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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-41.トライデン社の協力企業

 気にすることじゃない。魔法少女としての戦いに比べれば、人間の悪意なんか取るに足らないもの。言ってはいるし伝わってるはずだけど、あの子の心は頑なだった。


「不審者なんて、樋口さんがさっさと逮捕しちゃえばいいのに」

「できないから樋口も困ってるんだよ。歩き回っているだけの人間を警察は逮捕できない。散歩だと言い張られて終わり」


 その日の夜には、警察に難癖つけられて逮捕されかけたとSNSで騒いで、事情を知りもしない市民がスマホを操作して警察を非難して善行をしたと満足する。ネット上のご意見番たちがフォロワー数とインプレと好感度稼ぎのために言及して、警察の肩身が狭くなる。

 だから強硬手段は取れない。警察も大変だな。


「まずは相手の素性を調べて、目的の見当をつける。その目的が、俺たちに影響があるものなら警察の手でやんわり止めさせる、とかになるだろうな」

「やんわりって?」

「俺もよく知らない。警察って組織があんまり前に出ない、露骨すぎない説得とか……脅迫とか。圧力をかけるとか」


 あとは、樋口が俺に接触してきた時みたいなやり方とかかな。俺が周りを巻き込んで多人数の話し合いに持ち込んだけど、本当なら一対一で話してたはず。

 後ろ暗い人間なら、それで威圧されて悪事を諦めるかな。


 あくまで想像でしかないけど。


「樋口さん優秀だけど、怖い人なイメージはないからね。あんまり脅すとか似合わなそうだけど」

「必要ならやるだろうな」


 実際どうやるかは、俺たちにはわからない。



 合宿は楽しかったし有意義な時間だったけど、やっぱり地元はいい。窓の向こうが見慣れた景色になっていくのに、どこか安心した気分になる。


「お姉さん、スーパー寄ってください。晩ごはん用意してから帰りますので」

「そう? ありがとう。お姉さんじゃないけど」

「お姉さんですよ。リクエストはありますか?」

「あー……あっさりしたもの。胃に優しいもの」

「結局、合宿中はずっと飲んでましたもんね」

「ええ。……でも、月曜日も休み取ってるから、今日も飲んだくれでも問題はな……いえ。おとなしくします」


 俺の視線を感じた愛奈が慌てて訂正した。ほどほどにしておけよ。



 結局、愛奈はスーパーで多少の酒は買ったし、今夜もまったく飲まないというわけではない。俺の監視は今夜も必要らしい。


「思ったんだけどさ、結局愛奈さんに飲むの許すと思うよ、悠馬は」

「え?」

「なんだかんだ愛奈さんに優しいし」

「俺が?」

「うん。厳しくしてる面はあると思うけど、最終的には愛奈さんに折れるというか。悠馬ってそういう所あるよね」

「……そうかもしれない」


 心当たりがありすぎる。


「それは、悠馬の優しさで良いところだけどね。あと、どこかで愛奈さんも悠馬に甘い所があるんじゃないかなー」


 笑顔の遥に、俺はどう返事すればいいかわからなかった。いや、愛奈が俺に甘いって、どういう意味だろう。



 約束通り、遥は拠点の家にて夕食を作ってくれて、その後家族の待つ家に帰る。夏の明るい夕方とはいえ、きちんと俺が送ってやった。

 麻美と剛もそれぞれ家族の待つ家に帰っていった。


 俺が神箸家から歩いて戻ってきたのとほぼ同時に、樋口も来ていた。

 手には酒が入ったビニール袋。そうか。愛奈の買い物に気をつけても、こっちから酒がやってくる想定をしておくべきだった。


「飲まなきゃやってられないわよ!」


 と、豪快にビールを煽りながら高らかに叫ぶ樋口。やってられないのはこっちだよ。愛奈まで酒に手をつけたし。

 遥の言った通りじゃないか。


 別に、樋口は酒飲み友達を求めてここまできたわけじゃない。


 不安そうなエリーを見つめて、彼女はいつものタブレットを取り出した。


「鍋川京介。この名前に心当たりは?」

「鍋川って苗字なら、つむぎの学校にいる」

「はい。フィアイーターが出た日も、学校でお話ししました」


 つまり、例の優しくて口の軽い老教師だ。


「電話で話した通りね。その息子が、これよ」


 タブレットに表示されている、知らない男の情報。


「こいつが、俺たちの家の周りをうろついていたのか?」

「ええ。今日もいたわ。短時間で帰っていったから、こちらから接触はできなかったけど」

「そうか。話しかける段階では、まだないのか?」

「京介は車に乗っててね。ここら一帯をぐるりと回っていたの。二周して、目的の物が見つからなかったからか、自宅に帰ったわ」

「目的はエリーか?」

「間違いなくね」


 車で町内を何周もするタイプのドライブが趣味よりは、エリーを探し求めていると考えるべき。


「京介の勤めている会社は、市内の工業地帯にある小さな町工場よ。大手企業の下請けの部品メーカーね」

「元請けの業種はなに? 自動車? 電化製品? それとも手持ち工具とか?」

「重機とかの特殊車両よ。大手メーカーに部品を卸している中堅企業の、さらに下請け。細々したパーツを、元請けが提示した図面通りに大量に製作している」

「小さい製品を正確に大量に作れるのは、元請けとしてはありがたい話よね。小さな町工場にこそ、とんでもない技術が眠ってたりするのよ」


 こういう話は愛奈の専門だ。既にビール缶を数本開けている彼女は、珍しく樋口の聞き役になっていた。


「それで、この会社の作ってるパーツは金属製品? それとも樹脂? ゴムとかガラスとか?」

「金属よ」

「そっかー。あの特殊部隊の持ってたライフル作っちゃって、社長が逮捕されちゃったかー」

「そこまで、まだ説明してないわよ?」


 まだ、ということは今から説明するつもりだったのだろう。


 なのに愛奈が言い当ててしまった。

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