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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-14.遥の成長

 本好きが見たら卒倒しそうな光景を眺めていると、コアが見つかったらしい。


「あった! 背表紙のところ!」

「ですね! くらえー!」


 ハンターが真っ先に弓を引き絞り、射る。至近距離からの外しようのない攻撃で、コアは貫かれてフィアイーターは消滅。

 誰かの本はボロボロの状態で、商店街の床に横たわっていた。


「ふいー。今日も勝てたね! じゃあ帰ろっか!」

「そうだな。試験勉強の続きしないとな」

「あうー。やだー……ゆ、悠馬! 今日は暑いね!」

「話題を逸らすな」


 夏だから暑いのは当たり前だ。


「暑い中でこんなに運動したから、わたしもう汗だくだよ!」

「あー。それはわかる」

「魔法少女の格好って大胆で涼しいとも言えるけどさ。やっぱり運動したら暑いよね! ねえ、悠馬の家でシャワー浴びてもいい?」

「家で……わかった。うちで浴びろ」


 今、遥を家に帰したら明日まで勉強しないだろう。

 つきっきりで見てあげないと。


「やったー!」

「俺と一緒に、とか姉ちゃんみたいなこと言うなよ?」

「なによ。わたしのこと馬鹿にして。言おうとしてたけど」


 やっぱり。


「言わない言わない。てかさ、暑いのは悠馬も一緒だよね? 制服だし」


 確かに、夏服とはいえ魔法少女よりも涼しくはない格好だ。


「あと覆面してるし」

「うん」


 一応、通気性はいい素材でできているから、息苦しくはない。見た目ほど暑くもない。

 とはいえ、中が蒸れるのも事実だ。普通にしてるよりは、当然暑いし運動するとなおさら。


「うん。悠馬もシャワー浴びなきゃね!」

「本当に、一緒に風呂入ろうとは思ってないんだな?」

「うんまあ。もちろん。なんとか、みんなが早いうちにシャワー浴びられる方法はないかなと考えているだけです! わたしとしてはまあ、一緒に入るのもやぶさかではないというか?」

「思ってるな。姉ちゃんと一緒に入れ」

「やだ」

「お断りします!」


 ちらりとお互いを見て、きっぱりと言う二人。別に仲が悪いわけではない。

 俺に意識を向けすぎてるだけだ。勘弁してくれ。


「ラフィオはわたしとお風呂だよね!」

「なんでそうなる」

「なるの! ラフィオもモフモフの毛皮してるし、この時期暑いよね?」

「……まあそうだけど。お前と混浴する理由には」

「なります! じゃあ帰ろっか!」

「おー。いいね。ハンターってば、ラフィオと仲良くするの頑張ってて。青春だねー」

「ラフィオ。今夜も夕食作るの頼めるか?」

「ほあっ!?」


 今日も夕食作りに逃げられず試験勉強に追われることを悟ったライナーが絶望的な顔をした。


「ゆ、悠馬? ちょっとはその、手加減してほしいなーとか。わたしのご飯を食べる悠馬を見てるのが、わたしの幸せなのを」

「試験と、あれば追試が終わったらな」

「はい……」

「はい! 悠馬さん夕食作りは任せてください!」

「なんでお前が返事するんだ!」

「ラフィオと一緒に作るから! えへへ。今日は何作ろっか」

「待ってろ。冷蔵庫の中身と相談する」

「ねえラフィオ。わたしたち、まるで夫婦みたいだね!」

「おかしなことを言うな」



 そしてハンターは、自分以外はラフィオに乗らせないとばかりに、モフモフの背中に抱きついた。独占欲が極まっている。

 まあいいんだけど。そうなれば俺は魔法少女のどっちかに家まで運んでもらわないといけないわけで。


「わ、わたしが悠馬を背負うのを断れば、悠馬は帰れなくて勉強を見られなくて済む……」

「遥?」

「いえなんでもないです! 行きましょう行きましょう。うん、悠馬を徒歩で帰らせるなんて滅相もない!」


 それで今日は切り抜けられても、明日以降が地獄になると悟ったライナーが素直に俺を背負って走る。


 そろそろ、怪物が消えて魔法少女たちが勝ったことを悟った人々がやってくる頃だ。


 ここは商店街。周囲の店舗に避難した人間もいて、彼らが顔を出していた。


「みなさん! もう街は平和ですよ! 応援ありがとうございます!」


 セイバーの声に、あちこちから感謝の声が聞こえてくる。それに手を振り返しながら、俺たちはアーケードを抜け出した。




 それから少しして。


「あー。無理。疲れた。もう何もできない……」

「お疲れ。手応えはどうだ?」


 期末テストの最後の答案用紙が回収された後、学校の机に突っ伏した遥は、こっちを見ずに親指だけ上げた。手応えはあったのか。


「いや。なんかね? 一年の頃のテストはなんか、なんとなくできたかも? みたいな感じの手応えだったの。よくわからなかったけど、なんかいい感じに点が取れるかも? みたいな、ふわふわした自信」


 実際に、それで点が取れるはずはない。根拠のない自信は、学問の場では間違いなく失敗する。


「今は?」

「解ける問題と解けない問題がはっきりしてきました。確信はないけど、赤点は回避できると思う。……すごく疲れたけど」

「そうか。頑張ったな」


 大きな成長だ。


「ねえ悠馬。勉強頑張ったご褒美にデート行かない?」

「いいけど、今日は別の用事がある」

「えー? なに?」

「エリーが来る」

「ほんとっ!?」


 急に元気になった。気持ちはわかるけど。

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