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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-48.企みの終わり

「逮捕されたんだな」

「ええ。銃刀法違反でね。クローヴスが媚を売って工作してた政治家たちは、彼らを切り捨てた。この街の政治家も、中央のもね。明日には、与野党の国会議員さんが声明を出すはずよ」

「記者会見とかで?」

「ええ。国益のためになるかと思って静観していたが、見極めが甘かった。今後は気をつけるから投票よろしく。まあそんなことを、もっと偉そうな言葉選びで話す」


 樋口の嘲り混じりの言い方は、今回の件での上の方針への不信感の裏付けだ。


「警察上層部も半分は政治家みたいなものなのよね。現場のこともわかってるはずなのに、力になろうとしてくれない。嫌になるわね」

「樋口は立派だよ」

「ええ。ありがとう。あなたたちもね。とにかく、日本に来ていたトライデン社の人員は逮捕されて、この国で裁かれる。アメリカさんやトライデン本社が身柄を取り戻そうとするかは微妙なところね」


 本社としても、このプロジェクトの人員は切り捨てた方が会社にはプラスになると考えるかも。

 全てはクローヴスが独断でチームを率いて行ったことで、本社は意思決定にあまり関わっていない。大変遺憾だ。そんな幕引きになるかな。

 死人に口無しだ。全部クローヴスのせいにすればいい。


 まあいいさ。これで、魔法少女と怪物の戦いをビジネスチャンスだと見なす会社は無くなるだろう。トライデン社だけじゃない。世界中の企業が、危険と判断する。

 下手をすれば、自分の会社の看板を背負った怪物が人を殺して回る姿が世間に晒されるなんて。まともな企業なら避けたい事態。


 もし、まだ関わろうとする者がいれば、余程の馬鹿だ。そういう馬鹿が皆無とは言えない世界なのが、少し頭が痛いな。


「あの部隊の構成員の身元も判明したわ。みんなトライデン社がアメリカで雇った人間らしい。低所得者で、高い報酬に釣られて危険な仕事とわかってついてくる男たちを、会社で訓練させたらしい」


 結果として、異国で怪物に殺される結果に終わった、か。


「レールガンをこれからどうするかは未定。トライデン社が返還を要求するかもしれないけど、できればうちで持っておきたいわね。強いフィアイーターが出てきた時、使える」


 新しい武器か。


 使うとしたらハンターになるんだろうな。あの電源車も、廃棄予定は撤回されて電源として活躍することになる。

 使う本人であるつむぎは、それについて特に感想はないらしい。


「あの。お父さんたちはどうなりますか?」


 彼女が一番気にするべき所はそこだ。

 トライデンの社員が逮捕されるなら、それに協力した模布市の会社の関係者も巻き添えを食らうかも。


「心配しないで。銃器の開発に取り組んだ会社はさすがに無視できないけど、あなたのご両親は映像解析の仕事をしているだけ。一応話は聞くけど、罪に問われることはないわ」

「そうですか! ありがとうございます!」

「あ。そういえば今、ご両親は取り調べを受けてるはずだけど……終わったら帰宅するように警官から言われるはずよ」

「え……」

「いつもみたいに会社に戻りたがるかもしれないけど、会社の方も今日は帰りなさいって言うでしょうね」

「ラフィオ! 急いで帰ろ! 乗せて!」

「わ、わかった!」


 さすがに小学生の女の子が、この時間に外にいるのはまずい。

 魔法少女の事情なんかも両親は知らないだろうし。


「あー。じゃあ、わたしも帰らないとなー。えっと、誰か車椅子がある家まで送ってもらえると嬉しいです!」

「遥ちゃんはわたしが送りますね。電源車は局に戻っちゃいましたけど、タクシー手配するわ」

「わー! 澁谷さんありがとうございます!」

「先輩も、わたしが家まで送りましょうか? タクシーに乗るわけにはいかないですし。車は合流の途中で駐車したので、取りに戻るのに時間掛かりますけど」

「ううん。いい……今日はここに泊まるわ。悠馬と一緒にいたい」

「一緒に車まで行ってもいいんですけど」

「この格好で外に出させないで! なんて羞恥プレイさせようとするのよ!」

「あはは」


 先輩と砕けた関係で接することのできる麻美と、遥と澁谷が病室から出る。それから、つむぎは窓を開けて大きなラフィオに乗り込んだ。


「ラフィオは今日もモフモフだね!」

「うるさい。しっかり掴まってろよ」

「うん! えへへ、ラフィオ大好き!」

「はいはい」

「ずっと一緒だからね! 結婚するまで!」

「……」


 返事をすることなく、ラフィオは窓から飛び降りてマンションまで向かっていった。


 後には、俺と愛奈と樋口が取り残される。

 剛は再度寝ることにしたらしい。


「あー。麻美に着替えを持ってきてもらうようお願いすれば良かったかな。でも遅い時間だし、それも悪いか」

「姉ちゃん、本気でここに泊まるのか?」

「ええ。悠馬の付き添いってことで」


 そんな愛奈は、どこからかシーツを拝借してバニー姿を隠していた。


「あ、もう少しして病院の人が少なくなったら、自販機から飲み物買ってきてあげるわね。なんかほら、バニーさんっぽく」

「気遣わなくていいから。……似合ってると思う」

「へ?」

「姉ちゃんのバニー。正直、実の姉がそういう格好をすること自体はキツいと思うけど、でも姉ちゃんは美人だし。ありじゃないかな」

「そ、そう? えへへ。じゃあ、家でもこの格好しちゃっかなー」

「それはやめろ」

「えー。悠馬はお姉ちゃんが家でセクシーな格好してるの嫌なの?」

「嫌じゃないから、このまま家に帰るまでバニーでいろって言ったらどうする?」

「お願いしますそれだけは許してください! 着替えさせてください!」

「まったく……」

「変な姉を持つと大変ね。いいわ。わたしが着替えを用意してあげる。少し待ってなさい」

「樋口さん!?」


 ベッドの上に縋るような視線を向けていた愛奈は、樋口をキラキラした目で見上げた。


「樋口さんありがとうございます! 頼りになります!」

「はいはい。行ってくるわね。状況に進展があったら教えるわ」


 微笑みながら病室から出ていく。

 嬉しそうだな。政府の妨害はありつつも、この国の平和を守れた今回の件の結末は満足しているといった様子だ。

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