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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第7章 ゲストキャラとロマンス

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7-1.石拾い

 恋をするために、ここに来た。


 前の恋は失敗だったから。


 ここなら、素敵な人と出会える気がした。



――――



「暑いねー。夏本番ってやつだねー」

「そうだな。水分補給は忘れるなよ」

「ラフィオが飲ませてくれる?」

「自分で飲めるだろ」

「えへへー。後でアイス買いに行こっか」

「それより朝食が食べたい」

「お母さんの朝ごはん、ラフィオは食べられなかったもんねー。遥さんに連絡したら来てくれるかな?」

「それもいいけど、今すぐに食べたい」


 クローヴスとトライデン社が起こした騒動から一夜開けた日曜日。模布市の住宅街は、普段と変わらない様子だった。



 夏の昼前の時間帯。日差しが燦々と降り注ぐ中、少年姿のラフィオとつむぎは並んで拠点の家まで向かっていた。


 もうすぐ夏休みという時期。本格的に暑くなってきて、家ではエアコンが必須。外では必然的に薄着になる。

 つむぎも水色のノースリーブの服。下は相変わらず青いショートパンツだ。ラフィオと手を繋いで並んで歩いているけれど、ふと隣を見れば下着が目に入りかけて、慌てて正面を向いた。


 昨夜はつむぎの両親が帰ってきて、久々の一家団欒となった。遅い時間ながらつむぎの母は娘のために好物のオムライスを作り、いろんなことを話した。

 朝も、ミラクルフォースを見ながらの家族での朝食。両親はまた会社に向かうそうだけど、つむぎにとっては幸せな時間だったことだろう。


 その間、ラフィオはずっとぬいぐるみのフリをさせられていた。


 両親に存在を知られるわけにはいかず、動かずモフられ続けながら空腹に耐えていた。


 ミラクルフォースとトンファー仮面が終わってから、つむぎは両親に出かけると言って、ようやくラフィオはぬいぐるみ役から解放されたわけだ。


 昼過ぎには悠馬が退院する。みんなで隠れ家に集まって、強敵に勝ったことについてちょっとしたお祝いをしようかとは話している。またバーベキューになるのかな。

 それはそうとして、ラフィオは今の空腹をなんとかしたかった。



 コンビニに寄って、おにぎりとプリンを買う。水分補給のためのお茶は、つむぎが大きめの水筒を持ってきているから買わなくていい。

 ひとつしかないコップで回し飲みする気かと思い至った時には、拠点に着いていた。


 買ったおにぎりを食べて、リビングの椅子に座って少し休憩。プリンは後で食べることにしよう。


「石の様子はどう?」


 問われて、リビングを占拠している魔法陣と石に目を向ける。

 魔力の流れはラフィオにしか見えない。


「だんだん魔力は貯まっていってる」

「魔法少女の宝石になるまで、どれくらい?」

「九月のどこか、かな」

「夏休み終わっちゃうねー」


 まだ始まってもない夏休みの終わりに、つむぎは想いを馳せた。


「でも、ラフィオと夏休みはいっぱい遊びたいよね! ねえ、海とかプールとか行かない? お祭りも行きたい。あと、ウサギさんランドも!」

「ウサギさんランドは前も行っただろ?」

「また行きたいの! ラフィオと一緒ならどこに何度行っても楽しいからねー。ラフィオとデートしたい!」

「行くとしても、大人の誰かと一緒だからな」

「そうだよねー。こうやって、ラフィオとふたりきりになれるのは家の近くだけ。はいっ」


 子供だけで遠出はできない。そんな事実に不満を口にしながら、つむぎが水筒のコップをラフィオに渡す。


 さっき、つむぎがこのコップでお茶を飲んでたのは見た。外ならともかく、この家には訪れる者全員が使えるだけのコップは用意されてるから、水筒のコップの使いまわしはしなくていいんだけど。

 つむぎが、キラキラした目でこっちを見ていた。間接キスになることを理解した上で飲めと言っている。


 コップの縁の、つむぎが口をつけてないと思われる箇所から飲ませてもらった。


「えへへっ」

「嬉しそうだなあ」

「好きな男の子と一緒にいるの、幸せなんだよー」

「僕は別に、お前のことはなんとも思ってないけどな」

「でも、一緒にいてくれる」

「それはまあ、大切な魔法少女だから。戦ってくれるから」


 そうとも。つむぎは魔法少女。ラフィオが憧れた世界を守るために必要な人員。


 誰もが自由に恋ができる世界。キエラ以外に選択肢がなかったあの世界とは違う。

 ラフィオは、恋をするためにこの世界に来た。


 目の前の、こちらに好意を向けてくる少女が恋の相手になるかは、ラフィオにはわからなかった。



「じゃあ行こっか。石拾い」

「そうだな。魔法少女のために」

「新しい魔法少女はどんな人がいいかな? わたしたちのこと知ってる人に、適正ある人はいる?」

「麻美は変身できる」

「そっかー。なってくれるかな?」

「どうだろうな。愛奈のサポート役に徹した方がいいと思う」

「たしかに。麻美さんまで魔法少女になったら、愛奈さん仕事できなくなるもんね」


 だから、新しく仲間を探すべきかな。


 そんな会話をしながら、魔力を吸われた石をバケツに入れて河原へ行く。そして魔力が貯まっている石と取り替えてリビングに置く。

 単純ながら、腕力のいる作業だ。


 それでも慣れたもの。ふたりでバケツを持って河原へ向かって。


 大小の石が転がる河原に、人がうつ伏せで倒れているのを見た。

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