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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-8.エリーの処遇

「悠馬さん。お願いします。わたしを、警察に引き渡さないでください。あなたの家に住まわせてください。この国で、普通の暮らしをさせてください」


 彼女は悲痛な感情を漏らしながら、深々と頭を下げた。

 こんな小さな女の子がやる仕草じゃない。


「頭を上げて、エリーちゃん。わたしたちでなんとかするから。ね?」


 遥が慌てたように声をかける。それはいいんだけど。


「姉ちゃん」

「ええ。わかってる。善意に従うなら、この子のこと匿うべきよね」

「だけど、警察が放っておかない」

「そうよ。樋口さん含めてね」

「警察との関係、悪くしたくないんだよな……」


 魔法少女たちが正体を隠しながら堂々と戦うためには、警察というか公安の協力が必要。

 というか、樋口にエリーの存在を知られてる以上、引き渡しを拒否するのは不可能だろう。


 相手は国家権力みたいなものだから。


「樋口さん自身はいい人だし、わたしたちの気持ちも汲んでくれるとは思うけど。その後ろにいる偉い人たちがねー」

「愛奈さん、お願いします……」

「ううっ……そんな顔しないで……」


 小さな女の子に泣きそうになりながら懇願されると、良心が咎める。

 とはいえ、どうするべきだろうか。



――――



「エリーちゃん、警察に引き取られた後はどうなるの?」


 家の玄関で、石の入ったバケツをふたりで持ちながら、ラフィオとつむぎはリビングでの会話に聞き耳を立てていた。

 普通に会話に参加すればいいのだけど、なんとなく出ていきにくくて。


 というか、つむぎが袖を引っ張り止めてきた。もう少しだけ、ふたりでいたいと。

 それでも彼女は、エリーの行く末を案じている。


「警察に引き取られて、その後アメリカに戻されるだろうな」

「アメリカで、どうなるの?」

「施設に引き取られて、また里親に引き取られるまで待つ。それか大人になったら働く」

「そっか。寂しいね」


 つむぎも、同情するような口ぶりだった。


 それでも彼女は、エリーの側に行って励ますことはできないようだった。ラフィオの袖を掴んで、自分の方に引き寄せ続けた。



――――



「なるほどね。状況はわかったわ。彼女の身柄は日本の警察で引き取ります」


 少し後、樋口は目覚めて少し元気になり、俺たちの話を聞いた。


 疲労度から考えると、もう少し寝てなきゃいけないだろうに。公安としての使命感で起きたのか。


 とにかく、樋口の決定は予想通りの非情なものだった。


「まずは病院。小さい体で無理してたでしょうし、歩き続けて足への負担も大きい。今はちゃんと受け答えできてるけど、体に異常がないか検査しないと。怪我があれば治療するし、ちゃんと休ませる。食事も摂らせる」


 大事なことだ。


「その後警察の手で取り調べて、トライデン社の罪を暴く」

「子供の知ってる情報が、なにか役に立つか?」

「立たないでしょうねー。けど、警察としては調べないわけにはいないのよ」


 樋口自身、そんなに気の進む話でもなさそうだな。


「樋口さん! なんとかなりませんか!? エリーちゃん、すごく不安そうですよ!」

「そうは言ってもね……」


 立場があるから仕方ないとはいえ、魔法少女である遥相手にも強く出られない。

 仕方ない。


「樋口。取り調べはやるべきだと、俺も思う」

「悠馬!?」

「まあ待て。結局、取り調べも形だけのものだろ? 警察も、この子に罪があるとは思ってない」

「ええ。犯罪者扱いはしないわ。優しそうな婦警と、軽くお喋りしてもらう程度にする。それは約束できる」


 警察として、クローヴスの娘に何もしなかったわけじゃないという建前がほしいだけだ。その程度でもいいのだろう。

 問題は、取り調べの後。


「警察はエリーをアメリカに返そうとするだろうな」

「ええ、まあ。居着かせたら不法移民扱いになるから」

「それは待ってくれ。エリーは望んでない」

「でしょうね。じゃあ、どうするの?」

「……うちで引き取れないかな?」

「いやー。ちょっと厳しいというか。ラフィオ含めて、扶養家族三人ってのは、ちょっとわたしの稼ぎでは厳しいです。扶養手当は悠馬ひとり分しか貰ってないし。一時的に置くのはいいけど、ずっとは無理かな」

「そうか……」


 金の問題は深刻だな。愛奈も申し訳なさそうに言うのが、ちょっと気が咎めた。


「なんとかしてあげたいけどねー。樋口さん。この子の生活費、国が出してくれたりしない?」

「無茶言わないで」

「そうよねー」

「……まあ、なんとか手は考えてみるわ。とりあえず、取り調べが終わったら即座に帰国なんてことにはしない。わたしの方でも、この子がこの国で暮らせるように頑張ってみる」

「本当か?」

「ええ。わたしだって、小さな女の子に酷い目に遭ってほしくないもの。施設は嫌なんでしょう?」

「はい……。ありがとうございます、樋口さん」


 怖いはずの警察が、思っていたより柔軟な対応をしたことに、エリーは驚いていた。


「感謝なら悠馬たちに言いなさい。あなたを不幸なんかにさせないと、必死に頑張ってるんだから」

「いや。そこまででは」

「謙遜しないの。家族を失う寂しさは、あなたたちが一番よくわかっているでしょう? あなたは、エリーがこれ以上寂しくならないように気を遣った。違う?」

「……違わない」

「ええ。それでいいの。人として正しいことをしている。誇るべきよ」

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