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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-55.訃報

「くそっ!」


 市街地のビルの屋上。俺の拳が壁を叩いた。


 樋口から、エリーが死んだと連絡があった。トライデン社の人間に捕まって、逃げようとしたけど失敗したらしい。

 何があったのかは知らない。知っても、既に手遅れだ。


 京介と社員は、ラフィオたちが既に捕まえている。怒りのやり場もなく、俺はまた壁を殴った。


「なんで。なんであんな良い子が」

「ええ。殺されるなんてあんまりよね」

「俺は、また家族を失った」


 俺たちを家から出そうとするエリーの行動を、親切心からだと思い込んでしまった。気づいてやれば。エリーが思いつめていた不安を解消することができていれば。

 また壁を殴ろうとした俺の拳を、セイバーは優しく包み込むように手のひらで受け止めた。


「悠馬。自分を傷つけないで。気持ちはわかるけど、姉としてそれは許せない」

「でも。俺は」

「自分が許せないのよね。わたしだってそう。みんな同じ思い。けど受け入れて、繰り返さないようにするしかない。……それから、エリーちゃんのこと、忘れないようにするの」


 それが、エリーにできること。


 俺たちにはそれしかできない。

 セイバーに抱きしめられながら、俺は悲しみに耐え続けた。



――――



「……だそうです」


 ハンターに運ばれて途中で放り出された遥は、麻美の車と合流してなんとか解放された。車には、途中で拾ったらしい剛も乗っている。


 ハンターは本当に急いでいて、連絡役として誰かを連れて行くことなく、ラフィオを探してそのままひとりで走り去っていった。

 モフモフの気配は逃さないとか言ってたから、たぶんラフィオの方向には走ってたのだと思う。事実、樋口から連絡があった時点では合流できてたようだから。


 そして、エリーの死が伝えられた。


 車で市内を探し回っていたところだったけど、一旦停車した。車内は暗い雰囲気で包まれていて、しばらくはみんな無言だった。

 何を言えばいいか、わからなかったから。


「エリーちゃんのご遺体は?」


 麻美が沈黙を破った。年長者としての気遣いなのかな。


「とりあえず、警察に向かっているはずです。樋口さんの手配で、わたしたちのところで引き取られる……と思います」


 詳しくはよくわからないけど、ずっと警察の暗い遺体安置所に置くわけにはいかない。


「そうね。引き取って、ちゃんとお葬式しないとね」

「ええ。僕たちで、家族の手でちゃんと送ってあげないと」


 そっか。エリーちゃんは家族だから、わたしたちの手でお葬式しないといけないよね。


 遥がそう決意したちょうどその時。


 スマホから警報音が鳴った。


「怪物? こんな時に」

「わたし、行ってきます」

「遥ちゃん、大丈夫?」


 車の後部座席から降りて、車体に身を預けながら立つ遥に、麻美が気遣わしげな声をかけた。


「大丈夫です。それに、今はちょっと暴れたい気分で。別に自暴自棄になったわけではないので」

「そう。わかった。場所は大丈夫? 工業地帯だけど」

「はい! あんまり行ったことない場所ですけど、方向はわかります! ダッシュ! シャイニーライナー!」


 叫んで変身。夏の日差しを受けて、光の補給も問題ない。


「闇を蹴散らす疾き弾丸! 魔法少女シャイニーライナー!」


 そして、ライナーはフィアイーターのいる場所へ向けて走った。




――――



「行かなきゃねー。怪物はこんな時でも出てくる」

「姉ちゃん。俺も行く」

「ええ。一緒に行きましょう。みんなも、そこに向かってるはずだから」


 スマホからの警報音を受けて、俺もセイバーも気持ちを切り替えた。


 今は、みんなと一緒にいたい。だから集まる場所に行く。


 それに、俺たちが動かないとフィアイーターは倒せない。倒せないと、誰かの家族が傷ついて死ぬことになる。

 そんなことは許さない。こんな時だから、俺たちは気合いを入れて戦わないといけない。


 セイバーに背負われて、俺は倒すべき敵へと向かった。



――――



「ラフィオ。フィアイーターのいる場所って、近い?」

「かなり近い。たぶん、この工場の前の道を挟んで向かい側とか、それくらいだと思う」


 事実、建物の外から悲鳴が聞こえてきた。怪物の咆哮も微かに聞こえる。


「キエラはなんで、こんな時にフィアイーター作ったのかな」

「何も考えてないんだろう。作る必要があるから作った。タイミングは思いついた時とか。偶然、今ここだった」

「本当に、嫌な子だよね。ラフィオの恋人なんかふさわしくない」

「そうだね。僕もそう思う」

「ラフィオの恋人は……ううん。それより、戦わないと」

「いけるかい?」

「うん」


 ラフィオに抱きついていたつむぎは、顔を上げた。

 真っ赤に泣きはらした目。けど、強い意思があった。


「わたしたちが戦わないと。悲しいから戦いたくないなんて言ったら、エリーちゃんに怒られちゃう」

「だな。行くか」

「うん。デストロイ。シャイニーハンター」


 いつもよりも、少し落ち着いた口調での変身。いつもより強い、戦いの決意。


 魔法少女シャイニーハンターは工場の扉を開けた。

 ほぼ同時に、前の道を挟んだ反対側の工場のシャッターをぶち破って、巨大化したボルトのフィアイーターが現れた。


 ネジが切られた棒に六角形の頭。ネジの所が胴体なのか、鉄の質感を感じながらもしなやかな動きをする手足が生えている。

 そして周りには多くの黒タイツ。奴が出てきた工場内の人間はすでに逃げ出したか恐怖を出さない状態になったかで、新しい恐怖を求めた怪物が外に出たというわけだ。


「ラフィオ!」

「ああ。乗れ!」


 獣の姿になったラフィオに、ハンターが飛び乗った。フィアイーターの方も、こっちを恐怖の源だと考えて黒タイツたちをけしかけた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ああああ……しばらく読むのを溜めていたらいつの間にかこんな展開に。 みんなやりきれないだろうなあ……。 こんな時でも戦わないといけないのは辛いけど、頑張れ、みんな!!
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