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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-18.ラフィオとエリーの再会

 ビール飲みながら仕事の愚痴をこぼす愛奈と、それの聞き役に徹していた麻美も表情を明るくした。


「エリーちゃん偉いわね! ちゃんとお手伝いできて!」

「姉ちゃんとは大違いだな」

「えー? 悠馬、お姉ちゃんのこと大好きって言ったー?」

「言ってねえ!」


 その程度のことも聞き取れないくらい酔ってるのか、こいつ。


「みんな。フライドチキン食べる? やあ、君がエリーちゃんだね。はじめまして、岩渕剛です」


 冷凍したフライドチキンも買っていた。エリーが好きかはわからないけど、なんかバーベキューと同じくらいアメリカっぽいからと選んだ。それを解凍したものを、剛がキッチンから運んできた。


「はじめまして。岩渕さん」

「剛でいいよ」

「ありがとうございます。剛さんのことは聞いています。男性なのに堂々と好きな格好をして、魔法少女を名乗っているの、素晴らしいです!」

「それは光栄だ。ありがとう」

「あの。体は男性だけど心は女性とか、そういうのではない、のでしょうか」

「気にしないで。僕は心も体も男だよ。女装は、そういう趣味」

「そうですか。それを堂々とできるの、やっぱりすごいです」


 俺よりもずっと物腰が柔らかい剛は、エリーともすぐに打ち解けたらしい。


「剛さん、ラフィオ様はキッチンですか?」

「そうだよ。呼んでこようか?」

「いえ! わたしから行きます!」


 ペコリと挨拶をして、小走りで家の中へ。俺も気になってついていこうとしたけど。


「ゆうまー。なんかねー。箸がもてにゃいのー」

「うるさい。お前はもう飲むな」

「おしゅし、食べさせてー。あーんってやってー」


 言いながら、焼いた肉を握りしめた箸でつついている。お前にはこれが寿司に見えるのか。

 愛奈はもう片方の手で俺の服の裾を掴んで離そうとしない。助けを求めて麻美の方を見ると。


「姉弟で仲いいですねー。悠馬くん、先輩を大事にねー」


 こっちも出来上がってて頼りにならない。


 もうちょっとまともな人間なんだけど、だんだん愛奈のノリに釣られてきてないか? そんなことがあれば、会社にとっては割と重大な損失な気がする。

 俺の心配することじゃ……あるかもしれないな。愛奈のサポート役が愛奈のレベルに落ちるのは良くない。


 そんな愛奈がどうしても服を離そうとしないために、俺はこの場に引きとどまることになった。



――――



「ラフィオ様!」

「ぐえっ」


 キッチンでおにぎりを握っていると、エリーの声。直後、背中に衝撃。

 思ったより強い勢いで抱きつかれたから、苦しい声が漏れてしまった。


 スカート丈が短めなワンピース姿が可愛らしい。首には、彼女が倒れていた時にもつけていたペンダントが光る。


「あ! 申し訳ございません、ラフィオ様。痛かったですか?」

「ううん。そんなに……」

「もー。駄目だよエリーちゃん。ラフィオに乱暴するのは良くないよ。苦しそうな声出てたよ?」

「わ、わたしはそんなつもりじゃ……」

「つむぎ。お前が言えたことじゃない」


 注意したつむぎにこそ、普段から体を握られて苦しい声を漏らしている。


「お前にモフられるの、いつも苦しいんだからな」

「え……」


 なんでそんな意外そうな顔をするんだ。


「ラフィオ様、お元気そうでなによりです。お会いしたかったです」

「あ、ああ。僕もだよ」

「むー……」

「お作りになっているのは、おにぎりですよね? わたし、食べたことなくて」

「そうなのかい?」

「はい。日本語の勉強の過程で和食は少しは食べたのですが、お茶碗の中のお米ばかりで。おにぎりというの、本物は初めて見ました」

「食べてみるかい?」

「いいんですか!?」

「もちろん。君のためのパーティーの食事だ」

「ありがとうございます。では、あーん」

「……?」


 食べさせてほしいとばかりに、目を閉じて口を開けるエリー。ラフィオが固まっていると、彼女は片目を開けて訴えるような視線を向けてきた。


「仕方ないな」

「はい、エリーちゃん」

「むごっ」


 ラフィオが動く前に、つむぎが別のおにぎりを掴んでエリーの口に押し込んだ。


「もっとほしい? いっぱい食べてね。ピラフおにぎりもあるよ」

「ひはふほひひり?」

「飲み込んでから喋れ」

「……。はい、ラフィオ様。残りは後でいただきますね。ピラフおにぎりとはなんですか?」

「悠馬がピラフ好きだから作ってるんだよー」

「遥さんは悠馬さんのことが本当に好きなんですね!」

「そうだよー。なんてったって恋人だからね!」

「すごいです! 男性を本気で愛することができるの、尊敬します!」

「もっと褒めていいんだよー」


 年下に褒められて喜ぶ姿は情けない。あと、恋人というのも偽装した設定なんだけどな、本当は。悠馬がこの場にいれば速攻で否定していたことだろう。

 その設定でテレビの取材も受けるくらいだから、そこまで気にしてるわけじゃないとしてもだ。エリーが身内になるなら、対外的に有効だから言ってる建前ではなく本当のことを教えるべきかな。


「わたしだってラフィオのこと、本気で愛しているのに……」


 つむぎが小さな声で囁いた。それが怖いんだよな。エリーたちには聞こえてないようだけど。


「そうだ遥さん! わたし、因数分解について調べましたよ! さすがに高等数学の問題を解くのは難しいですけれど、なんとなく概念は理解できました」

「……え?」

「面白いですね。変数を含んだ数式を掛け算に変換するなんて。わたし、この国でも勉強がしたいです!」

「あわわ……エリーちゃんがわたしより賢くなっちゃう……」

「年下と張り合おうとするな」


 悠馬がいれば言うであろうことを代理で言っておく。

 というか、地頭は今の時点でエリーの方が上かもしれない。

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