表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

327/746

7-12.樋口と政治家たち

 怪物が出た場所を確認する。ここからちょっと離れている。図書館の人たちはそれを知って、安堵したように警報を切ってそれぞれの日常に戻っていく。

 慣れてるな。余計な混乱しないだけ、ありがたいのかも。


「よーし。行こう悠馬!」

「わかった。けど終わったら勉強続けるぞ」

「うん! ちょっと動いてリフレッシュしないとね!」


 素早い動きで、机の上のノートや筆記用具を片付け始める遥。なんでこんな時だけ俊敏なんだ。


「樋口。現場で遥の車椅子の回収、頼めるか?」

『無理。忙しい』

「おい」

『他の誰かに頼んで……』


 樋口に電話したところ、思っても見なかった回答が来た。



――――



『ごめん。ほんっとにごめんなさい。けど、ちょっと今手が離せなくて……』


 樋口のデスクの前には書類の束。パソコンのモニターには、早めに返事を出さないといけないメールの数々。それから作らないといけない書類。

 昨日、エリーの身柄を警察の然るべき場所に預けた後、再び疲労と眠気が襲ってきて樋口は倒れるように眠った。

 そして起きたら、処理しなきゃいけない仕事の数々。


 エリーの身柄のことや、他に逮捕された母親やトライデンの社員。もちろんクローヴス自身についても、死んだから終わりというわけではない。それらに付随する事務仕事が一斉に来た。


 さらに、今回の件でクローヴスの工作に屈してしまった国会議員共が言い訳のような声明を発表しつつ、権力と魔法少女たちの間に立つ窓口である樋口にも言い訳と圧力をかけてきている。

 あれは高度な政治判断だった。クローヴスが虚偽の説得をして、トライデンがもたらす国益を過度に強調してたのが悪い。

 そんな言い訳を難しい言葉で並べ立てている。


 中には野党議員が、政権与党のやり方が間違ってると示すために乗ったとか言ってくる例も。そういう話を公安にするな。国民に向けてやりなさい。


 むちゃくちゃな言い分だから、国民にやっても総スカン食らうだけだろうに。そんなのだから、あんたたちは選挙に勝てないのよ。


 与野党共に、そんな醜い言い訳をする理由は、それぞれのメールの最後の方に込められていた。

 今後とも魔法少女たちとの関係強化をよろしく頼む。どうか、魔法少女たちの敵意が自分たちに向かないようにしてほしい。

 こちらの名前を、魔法少女に伝えることは無いように頼む。


 各位文面は微妙に違うけど、こんな感じだ。



 要は自分の立場を守るため。少しは国とか国民の安全なんかも考えてるのだろうけど、メインで守るべきは議席。あるいは役職。


 魔法少女は国民たちに人気がある。みんなかわいいし、平和を守ってくれる。

 自分の判断が魔法少女を怒らせたと国民に知られたら、その権力者は非難を受けることになるだろう。


 もし魔法少女の恨みを本気で買って、繋がってるメディアで権力者を名指しで非難すれば、その瞬間に立場を失う。

 それを防ぐための工作を、せっせとやっているわけだ。


 彼らには魔法少女が何に見えているのかな。


善良で、他者への思いやりがあって、少し馬鹿な愛すべき魔法少女たち。

 彼女や、それを取り巻く人たちの真の姿は、樋口にしかわからない。この権力者たちは怯えているのだろう。


 気になるなら実際に会ってみればいいのに。


「まあいいわ。この状況、使わせてもらいましょう。あの子たちのためにね」


 独り言と共にニヤリと笑う。


 権力者たちは根回しに長けている。圧力とは言うけど、希望を叶えるために対価を払うことに抵抗がないのも事実。

 とりあえず、レールガンを引き続き魔法少女が使えるよう、トライデン本社に圧力をかけさせてもらおうかしら。


 それからエリーのことも。本国に送還なんて無粋な処置はせず、こちらで身柄を勾留すること。その際、かかる生活費も政治家たちに出させよう。


「了承しないと、魔法少女たちが怖いわよ、と」


 実際にそうは言わないけど、内容としてはそんな感じの脅しの文面を権力者たちに送る。

 心が弾む感覚。樋口は、自分がそんな気持ちになっていたことに驚いた。


 いい気分だった。



――――



「フィアァァァァァ」

「うっわ! 本のフィアイーター! 嫌い!」

「本を読まないと、こうやって怪物として出てくるっていう教訓かも」

「そんな教訓はいりません!」

「ふたりとも! 来たならさっさと戦って!」


 なんとか麻美に連絡をつけ、社用車での車椅子の回収をお願いしてから、俺とライナーは現場に駆けつけた。

 セイバーは既に来ていて、黒タイツを二体まとめて切り裂いて殺しているところだった。


 商店街の真ん中で、本の怪物が暴れている。周りに書店は見当たらないから、誰かが持ち歩いていたものが不幸にして怪物になってしまったのだろう。

 キエラが気まぐれに、この商店街のアーケードの天井付近に穴を作ってコアを落として、偶然に当たった何かがフィアイーターになったとかのパターン。


 文庫本が人間の身長サイズにまで膨れ上がり、大きく見開かれてていて、紙製と思しき手足がそこから生えている。

 そんな開き方をすれば本が傷む、なんて抗議は無駄だろう。


 当然のように、黒タイツも引き連れている。それが、歴史のありそうな情緒あふれる八百屋さんに突っ込んで乱暴しようとしていたのを首根っこ捕まえて押し倒し、止める。

 車椅子のパーツとして偽装している折りたたみ式のナイフを首に刺して殺し、次の敵を探そうとして。


「フィー!」

「うわっ! 危なっ!」


 黒タイツのひとりが包丁を腰だめに構え、こっちに突進してきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ