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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-44.魔法少女シャイニーハンターウェディングフォーム

 背中が妙に暖かい。強く柔らかな光が当たっているように。

 それを知覚した瞬間に、目が覚めた。


 目の前にライナーの顔。しかも近い。背中の暖かさの正体が、光る脚なのはわかった。

 膝枕してもらってる。


「いや、なんでここに」

「フィアイーター倒したよ! 本命のじゃなくて、小さい方だけど! 褒めて!」

「ライナーは偉いな」

「えへへー。悠馬も偉いよ! あの大男と殴り合いで勝ったんだよね!」

「勝った……と言えるのかな」

「言えます! ねえ悠馬、本当に大丈夫? 怪我とかしてない?」

「体中痛い」

「そっかー」

「念のため、病院で見てもらいなさい。この前の病院に連絡しておいたから。ライナーに連れて行ってもらって。先方にはもう連絡してあるから、わたしの名前を出せば検査してもらえる。わたしも車で剛を送るわ」

「また入院か」

「異常がなければ、明日の昼に退院よ」

「仕方ない。行くか」

「うん。わたしにちゃんとしがみついててねー」

「あ。その前にひとつ」

「ん?」


 ライナーに支えられながら立ったけど、どうやら寝てる間に痛みもかなり引いたらしい。自分で歩けた。


 会場内はかなり無残な状態になって、いくつものテーブルが倒れているけれど、上に乗った料理と共に無事なのもいくつかあった。

 できるなら食いたかったんだよな。ホテルのピラフ。


 幸いにしてクローヴスの大暴れの被害を受けなかったようで、保温プレートの上で誰にも手をつけられることなく山盛りで置かれていた。

 それに歩み寄ると、取り分ける用の大きめのスプーンを手に取り、すくって口にする。


「うまい」

「そっか。どんな感じ?」

「なんか、味に深みがある」

「隠し味とかあるのかな?」

「それはわからない」

「どれどれ? おー。上品な味わい。バター強めなのかな? エビとかキノコも、お米とは別に下味をつけてるんだね」

「わかるのか?」

「もちろん。わたしが作るのより、ずっとおいしいよ。プロの技というよりは、家庭料理より手間をかけてるから、この味が出せるんだと思う」

「遥のも十分すぎるくらいうまいけどな」

「えへへー。お褒めに預かり光栄です。今のうちに、もっと食べとこうよ。こんな機会滅多にないから」

「あなたたち?」


 樋口の、ちょっと怒りの混ざった声に俺たちは揃って振り向いた。


「元気なのはいいけど! とりあえず病院に行きなさい!」

「はーい。悠馬掴まって!」

「またお姫様抱っこか」

「うん! じゃあ、行きまーす」

「おい! こら! 窓から出るな!」


 地上四十階。割れてクローヴスが落ちた窓からライナーは平気な顔で飛び降りて、近くの少し背の低いビルの上に難なく着地。

 魔法少女ってすごいんだな。人間の叡智を集めた恐るべき機械よりも、たぶん強い。


 あと二体いるはずのフィアイーターも、他の魔法少女が倒してくれると確信できた。



――――



「コード入力しました! なんか、撃てそうな雰囲気です!」

「了解! 発電機の出力、最大まで上げるね! 澁谷さんも手伝って!」

「こちら現場です。上空では、トライデン社が開発した最強の盾を名乗るシステムを乗っ取った怪物に、最強の矛を持った魔法少女が対峙しており」

「こら! マスコミ! 手伝いなさい!」


 ハンターが電源車の上で声を上げて、麻美と澁谷がそれぞれの仕事をしている。


 最後の黒タイツを殺したラフィオも上空に目をやった。

 こちらをレールガンが狙っていることにフィアイーターも気づいたのだろう。トラックのフィアイーターが、ハンターのいる方向にドローンを集中させていた。


「フィアアアァァアァ!」


 羽が何枚か飛んでくる。レールガンを構えているハンターは己を守ることはできない。

 ラフィオよりもセイバーの方が先に来て、向かってくる羽を剣で弾き飛ばした。

 電源車の屋根や窓に何枚か刺さったけど、気にしないことにしよう。


「ハンター、撃てるか?」

「うん。翼の根本をちゃんと狙って……」


 エプロンを使って銃身と腕を沿わせるように保持しながら、ハンターは狙いを定める。


 フィアイーターは、あまり好ましい状況ではないと悟ったのだろう。時折横に滑るようにして射戦からなんとか逃れようとしながら、こちらから遠ざかっていた。

 構わず、ハンターは冷静に狙い続けた。


 それから、ふとラフィオに話しかけた。


「サムシングフォーのことだけどさ」

「それ、今言わないといけないことかな!?」


 突拍子もない話題だった。なんで結婚式の縁起物の話題が出てくるんだ。


「うん! 今言わないと駄目なの! サムシングフォーって何か、覚えてる?」

「新しいものと古いもの。借りたものと青いもの!」

「そう! 今まさに、わたしは全部身につけてます!」

「何が!?」


 最新鋭のレールガンに、骨董品みたいな電源車。借りてきたエプロンを使って狙いをつけているし、ハンターの魔法少女としての色は青だ。


「サムシングフォー!」

「いや。その理屈はおかしい」

「ラフィオと結婚式する時、この格好でやることになるのかな?」

「少しでも疑問に持たなかったか!? お前の花嫁姿が、電源車に繋いだレールガンを担いだものであることに!」

「えへへ。ラフィオ、わたしと結婚することには、おかしいって言わなかったね!」

「そこもおかしいけど! それどころじゃないんだよお前の話は!」

「まあラフィオとの結婚式は、もっと綺麗なドレスとか着たいから。これはまた別のサムシングフォーだね。ミラクルフォースでよくある、パワーアップした姿みたいなものかな。魔法少女シャイニーハンター、ウェディングフォームです!」

「怖いから結婚式から離れろ!」

「喰らえー!」

「おい!」


 話の途中で脈絡なく引き金を引くハンター。喋りながらで、ちゃんと狙えてるのかと声をかけたくなったけど、いらぬ心配だった。

 ハンターは狙った獲物を逃さない。特にモフモフは。

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