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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-47.自分で片付ける

 ふたり、並んで河原まで歩く。ふたりきりの時間が、つむぎには何より幸せなようで。ちらりと横を見ると、彼女はニコニコと笑っていた。


「えい!」


 つむぎが河原でバケツをひっくり返す。ガラガラと音を立てながら石が落ちる様子を、ラフィオはなんでもないとろくに見ていなくて。代わりに魔力が多めの石を探して周囲に目を向けていた。


「あれ? ねえラフィオ。これ」


 けど、つむぎは落とした石の中に何かを見つけたらしい。


 乾いた、地味で何の特徴のない石の中に、キラリと光るもの。夏の日差しを受けて輝いていたそれは。


「エリーちゃんのペンダント?」


 彼女がつけていたもの。倒れていた時も、警察の保護から解放された時も。水着の時はつけてなかったけど、普段着に着替えた時はちゃんと首につけていた。

 それが今、落とした石の中にあった。


「間違えて落としちゃったのかな?」

「あり得るか?」

「わかんないけど……はずれちゃったとか」

「どうかな。大切なものらしいし。大切な……」


 嫌な予感がした。



――――



 ラフィオとつむぎが河原に向かうのを最後までは見送らず、エリーはすぐに家の中に戻った。


 愛奈がマンションまで帰りたいと言い出したのをきっかけに、なんとか全員をここから追い出すことに成功した。突発的なことだから、準備する時間がないことだけは残念だ。


 書くものを探す。普段から住むための家ではないから、筆記用具の類は置いていないようだった。唯一あるのは、魔法陣を書くためのチョーク。

 書きにくい。けど仕方ない。


 魔法陣からちゃんと距離を開つつ、床にメッセージを書いた。時間がないから殴り書きで。


 ごめんなさい。みなさんに迷惑をかけることはできません。わたしを探す相手は、わたしで対処します。相手の目的は、わたしのペンダントです。この街の天才が作った、映像解析技術が入っています。悪人の手に渡してはいけません。

 諦めるよう、わたしが話をつけます。

 愛しています、ラフィオ様。


 そう書き残した。


 エリーはラフィオのことが本気で好きだった。ラフィオもきっと、エリーを好いているだろう。

 けど、この好意を素直に受け入れられるのは、エリーには申し訳なさがあった。


 ラフィオはエリーと同じように、つむぎも愛している。彼女は良い子だ。悲しむ顔は見たくない。

 それに、エリーがラフィオを好きな理由は……。


 もし無事に帰ってこられたら、本心を伝えよう。そして、ラフィオに選んでもらおう。



 家の扉を開けて、外に出る。日本の夏は暑いな。日差しが燦々と照りつける。なんて眩しい光。外の目を恐れて閉じこもるなんてもったいない。

 微かに笑みを浮かべながら、エリーは家から離れていく。河原とは反対方向。


 なんだっけ。京介とかいう男は町工場で働いていたんだっけ。どこにあるのかな。わからないけど、奴は今もエリーを探していることだろう。

 早く見つけて伝えよう。わたしは、あなたなんかに構ってる暇はないの。あなたよりも、ラフィオ様と一緒にいる方が大事なの。あんたみたいな馬鹿な大人、大嫌い。


 このわたしが、エリザベート様が会ってあげると言うの。さっさとしなさいよね……と。



 エリーの足は学校の方に向かっていた。すると、車が近づく音が聞こえてきた。

 背後から走ってくるそれは、エリーの近くに来るに従って減速していく。もしかしてと思って振り返ったエリーは、外国人の顔の男と目が合った。


 停車した車から出てきたそいつが、エリーの肩を掴んで引きずり込もうとした。


 こいつが、京介とかいう男に協力する外国人? トライデン社の人? こんな強引な手を使ってくるなんて。


 接触できたことは幸運だけど、こいつは嫌い。気安く触らないで。振払おうと身じろぎしたのを抵抗と受け取ったのか、男は力を込めた。

 小さな少女の軽い体なんて、この男には容易く押さえつけられるもの。そのまま車に放り込んだ。


 助手席の上に落ちたエリーは、車の内壁に頭をぶつけてしまった。瞬間、意識が遠のいていく。




――――



「えー。ライノくんってば、またお絵かきなんかしてるー。オタクきもーい」


 いつか言ったことがある、ひどい言葉をエリーは思い出していた。


 小学校の同学年にいた、おとなしく目立たない男の子。それがライノだ。

 サイ(ライノサラス)なんて強そうな名前を持っているのに、おおよそそんなイメージとはかけ離れた、線の細い美少年。髪はサラサラのきれいな白髪。


 運動は嫌いで、日本のアニメが好きなナードくん。自分も将来はアニメが作りたいと、教室の隅でいつもお絵かきばかりしていた。

 体育会系の男子からは、陰気な奴と言われていたな。


 エリーは、そんな彼が気になっていた。恋と呼ぶべきだったのかもしれない。けど、エリーは当時幼かった。自分の感情を冷静に見ることなんてできなかった。

 家も恵まれたものではなかったし。恋なんてしてる暇はなかった。




 生みの父は、エリーが幼い頃に家を出ていった。妻と子を見捨てて、他の女に走ったらしい。


 無理もない。母は、あまりにも人間が未熟だった。わがままな子供がそのまま大人になって子供を産んだ。そんな女だった。


 職場まで毎日通うような仕事は嫌だと言って、完全の在宅ワークの仕事を選んだのは、まだ常識的な判断だ。

 けど、仕事が合っているから選んだとかではない。上司の目が無いところで好きなようにサボれるから選んだ仕事。


 別に、空いた時間で家事や育児をするわけではない。


 ダラダラとテレビを見ては、芸能人のスキャンダルや行くこともない土地の事件について無意味に意見を垂れて、それをSNSに投稿してご意見番を気取るだけの毎日を過ごしていた。

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