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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-17.エリーとトライデン社

「子供だし、そんなに強い言い方はしていないわ。ただ、クローヴスの夫妻を馬鹿にしているように思えた。……もちろん、警官たちには敬語で話して、礼儀正しく接していたのだけど」

「それほど、両親のことを憎んでいたのかな」


 エリーのクローヴスへの気持ちは聞いた。大事にされていないことも。


「でしょうね。その時以外は本当にいい子だから。推測だけど、物怖じしない性格は元からのものね。悪い子ってわけじゃないけど、活発な子だったと思う」

「そうなのか?」

「一応、彼女の母国語、英語を話せる警官にも取り調べに同席してもらった。そして英語で会話してもらったわ。意外なことに、ちょっと口汚いスラングをいくつか話してたそうよ」


 それはちょっと想像がつかないな。


「丁寧な口調とお淑やかな性格は、後から身につけた? 日本語を学んだ時と一緒に。ああそうか。金持ちの娘としてふさわしい振る舞いか」

「そういうこと。もしかしたら今も、自分を押さえつけてるのかも」

「良くないな。……家では、わがままさせてやってもいいかも」

「そうね。今の彼女なら、それくらいでちょうどいいわ」


 エリーの幸せを願うのは樋口も同じか。


 けど、彼女を引き取るとしたら心配なことがひとつ。


「トライデン社はもう、エリーに興味はないんだな? 高い金をかけて作ったお嬢様を返せとは」

「言わないわ。完全にどうでもいいって様子。レールガンの方が、まだ欲しがってるほどよ。そっちも返す気はないけど」

「魔法少女の武器にするために?」

「そう。表向きは、事件の証拠として警察で保管していることになっているわ。緊急時は、警察の特別な判断を持って魔法少女たちに貸与することもある。そんな形の運用ね」


 そりゃそうか。民間人である魔法少女たちが普段からレールガンを持ってれば、銃刀法に抵触する。


「一応報告するわね。トライデン社に協力したこの街の会社の人間に、何人か逮捕者が出たわ。全員が、レールガンや部隊の所持する銃の製造に関わった者ね」


 つまり、銃を作ったから逮捕だ。


「明確に銃刀法違反だから。銃製造に関わっていても、細かな部品なんかを作ったメーカーは罪に問えなかったわ。図面を渡されて、これを作れと言われただけ。銃の部品とは知らなかったと言い張られれば、追求はできない」

「そうなのか。街のことを考えれば、逮捕者は少ない方がいいけど」

「同意見よ。取り調べを受けた人みんな、これまで犯罪とは無縁な善良な市民」


 ちょっとした出来心で外資系の会社に協力してしまったけど、これに懲りて二度と怪しい案件を引き受けないなら、それでいい。


「つむぎの両親たち、制御系のシステムを作った会社や、ドローンの製造元も予定通り無罪よ」

「それは良かった。会社の取り調べは終わったんだな」

「ええ。でも監視は続けないといけないわね」

「監視?」

「そう。会社には製品のデータが残っている。図面や金型や、制御システムのプログラム。それぞれの会社から、コントラディクションシステムの残滓をかき集めれば、似たようなものができるかも」


 レールガンや銃が、再び世に現れるかもしれない。


 この街の企業が、それらを作る技術を持ってしまった。

 トライデン社は間違いなく、一時は魔法少女を助ける正義の企業として脚光を浴びた。


 国産製品で追従し、似たような栄光をつかもうと考える輩はいるかも。


 そのために武器が作られてしまう可能性が高い。



「御共夫妻の作った映像認識システムは見事よ。ドローン本体の設計なんかも素晴らしい。平和目的で転用するなら結構なこと。けど、この国で銃を市民が持つことは許さない」

「当然だな。けど、持ちたがる奴がいるのか?」

「こまったことにね。レールガンに組み込まれた部品で、自社製作分は返せと言ってきた企業がいるのよ」

「それは……馬鹿だな」

「できるわけがないし、公安に目をつけられるだけで終わるものね」


 その会社は気を急いただけ。それで終わり。


 けど、もっと賢い会社もいるかも。公安に黙って銃を作ろうとする輩が。そういう奴が出ないか、目を光らせないといけない。


「公安も大変だな」

「本当よ。どれだけ人手が割かれるか。実を言うとね、エリーにも少し関わることかもしれないの」

「……エリーが、クローヴスから技術について何か知ってるかもしれないって?」

「ええ。父親からなにか重要な情報を聞いていないか、ね。銃器製造のヒントになるようなこと」

「エリーはそんなこと知るはずがない」

「わかってるわ」


 彼女は父親を飾るアクセサリーだ。仕事には関わっていない。が、部外者にとってはそんなこと知ったことじゃない。立派な、コントラディクションシステムの関係者だ。


「だから狙われる? 連れ去って、システムについて知ってることを話せって迫られたり」

「しないと思う。けど確証はない」

「エリー自身はこのことを?」

「知っているわ。実のところ、少し警戒している所はあった。あなたたちに迷惑をかけることをね」


 自分が不審者に狙われるとして、そんな自分が俺たちと一緒に過ごせば迷惑をかける可能性は当然ある。


「遠慮していたわ。けど、あなたたちと一緒に過ごす欲求には抗えなかった。不埒な考えを持っている人間が本当にいるって保証もないしね」

「そうだな。危険よりは、自分のやりたいことを優先する気持ちはわかる」


 そこで引っ込まないあたり、エリーの元の性格は活発寄りなんだと思う。


「エリーがあなたたちに引き取られること、警察のごく少数の関係者しか知らないわ。だから、良からぬ考えが持つ者もエリーの所在は知らないわ。でも、なにかあったら教えて」

「ああ。わかった」

「皆さん! お肉焼けましたー」


 エリーが少しよろめきながらも、大きなお皿を運んできたから、俺たちは話しを切り上げた。

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