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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-4.樋口の限界

 俺たちの姿を見た途端、駆け寄ってきて思いをぶちまけた樋口に、愛奈は労りの言葉をかける。


「お疲れ様です、樋口さん。寝ます?」

「寝たい……けど寝るわけにはいかないのよ……」

「公安も大変ですね」

「ええ。今回の件は特に大変だわ……。悠馬、支えなさい」

「なんで俺」

「得意でしょ」


 確かにいつもやってるけど。寝かかってる酔っ払いの肩を支えるのは。

 とにかく、今にもぶっ倒れそうな樋口に寄り添われながら、拠点に入って。


「本当に、何から何まで、ありがとうございます。日本の家庭料理は本当においしいです」

「あははー。そんなに褒められたら照れちゃうな」

「障害をお持ちなのに、苦にすることなく家事ができるの、遥さんは素晴らしいです。尊敬いたします」

「うんうん。いくらでも褒めていいよー。おかわりいる?」


 手料理を振る舞っている遥がいた。ラフィオとつむぎも同じ食卓にいる。


「いや、何してる」

「つむぎちゃんから連絡があって。来ちゃいました!」

「来るのはいいけど」

「エリーちゃんほんと疲れてるみたいでね。わたしが来た時、倒れるように寝てたの。すっごく長い時間歩いてたみたいだもんね! でもお腹すかせて起きたみたいだから、作ってあげたの。和風のご飯」

「材料はわたしとラフィオが買ってきたんです!」

「そうか」


 既に仲良くなってしまったようだ。


 まあ、保護すること自体は悪くはない。実際、相当衰弱していたようだし。


 そんな少女、エリーは入ってきた俺たちを見て、不安げな顔を見せた。

 俺というよりは、一緒にいる愛奈や樋口たちへの反応だろう。


 エリーはどうやら、自分の立場をなんとなく理解しているらしい。そして、警察なんかの厄介になるのは避けたいと思っているのだろう。

 実際に避けられると本気で思ってるかはわからないし、その理由も今は不明だけど。


 自分と同じくらいの年齢の子供に保護されて、大人とは言えない年齢のお姉さんに優しく接してもらっている間は心安らかに過ごせた。

 けど大人が来ると別だ。大人は訳ありの子供を匿ったりはしない。無情に警察に突き出す。

 エリーは知らないだろうけど、樋口はその警察の一種だし。


 今はそんな威厳などなく、目を擦って必死に寝落ちの誘惑に抗っているけど。


「樋口。どうするんだ?」

「まずは事情聴取。本当は警察に保護させるべきだけど」

「本人は嫌がってるそうだぞ?」

「嫌がる相手でも必要なら保護するのが警察の仕事よ」

「そうだな」


 エリーに聞こえないように小声で話す。その間に、愛奈が笑顔でエリーの方に近づいていった。


「こんにちは。日本語は話せるのよね? わたしは双里愛奈。そして、彼が弟の悠馬」

「はじめまして。エリザベート・クローヴスと申します。悠馬さんのことは伺っています。遥さんの恋人、なんですよね?」

「んー?」

「ふふっ」


 愛奈と遥の視線がぶつかる。睨み合いに近い。


「もー。遥ちゃんってば冗談が好きなんだからー」

「冗談でそんなこと言いませんよー。ね、悠馬? わたしたち恋人だよねー?」

「俺を巻き込むな」

「日本の方は恋愛には奥手と聞いておりましたけど、皆様は恋に熱心なのですね。ラフィオ様も、つむぎさんと恋仲だと伺いました」

「いや、違うから」

「様……?」


 ラフィオの否定の言葉と、俺の疑問の言葉は同時に発せられた。

 前者については深く考えることではない。つむぎが強固に主張していることだ。それより、エリーはなんでラフィオをそんな呼び方したんだ。


「なんかね。ラフィオのこと尊敬してるって」


 遥が松葉杖で俺に近づきながら小声で言う。


「ひとりで違う世界に来て、心細さと戦いながら人間を守るために頑張れるの、尊敬するから様をつけるって」

「そうなのか」


 ラフィオが偉い奴なのは間違いない。尊敬すべきなのもわかる。

 でも。


「ラフィオの事情のこと、話したのか」

「うん。河原で倒れてたエリーちゃんをここまで運ぶのに、大きくなったって」

「遥たちが魔法少女なことも?」

「あー。うん。ラフィオが喋った」

「なんでだよ……」

「すまない、悠馬。けどちょうどいいと思ったんだ。この子は魔法少女としての適正が高い。新しい魔法少女にぴったりなんだ」


 ラフィオもやってきた。新しい魔法少女か。


「最悪……」

「樋口?」

「寝るから、この子の事情聴取はやっておいて。盗聴器の類は仕込まれてないみたいだから、後はこの子を家の外に出さなかったら秘密は広まらない」

「いや、事情聴取ってなんだよ」

「ぐー」

「おい」


 限界を迎えた樋口は、俺に持たれかかりながら寝落ちした。


 しかたない。寝かせてやろう。和室まで抱きかかえるようにして運ぶ。


「お姉さんお姉さん。悠馬ってば樋口さんもお姫様抱っこしてますよ」

「お姉さん言わない。悠馬はあれ、好きよね」

「隙あらばやりますからね」

「わたしにも、またやってほしいわ」

「お姉さんは酔っ払ったらしてもらえるので羨ましいです」

「遥ちゃんだって、足のことで言い訳がいくらでもできるじゃない」

「強い男性って憧れます。私を運んでくださったラフィオ様もそうですけど」

「エリーちゃんわかってるねー。力持ちな男の子って、なんかいいよね。自分で出来ることは自分ですべきだけど、悠馬に頼りたいって思うこと多いもん!」

「はい!」


 一応はまだ部外者のはずのエリーまで会話に参加して、好き勝手に言っている。別に、好きでお姫様抱っこしてるわけじゃない。なぜかそういう巡り合わせになるだけだ。

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