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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-45.デーモンなる男

 酔っ払った愛奈をなんとか寝かせて、つむぎたちがそれぞれ眠ったのを確認した時には、夜中になっていた。

 人が起きている時はあんなに騒がしかったのに、眠った途端に静かになった。


 カーテンは締め切ったまま。少し開けて外を見る。街頭の明かりに照らされた道に、不審な車両や人影はなかった。


 この家の所在地も、つむぎの校区に含まれている。エリーを探す、あの京介とかいう人物がここに来る可能性はあった。


 今ここにいる可能性はごく低いとしても、俺は気になってしまった。


 あの小さな怯える女の子に、俺は何もしてやれていないな。そんな無力感を抱えながら、俺も眠ることにした。



――――



「くそっ! なんだよこれ!」


 操業停止を命じられた町工場の事務室で、スマホを握りしめた鍋川京介は苛立ちながらビール缶を飲み干した。


 地域の不審者情報に自分が乗っているらしい。そう言われて慌てて確認したところ、屈辱的な記載があった。


 日本人と外国人男性の二人組が、特定の特徴を持つ少女を探し求めている。そこは、まだ事実に則っているから仕方ないと言える。京介とトライデン社から来たあの男は、たしかに子供を探していた。

 探している対象が特定の子供だということは、誰も知らないはずだが。


 京介たちの背格好や、ホクロの位置なんかの情報は極めて正確で、こちらを特定して注意喚起しているのは間違いなかった。


 それよりも問題は次の記載だ。周辺住民に、自分たちの養子にしたいから金髪の外国人の子供が近所にいないかと聞いて回っている?

 ふざけるな。そんなことはしていない。見て回っていただけで、聞き込みなど目立つ真似をするはずがない。


 それに、この書き方だと京介は、あの男とゲイの関係にあるみたいじゃないか。

 勝手にそんな関係を作り上げるな。俺にそういう趣味はない。


 しかも養子には女の子がほしいだと? それを、施設からではなくて普通に暮らしてる子供から見つけようとするなんて。そんな無茶苦茶なことするはずがない。 

 こっちをなんだと思ってるんだと、京介は缶を机に叩きつけるように置いた。


「落ち着け。どうせエリーを見つけて事業を成功させれば、お前はこんなちっぽけな国なんか捨ててアメリカまで行ける。こっちでの評判を気にすることはない」

「あ、ああ。そうだな」


 同じく不審者として晒されている、トライデン社の男がたしなめるように声をかけたため、京介は少し落ち着きを取り戻した。


 男は、名前をデーモンと名乗っていた。本名かどうかは知らない。向こうにはそういう名前もあるらしいが、悪魔か。痩せっぽちで色白の肌は、確かにそういう名前が似合っていた。


 トライデン社がこの街で失敗したのを見て、戦後処理を行うために来日したという。そして京介を始めとした協力企業の関係者にコンタクトを取った。ただし全員にではないらしい。

 逮捕を免れた者かつ、コントラディクションシステムの中でも特に重要な技術を提供した者だ。あとは、まだ野望を持っている者とか、デーモンの存在を警察に話さない者とか、選考基準はあるようだ。


 とにかく京介は選ばれた。接触された時には、もう関わりたくはないと突っぱねた。しかし連絡先は置いてくれた。そして京介の気が変わった瞬間。つまりエリーの存在を知った際に、連絡を取るに至ったわけだ。



 デーモンのする戦後処理とは、コントラディクションシステムの可能な限りの回収。つまり模布市の技術をできるだけアメリカまで持って帰ること。

 もちろん、この街の企業は簡単には応じない。製品は渡すが、それを作るための技術は会社のもの。警察からも釘を刺されているからか、交渉に応じる例は少ないだろう。

 だから京介の町工場のような、人員的に大打撃を受けた企業からデーモンは声をかけたわけだ。


 それから、彼の役目はもうひとつ。大人たちに利用されただけのかわいそうな女の子、エリーの回収だ。事件には無関係と判断されて、彼女は釈放されるはず。警察の保護は受けるとしても、監視は緩いはずだ。それを攫う。


 京介には、そんなことをする意味はわからなかったが、その子供はコントラディクションシステムに関わる重要なデータを持ち歩いているらしかった。


 ドローンを制御するための映像認識システムのプログラム。それを記憶媒体として所持している。


 養父となったクローヴスが、計画が頓挫した時に最も警察から警戒されない人員であるエリーに持たせたという。そのまま回収して本国に渡せるように。

 しかしエリーは逃げ出して行方不明。だからデーモンは、捜索に躍起になっていた。


 京介にとっては全てが他人事だった。が、エリーを捕まえればお礼をすると言われて、さらに父から所在のヒントが得られたために、協力を決意した。


 お礼とは、京介をトライデン本社で雇うというもの。この国を離れて、大手企業で相応の待遇で働くのは魅力的に思えた。

 そのために、データの入手と会社で作った部品の再現が条件だった。


 後者は、できれば他の部品もこの工場で作って、銃やレールガンそのものをある程度作ることが求められる。そのための図面や、ここでは作れない部品についてはデーモンが集めているところ。

 コントラディクションシステムの再構築は不可能なことではない。操業停止を命じられた工場だけど、動かし方は知っている。作ってその技術をトライデン本社に見せればこちらのものだ。


 警察が対応する前に、京介はアメリカに高跳びしているはずだ。


「やってやる。やってやる……。俺ならできる。あのクソ社長ども見てろよ……」


 酔いの回った頭で、フラフラと事務所を出て製造場に向かう。


 機械加工のための切削機械に、プレス機。一通りの機械は揃っている。小さな町工場故に、そこまで広い場所ではないけれど。

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