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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-38.ラフィオのお姫様抱っこ

 それについては、俺も同意する。


「みたいだな。そんなことしなくてもいいのに」

「恋の問題は難しいよねー」

「お前は難しく考えてなさそうだけどな」

「まあね! わたしの場合はほら、悠馬を手に入れるのはほぼ確定みたいなものなので!」


 本人の前で堂々とそんなことを言うな。


 こういう遠慮のなさというか、気持ちを素直に出せるのは遥の美点だな。


「とりあえず、エリーちゃんの体力作りのメニューを考えないとね。悠馬と一緒に鍛えよう」

「俺と一緒に?」

「夏休みの間も、悠馬はトレーニングするでしょ? エリーちゃんも一緒にどうかな」


 合宿だけが運動の場ではない。


「そうだな。メニュー作りは剛と相談してやってくれ」

「いいよー」


 さすが運動部、頼りになる。


「よし、じゃあわたしもお城作ろっかな。悠馬、運んで!」

「はいはい」

「お姫様抱っこしていいよ?」

「わかった」

「え?」

「やってほしいんだろ?」


 体を支え合って移動するより早いし、お互い水着で体を密着させるよりは、こっちの方が気まずくない。

 まさか本気でやってもらえるとは思ってなかったらしい遥は、少し驚いた顔をしてたけど。


 たしかに、いつもの俺ならしないもんな。


「ほら。じっとしてろ。よっと」

「ひぁっ……あ、ありがとう……」

「ラフィオ。俺たちも城作り手伝うぞ」

「ゆ、悠馬さん! それはもしかして、お姫様抱っこではないですか!? 日本人ならみんなやるという!」


 エリーが変なところに食いついたぞ。てか、こういうの海外の方が主流じゃないのか? あと日本人がみんなやるのは誤解だからな。


「そうだよー。日本人は、好きな相手にだけお姫様抱っこするんだよ!」


 おいこら遥。嘘をつくな。親指立てるな。

 けれど純粋なエリーはキラキラした目でこちらを見つめていた。そして。


「ラフィオ様!」

「えっと……」

「お姫様抱っこ、ラフィオ様はできますか?」

「ちょっと難しいかな。この姿だと腕力がちょっと足りない」

「ラフィオは大きくなったら出来るんだよねー? こちょこちょー」

「ひゃはっ!? ちょっ! やめっ! あはは!」


 不意打ちでつむぎに首をくすぐられたラフィオの体が、ポンという音と共に妖精の姿に。


 モフモフのラフィオが砂浜の上に座っている。四足歩行の生き物だけど、お尻と後ろ足で座ったり、そのまま少し姿勢を伸ばしたり、数歩だけなら後ろ足だけで歩くことも可能だ。

 前足は人間の手ほどは器用ではないけど、物を掴んだりするのは問題ない。両腕で、小柄なエリーを抱えるのも容易だろう。


「さあラフィオ、大きくなって」

「仕方ないな……」


 つむぎのためでは絶対にないだろうけど、ラフィオは巨大化。そして砂浜の上に座った。


「わーい! ラフィオモフモフ!」

「あ! こら! 違うだろ!」


 すかさずお腹に抱きついたつむぎ。そうだよな。モフモフするのではなく、抱っこされるのが目的なわけで。


「うー。じゃあラフィオ、抱っこして!」

「エリーが先じゃないのか?」

「うん! エリーちゃんからでもいいよ! その間わたしはここにいます!」


 つむぎ自身も砂浜に座って、ラフィオのお腹に背中を預けている。水着越しの背中にモフモフを感じる、高度なモフ行為らしい。

 ラフィオは腕を少し動かしにくそうにしながらも、緊張した様子のエリーに手を伸ばす。彼女は白い毛で覆われたラフィオの手に触れて、その感触がくすぐったかったのか微かな笑い声をあげた。


「で、では! ラフィオ様失礼します!」

「うん。力を抜いてね」


 二本の前足に体重を預けて、持ち上げてもらうエリー。やはり緊張した顔のままで。


「どうだ?」

「な、なんだか。背中がくすぐったいです」

「モフモフだからねー。それが気持ちいいんだよ」

「そういうものなのですね! ラフィオ様気持ちいいです!」

「本当かい?」

「はい! 気持ちいいでしゅ! はひゃっ」


 少し身じろぎしただけで肌が擦れて、くすぐったそうに笑い声をあげる。


「わかった。下ろすからな」

「ひゃい! ありがとうございましゅ!」

「もー。エリーちゃん、そんなに笑っちゃ駄目だよ? これがラフィオの本当の姿なんだから」

「わ、笑ってないです! ふひゅっ!」


 笑いを我慢できてない。


「正確には、小さいのが僕の本来の姿なんだけどな」

「ど、どんな姿のラフィオ様も素敵です!」

「というか、エリーちゃん倒れてた時に大きいラフィオに運んでもらったけど、その時は平気だったよね?」

「あれは、ちゃんも服を着ていましたし、気を失っていたので。それに……」


 そんなやり取りをしながら、エリーはなんとか砂の上に戻れた。


「それに……ご、ごめんなさいラフィオ様。なんだか、ラフィオ様のことを考えるとドキドキして、少し触られただけで、あの。すごく敏感になってしまって」

「な……」


 ラフィオへの接し方では優位に立っていると自信を見せていたつむぎが、エリーの乙女な表情を見て焦った様子になった。


「わ、わたしだって、ラフィオのこと考えると、モフモフしてる時もくすぐったくなるもん!」

「いや、無理があるだろ、それは」

「ラフィオくすぐったい!」

「だったらモフモフしようとするな!」


 それでもラフィオから離れようとしないあたり、つむぎらしい。


「いいねいいね。青春だね。恋してるって感じだねー」


 遥が俺にだけ聞こえる声で耳打ちした。呑気だなあ。


 けど、ちびっ子たちは三角関係は別として、ワイワイとはしゃいでいた。それは楽しそうだったな。

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