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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-29.夏合宿の始まり

「親父。大変だったな。もう少し詳しく聞かせてくれないか」

「なんだね京介。突然」


 三十代半ばにして既に髪が薄くなり始めている息子が、急に話に入ってきたものだから、教師は微かに驚いていた。


「いや。なんでもないけど……仕事先の関係者の子供じゃないかって思って。気になったんだ」

「仕事の……京介お前、もう仕事に行っていいのか?」

「もうすぐ自宅待機も解けるよ。ほんと。面倒なことになった」

「京介。お母さんは心配なんですよ。あなたが何か、悪いことに巻き込まれたんじゃないかと」

「巻き込まれたのは事実だけどさ、俺が悪いわけじゃないんだよ。全部、うちの社長がクローヴスって奴に乗せられたのが悪いんだよ。経営がうまく行ってないからって飛びつきやがって」


 トライデン社製品から作られた怪物が暴れ、クローヴスの野望が打ち砕かれた事件の混乱の後、プロジェクトに参加していた会社で働く京介にも影響が出てしまった。

 しばらくの自宅待機。その間、彼は自分の不幸を呪い続けていた。


 自分は被害者。馬鹿な社長とクローヴスの稚拙な企みに巻き込まれただけだ。

 結局、大失敗しやがったし。ざまあみろ。外資と言っても大したことないな。


 自分なら、もっとうまくできただろう。そんな妄想を何度も繰り返していた。


 そして、自分ができるチャンスが来てしまったようだ。


「なあ親父。その子のこと、ちょっと教えてくれよ」



――――



「海だー!」

「お姉さんはしゃぎすぎですよ」

「あはは! こういう場所では遠慮なくはしゃぐのがマナーなのよ!」

「気持ちはわかりますけど、マナーではないですよね?」


 綺麗な海を前に、愛奈と遥がいつもの調子で言い合っている。窘めている遥の口調も、少し浮かれているようだった。


 夏休みに入ってから数日後。俺たちの所に剛から連絡が来た。家の別荘を使っていいと両親から許可が出たから、合宿に行かないかと。

 実現するかどうか不明だった世間話だけど、剛は本気で掛け合ってくれた。なんて頼れる先輩なんだろう。


 というわけで、車二台に分乗して、愛奈と麻美の運転でここまで来たというわけだ。ちなみにどちらの車も麻美の家が持っているもの。こっちはこっちで資産家だな。


 ここは、模布市から車で一時間半ほど走った所にある、岩渕家所有の土地。小さいながらも砂浜があり、木製のロッジがその近くに建っている。


 買い出し場所は、車で三十分ほど走った所にあるスーパーくらいしかないから、行き来には車が必須。

 辺鄙な場所ながら、部外者が立ち入れない土地を持っているのだから、剛の家が本当に金持ちなのがわかる。


 七月の下旬は、社会人にとっては普通に働かなければいけない時期で、お盆休みではない。しかし愛奈と麻美も二日ほど有給を取ることで週末と合わせてしっかり参加することに。

 保護者がいないと、こういうのは行けないし、車必須の場所故に愛奈たちは必要。実際、麻美たちの運転でここまで来たわけで。


 他の参加者は俺と遥とつむぎと、ラフィオとエリー。もちろん剛も。


 樋口は、どうしても仕事をしなきゃいけないからと、泣く泣く参加を断念した。思ったより悔しそうだったな。

 澁谷も、仕事に穴をあけるわけにいかないから不参加。夕方のローカル番組担当のアナウンサーだから、これは仕方ないか。


 それに、ここは模布市の範囲から外れてしまっている。


 魔法少女が変身できるのは、模布市に魔力が通っているから。そこから離れれば供給がない故に変身はできないし、フィアイーターも出てこれない。

 誰かが模布市に残って、怪物が出てこないか警戒しなきゃいけない。公安とマスコミにその仕事があてがわれて、俺たちはのんびりバカンスというわけだ。


「みんな。別荘を使うのはお正月以来で、中は埃が溜まってると思う。まずは軽く掃除から始めるよ」

「えー。掃除ー?」


 申し訳なさそうな剛の言葉に、愛奈もとても嫌そうな反応を見せた。


「あー。もしかして先輩、この後に家族で使う予定が?」

「うん。そのつもり」

「なるほど! 若い人たちに掃除の仕事を任せる代わりにタダで使わせてあげるという話ですね! うまい話には裏がある! よしやろう! 頑張るぞー。わたしはキッチン担当しますね!」


 こういう時に、家事が得意な遥は迷うことなく参加する。キッチンは自分も使うつもりだろうから、今のうちに見ておくとかの意味もあるのだろう。



「うまい話ってないものねー。掃除当番させられるなんて」

「いいだろ。別にこれくらい。電気や水道も使わせてもらってるんだから」


 一年のうち使わない期間の方が圧倒的に多いはずの別荘。使わない時は電気なんかは止めてるはず。

 それを俺たちのために開放して、光熱費は岩渕家持ちなんだ。掃除くらいやってもいい。


「まあねー。それにしても広いお風呂」


 俺と愛奈は風呂場にて、岩みたいな質感の床にモップを擦らせていた。


 家族で使うにはちょっと大きなお風呂。しかも露天風呂だ。海を見ながらお風呂に入れる。プライベートな土地だから誰かに覗かれる心配もない。


「お金持ちってすごいわねー。でも、普段は剛の両親とかが掃除してるのかしら」

「だろうな」

「他のお金持ちも、別荘使う時は毎回こんなことやってるのかしら」

「本当の金持ちなら清掃業者を雇うとか、管理人が住んでるとかだろうな」

「はー。これだからお金持ちは!」


 掃除に飽きた愛奈が、お湯の張っていない湯船に入って座った。

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