。

 スパナの先端の割れた所にトンファーを差し込んで捻れば、強引に手を曲げることになった黒タイツは思わず武器を離してしまった。

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