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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-37.魔法少女の素質

 普段から鍛えている俺や天性の運動能力があるつむぎは、難なく運動をこなしていた。ラフィオも少年の姿での運動はあまり経験がないだろうけど、なんとかやっている。

 問題はエリーで。


「はぁ……はぁ……」

「大丈夫か? 無理になったら遠慮せず言うんだぞ?」

「は、はひっ! まだいけましゅ!」

「剛! 休憩だ!」

「はひゅー……」


 運動に慣れてないらしいエリーは早々に無理が来た。なのに俺たちについて行くため、あるいはつむぎに負けないために続けようとする。

 そんなことをしても誰も喜ばないのに。


「はい、はちみつレモンソーダ。疲れが早く回復するよ」

「あ、ありがとうございます……すいません。体力がなくて……」


 遥からコップを受け取ったエリーは、実を縮めて恐る恐る話している。別に気にすることじゃないのに。


「気にしない気にしない。わたしも陸上部に入りたての頃はランニングするのも大変だったんだよー?」

「そうなん、ですか……?」


 遥が変身してない時に運動するイメージがないエリーは、彼女の慰めにいまいち反応できない様子。事故さえなければ、遥は今も走り回っていて説得力ある言葉になったのだけど。


「うーん。なんていうかな。今まで運動してこなかったなら、ゆっくり慣れていくといいよってこと。その内、動けるようになるから」

「その内、ですか……」


 返事をするエリーの視線は砂浜の方に向かっていた。


 ラフィオとつむぎが一組になって柔軟体操をしていた。背中合わせで腕を組み、つむぎは楽しそうに、ラフィオもそこまで嫌という様子ではなくお互いの体を伸ばしている。

 もし自分に体力があれば、ラフィオと腕を組んでいるのは自分のはず。そんな後悔を感じているのだろうか。


「体力をつけるのはゆっくりでいいよ。最初はできないことを、誰も責めたりはしないから。それに、エリーちゃんも魔法少女になれば、元々持ってた運動神経とかあんまり関係なくなるし」

「それは……そうかもしれませんけれど。でも、皆さん変身する前からすごい人じゃないですか」


 確かに。つむぎは元から優れた身体能力を持っているし、そのセンスは魔法少女の戦いにも活かされている。遥も障害はあるけれど、元はアスリートでその性質が魔法少女に引き継がれている。

 それと比べれば、自分の変身前の資質に劣等感を持つことも理解はできる。だけど素質を言うなら。


「うえー。まだ気持ち悪い……」

「さすがに飲みすぎましたね……」

「まあでも、夜になればまた酒は抜けるし。また飲むわよ!」

「はい先輩! どこまでもついて行きます!」


 駄目な魔法少女とその後輩が、ようやく起きてきた。


「ちょっとお説教してくる」

「うん。程々にねー」


 水着姿の遥に見送られながら、俺はふたりの方に向かった。



「あうう……ごめんなさい悠馬くん。もう飲みすぎたりはしません……」

「違うの。麻美がどんどん勧めてくるから」

「なっ!? 先輩裏切るんですか!」

「だってー」

「姉ちゃん?」

「ひえぇ……反省してます! 悠馬様許して!」


 俺の前で並んで正座しているビキニ姿のふたり。姉ちゃんはともかく、麻美はもう少し真面目にやってくれ。


「今日は酒飲むなよ」

「嫌です! それだけはご勘弁をー!」


 言い方は冗談めかしているけれど、本気で焦っている愛奈が俺にすがってきた。こいつは本当に。


「お酒は人生のガソリンなの! ないとわたし、動けないんです!」

「まったく……明日の夕方には帰らなきゃいけないんだ。ふたりの運転でな……今日みたいに、昼まで酔いが覚めないのは困るんだ」

「今日ほど飲みすぎないなら、いい?」

「……まあ、いいけど」

「やったー! 麻美、もう少ししたらお酒買いに行くわよ! 今夜も飲みましょう!」

「だから!」


 こいつは。本当に油断も隙もない。



 エリー、見てるか? こんなのでも魔法少女として活躍できるんだ。元々の素質なんか気にすることじゃない。

 あんまり子供には見てほしくない光景だけどな。



 駄目社会人コンビには、しばらく休んでもらってアルコールを完全に抜いてもらおう。


 午後からは自由時間で、みんな好きなように海で遊んでもらう。ちびっ子三人も、浮き輪を駆使して泳いだり砂浜でお城を作ったりと、海を満喫しているようだった。

 俺はその見守りだ。


「でね、こうやってお城の壁に穴を開けて、そこから矢とか鉄砲とかで攻めてきた敵を狙い撃つんだよ。狭間って言うんだ」

「そうなのですね。これは攻めこみにくいですね……」

「でしょ? それに門も、天井裏に人がいて、くぐり抜けた敵に上から石とか熱い油とかを落とすんだよ」

「日本のお城、すごいです……」


 つむぎが砂のお城を作りながら防御機構について説明している。砂で日本の城郭を作るのは珍しい気がするな。もっとほら、お姫様が住んでそうな城とか作りたいものじゃないか? というか、なんで城の防御について知ってるんだ?


「時々テレビでお城の特集とかしてるからねー。子供たちは意外な知識を身に着けたりしてるものだよ」


 遥が俺の隣に座って、ラフィオたちを見ながら話しかける。


 別に、テレビから得られる知識について話したいわけではなくて、遥はすぐに話題を変えたけど。


「エリーちゃん、かなり気にしてるみたいだよ。つむぎちゃんへの対抗意識で」

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