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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-44.いい人ばかり

 ところで、つむぎたちが着ていた服は床に脱ぎ捨てられていた。下着もそのままで、ちょっと気まずくなって目を逸した。

 せめて、畳んで見えない所に置くとかしてくれないかな。俺は触れないから、三人が風呂からあがるまで見ないようにするしかない。


 つむぎはまあ、こういうことやる性格なのはよくわかる。両親が不在の家も散らかっているそうだったし。エリーもそれに乗せられて脱ぎ散らかしたのかな。

 子供だし、これくらい自由に生きてもいいとは思う。


「悠馬ー。わたしたちも、一緒にお風呂入らない?」

「聞いてたのか。入らないからな」

「えー」

「それより、早く寝て酔いを覚ませ」

「ういー」


 どんな返事だ。



――――



 お風呂に入ると言っても、まだ沸かしていないことに風呂場まで行ってから気づいた。

 つむぎは気にすることなくボタンを押して、風呂の中にお湯が注がれていくのを見ながらシャワーを出した。


「先に体洗おっかー。エリーちゃん、背中洗ってあげるね!」

「いえ。背中あまり出ていないと言いますか……」


 浴槽の縁に座っているラフィオはエリーの水着を見る。ワンピースタイプだから、たしかに背中の露出は少ない。

 つむぎはやはり気にせず、水着の上に石鹸をつけていく。


 石鹸も水も水着に染み込んでいき、肌に触れるから無意味なわけじゃない。


「ね? 気持ちいいでしょ?」

「はい……」


 椅子に座って目をつむり、つむぎに洗われるままにする。こういうのも悪くないと思っているのかな。


「次はラフィオだね!」

「いや、僕はいい」

「えいっ!」

「ぐえっ!」


 拒絶は許されず、つむぎから逃げることもできない。体を掴まれて、さっきまでエリーが座っていた椅子に寝べるように置かれた。



「ラフィオモフモフー。あわあわワシャワシャモフモフー」


 変な歌と共に石鹸を塗りたくられ、体中泡まみれになったラフィオは目を瞑った。


 一応、体を洗うという目的はきちんと果たしてくれている。ラフィオの体に触れるつむぎの握力が強めなのは確かだけど。


「なあ。エリーも洗うの手伝ってくれ」

「は、はい! では失礼します、ラフィオ様!」


 石鹸で滑るラフィオの体をワシャワシャと洗っていくエリー。つむぎよりもよほど優しい触れ方。


「エリーちゃん。もっとしっかり触らないと、綺麗にならないよ?」

「そうなのですね!」

「いや! これでいいから! お前は僕に触りたいだけだろ!」

「えへへー」


 まったくこいつは。


 その後つむぎも体を洗い、水着に染み込んだ分の石鹸もしっかり洗い流すために多めにシャワーを浴びた。その頃には浴槽もお湯がしっかり張られていて、ふたりと一匹で入る。

 さほど広くはない浴槽だから、子供とはいえ三人で入ったら窮屈になる。だからラフィオは妖精の姿のまま。


 つむぎとエリーが向かい合うように座っていて、ラフィオはその間で仰向けで浮いている。


 水に浸かると、体中の毛がふわりと広がる。こうやって力を抜けば体は浮いて溺れないというのは、つむぎに教わった通り。

 今までは人間の姿で入るか、小さな風呂桶にお湯を入れて入っていた。けど、これはこれで気持ちがいい。


 お風呂で泳ぐのは駄目だけど、溺れるのを防ぐために浮き輪代わりのゴムボールとか用意してもいいかもしれないな。


 そんなことを考えながら浮かんでいた。つむぎとエリーの微かな身じろぎが水面に波紋を作り、ラフィオの体は微かに上下しながら動いていた。

 ふたりは、なにも喋っていない。ただ静かに入浴していた。だからラフィオも黙って浮かんでいた。


 体を洗う時は、あんなにはしゃいでいたのに。


 沈黙を破ったのはエリーの方で。


「わたしのこと、迷惑だと思っていませんか?」

「どうして?」


 ラフィオとつむぎ、どちらというわけでもなく尋ねた。


「思ってないよ。たしかに、いきなり一緒に住むって聞いた時は驚いたけど。でも、エリーちゃんがいると家がにぎやかで、いいなって思ったの」

「でも。わたしのせいで。普段とは違う生活を強いられて。それに、わたし、何の役にも立ってません」

「役に立つ?」

「はい。戦いでは怯えて何もできず、なのに戦いを見たいなどと言って逃げることもしませんでした。皆さんの足を引っ張って」

「仕方ないよ。怪物って怖いもん」

「つむぎさんは怖がっていませんでした」

「あはは。なんでだろうね。慣れたからかな? エリーちゃんも、変身したら怖くなくなるよ」

「そう……ですね」

「わたしね、エリーちゃんと一緒にいられるの、幸せだなって思えるの。ラフィオもだよね?」

「僕かい? ああ……エリーが来て、良かったと思っている」


 水面の揺れによって、ラフィオの体はエリーの方に流れていき、彼女の首筋に当たった。

 エリーはその体を、手で優しく包み込んだ。


 つむぎがやるのとは違う、心地いい感触で濡れた体を撫でられる。


 この子は優しい。


「ラフィオ様、つむぎさん。ありがとうございます。わたしのこと、受け入れてくれて。……本当に、この国に来てよかった。日本の方は、いい人ばかりです」

「あはは。悪い人もいるから、エリーちゃんは隠れなきゃいけないんだけどね」

「だとしても、皆さんはいい人だから……この国に来て良かったです。早く、解決しないといけませんね。わたしがこの素晴らしい国で、生きていけるように」

「うん。樋口さんも頑張ってるから、きっとなんとかなるよ」


 つむぎの、エリーに向ける眼差しも優しかった。相変わらずラフィオを撫で続けるエリーを、つむぎは励まし続けていた。


 ぎゅっと、エリーの指に力が入る。少しだけ痛みを感じた。

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