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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-41.あとはコードを聞き出すだけ

 そうかもしれないけど。つむぎの動きに、常に勝てるわけじゃないけど鍛えられてるから、黒タイツ程度の攻撃を見切るのは簡単って自覚は、なくはないけど。

 強さの理由があいつだなんて、絶対に認められない。


「一緒にいるって大事よね!」

「ああ! 望む望まないに関わらずな! セイバーも、あんまり光を消費するなよ!」


 彼女の剣は光が溜まってなくても普通に剣として使えるが、切れ味が異なってくるらしい。

 黒タイツを一太刀でばっさり切り捨てるのに夢中で、フィアイーターのコアを切る時に光度が足りませんとかは勘弁してほしい。


「わかってるわかってる! 運転手さんハイビームでお願いします!」

「うわ眩しい!」

「フィッ!?」


 セイバーのお願いをすぐに聞いてくれた電源車の運転手が、ヘッドライトを上向きにする。年代物のランプが久々の出番と強い光を発して、セイバーがそれに剣を向ければ輝きが見る見るうちに強くなっていく。

 突然の明るさに怯んだ黒タイツたちが、その剣で次々に斬り殺されていった。


「先輩! お待たせしました! うひゃー!?」


 途中で渋滞に巻き込まれたとかで、徒歩に切り替えたのだろう。麻美が走ってやってきた。それを狙ってくるフィアイーターだけど、飛んできた羽はハンターに撃ち落とされた。


「麻美さんいいところに来ました! レールガンと発電機が接続できません!」


 電源車の屋根に登っている澁谷の切羽詰まった声。


「コードの規格が特殊なのね! 刃物とビニールテープ!」

「はい!」

「その包丁で、お互いのコードの被覆を剥いて中を出すの! 陽極と陰極を判別して、繋げてテープで絶縁!」

「あの! 大学時代はミスコンにしか注力してなかった女子アナにもわかりやすく言ってください!」

「これ以上わかりやすく説明できないわよ! ほらわたしに貸して!」

「カラスさんがもっと低いところに来て、直接戦ってくれたら楽なんだけどなー。矢を撃つの、飽きてきました!」

「もうちょっと頑張ってねハンター! レールガン撃たせてあげるから! あと、最新兵器を撃つ前の心境を聞かせてもらってもいいでしょうか」

「あのカラスさんを撃ち落としてモフモフしたいです! でも、ラフィオの方がモフモフだと思います!」

「澁谷さん! インタビューもいいけど手伝って!」


 車の上も騒がしい。


 電気系統は専門じゃないのにと嘆きながらも、バカでかいコードを繋ぎ直してテープでぐるぐる巻きにする作業をゴム手袋をつけて終えた麻美。すぐさま車内に入って発電機を動かし始めた。


「電源付きました! なんか、コードを入力してくださいって出てます!」

「樋口さん! 悠馬くんたちの状況は!?」


 麻美の切迫した声が社内から聞こえる。

 あとは、悠馬がコードを奴から聞き出すだけだ。



――――



「ああくそ。体中が痛い」

「だね。正直、立ってるのもやっとなくらいだ」

「そうか。俺はまだいけるぞ。先輩は休んでいてくださいよ」

「君に敬語で話されるの、やっぱり違和感あるね」

「そうか」


 それって、俺は礼儀がなってない方が自然だって言いたいのかな。


 そういう自覚が全くないのかと聞かれたら、完全に否定できないのだけど。周りの大人が変な奴ばかりで、どうも敬意を払うって感覚が身につかない。ちゃんとすべき時はしてるぞ。

 なんて考え事をするだけの余裕は、俺にはまだあるようだった。


 クローヴスの丸太のような腕で何度か殴られ、体中が痛いのは確か。剛の方も限界に近く、なんとか立ってられてるというのは本当らしい。

 対するクローヴスの方も、普段はしない種類の運動を続けているわけで。ダメージはあまり受けてないものの息切れはしているらしい。

 けど、コードをこちらに渡す発想はなく、鋭い視線でこちらを睨んでいる。


「なあ。あんたの負けなんだよ、クローヴス。ここで俺たちをぶちのめしても、外の状況は変わらない。おとなしくコードを吐け」

「断る! レールガンは俺のものだ! 日本人どもに使わせてたまるか! あれは俺が持って帰る!」


 会社の財産を守ろうって姿勢、社会人の鑑だな。大事な装備を日本で全て失いましたなんて報告を、アメリカの本社にはできないのだろう。

 そんな意地を張らなくても、奴の会社での立場はとっくに失墜してるだろうに。

 クローヴス自身が、それを理解できてないのかも。


 あと、仕事を邪魔した俺たちや魔法少女への個人的な憎しみもあるのだろうな。


「このクソガキがぁ!」


 吠えながら、巨体が猛然と突進してくる。とてつもない迫力。真正面からぶつかる気はない。

 引きつけてから、接触する前に剛とそれぞれ逆方向に分散して躱す。しかし、奴は両手を広げてきた。

 クローヴスの手先が俺の胸ぐらを掴んだ。剛の方は少し手先がずれて、顔面を殴られるような形になり昏倒。

 俺の体は引きずられて、近くにあるテーブルに叩きつけられる。


「がはっ」


 肺から息が漏れる音。純白のクロスがかかったテーブルに、クローヴスは俺の体を片手で押し付けて体重をかけ、もう片方の手を振り上げ殴ろうとした。

 まずい。


 咄嗟に手元にあるものを掴んで、目の前に迫る拳に向けて降る。

 誰かが置いたフォークだった。その先端がクローヴスの拳に刺さって、奴の痛みに呻く声と共に狙いが外れた。


「こいつ! 離しやがれ!」


 俺を掴んでいる手にもフォークを刺そうとして、直前に奴が手放して空振り。逆に奴は俺の手を払った。

 強い平手打ちのようなもので、ジンとした痛みと共にフォークが手から吹っ飛んだ。こいつの腕力どれだけあるんだ。

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