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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-24.学校のフィアイーター

 モフモフ大好きなつむぎがつけてる、ぬいぐるみ的なアクセサリーに扮することにした。

 つむぎも納得したのか、指先で軽く頭を撫でてから、校舎に入る。


「エリーちゃんはスリッパ使って」

「あ、はい。土足では入れないんですね」

「うん。というか、アメリカの学校って土足なんだねー」


 上履きに履き替えながらカルチャーギャップを実感しつつ、職員室に向かう。


 ラフィオも何度も小学校に連れていかれてるから、その雰囲気はよく知っていた。子供たちはにぎやかなものだ。授業中は別として、基本的にはいつもお喋りをして校内のどこでもざわめきが起こっている。

 だから、人のいない校舎の静けさが新鮮だった。これが夜なら、さらに不気味に感じることだろう。


「怪談が生まれるのも理解できるね」

「そうだねー。わたしみたいに、なにかの用事で夕方に学校に来た子が、例えば音楽の先生がピアノの練習してるのを聞くとか。そういうのから、噂は生まれるのかも」

「そこから肖像画が弾いてるって話になるのがわからない」

「バッハの絵って、なんか怖い顔してて不気味だからさ。なんなしかめっ面してるというか」


 確かに、眉間に微かに皺を寄せている。怒ってるわけじゃないけど、人によっては怖い印象があるかも。それが怪奇現象に紐付けられたとか。


「髪型は面白いんだけどねー」

「そうだね。あれ、セットするの大変そうだね」

「あれカツラなんですよ」

「そうなの!? エリーちゃん物知りだね。あ、先生すいません! 忘れ物を取りに来ました。五年二組の鍵をください」


 つむぎは最初から職員室に向かっていた。今頃教室の鍵が閉まっていることは知っていたのだろう。

 邪悪なモフリストである普段の様子とは異なる、溌剌とした元気な子の姿を教師は不審に思うこともないし、エリーの存在もさほど気にせず受け止めた。


 忘れ物の回収は何事もなく終わり、あとは職員室に鍵を返して帰るだけ。簡単なことだ。

 なのに、突如体に嫌な感覚が走った。これは。


「つむぎ。フィアイーターが出た。しかもかなり近い」


 たぶん、この校舎の中だ。

 なんだってこんな日に。



――――



「キエラ。フィアイーター作りに行かなくていいの?」

「なんというか……人間の世界って、暑いのよね」

「ええ。夏だから」

「エデルード世界はこんなに過ごしやすいのに」


 見渡す限りに広がる草原に寝転がり、いつまでも変わることなく青い空を見上げながらキエラは呟いた。

 あの蒸し暑い世界はなんなのだろう。わたしが作る理想の世界では、あんなものはいらない。年中同じ気温にするべきだ。


「四季があるから、それに沿った文化が生まれるんだよ」

「そう。ティアラの世界も面白いのね。けど、夏は好き?」

「いいえ。あんまり。好きじゃない。夏は楽しいイベントがいっぱいあるけど、お母さんそういうの好きじゃないから。……海水浴とかお祭りとか、行ったことないの。おやつにスイカが出てくるとかもなかった」

「そうなのね」

「ミラクルフォースは楽しい夏を過ごしているのに」

「ええ。じゃあ、今年の夏はティアラと楽しくすごさないとね。暑いのは我慢しないといけないかしら」

「暑くなったらここに戻ればいいよ。ありがとう、キエラ。わたしのために」

「友達だもの。当然よ」

「でも、恐怖集めもちゃんとやらないと」

「ええ。わかってるわ。でも暑いのよ。えいっ」


 虚空に穴を開けて、コアを放り込む。人間界の何かに当たってフィアイーターになるだろう。


「もう。キエラってば」

「いいじゃない。それより、ティアラが夏にやりたいこと、教えて」

「ふふっ。いっぱいあるよ。えっとね」



――――



「なんで無人の学校なんて、恐怖の集まらない所で出すんだよ」


 事実、警報が出る様子もない。目撃者がいないからだ。


 キエラの考えがわからない。けど、フィアイーターが出たなら倒すしかない。

 できれば、世間の目に怪物が触れる前に。


「つむぎ。スマホをエリーに渡して、変身してくれ」

「うん。学校で変身するの、なんか新鮮だね。デストロイ! シャイニーハンター!」


 高らかに破壊すると宣言しながら、つむぎは魔法少女シャイニーハンターへと変身。いつもながら物騒な言葉だ。彼女にモフられる動物は、比喩ではなく破壊される恐怖を味わっていることだろう。


「ラフィオ、フィアイーターはどこ?」

「あっちの方だ。上の階かな」

「階段登らないとねー。ねえ知ってる? この階段、夜になると時々一段増えるんだって。それを踏んでしまうとあの世に導かれてしまうって噂が」

「七不思議を増やすんじゃない。エリー、君は隠れていろ。それからスマホで悠馬たちに連絡するんだ」

「わ、わたしも怪物の所に行かせてください!」


 なにか重大な決意をしたかのようなエリーの口調。

 ラフィオもハンターも、一瞬だけ動きを止めた。


「危険だ」

「承知しています! しかし、今後皆さんと共に暮らすなら、同じように怪物と遭遇することもあるでしょう。それに、ラフィオ様は近い将来に、わたしを新しい魔法少女にするおつもりですよね?」

「それは……そうだけど」

「でしたら、今のうちに怪物の姿を見て、学ばないといけません」


 彼女の言うことも一理ある。けど、危険だから行かせたくないラフィオの気持ちも強かった。

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