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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-39.ももちゃんの家

「ちなみに、現場に急行するために信号無視するのはおっけーでしょうか!?」

『警察に見つからない範囲でやりなさい!』

「あー……」


 警察のご厄介になって、現場に着けないのは避けたい。特にテレビ局のロゴがデカデカと描かれている車で職質はされたくない。


「普通に行くしかないのかしら……」


 直後、ドンと大きな音が天井からした。電源車の上になにか落ちてきた?


「澁谷さん! お待たせしました! レールガン持ってきました! 入れてください!」


 次に、窓の外から声。電源車の屋根に掴まるような形で、セイバーがぶら下がってこっちに話しかけてくる。慌てて窓を開けると、彼女はひらりと中に舞い込んできた。

 今のは、ラフィオたちが屋根に着地した音なんだろう。


「ふー。やっぱり車移動は楽でいいわね! このまま麻美たちと合流する所まで送っていって」

「セイバーさん! 良いところに来ました! 信号無視したいので、他の車を止めたください! 警察に見つかったら魔法少女ですって説明してください!」

「ちょっ!? マスコミが信号無視とか、何言ってるのよ!?」

「早く現場に着きたいんです!」


 信号に掴まれば時間がかかる。そう説明すれば、セイバーも折れざるをえなくて。


「もー! ゆっくりできると思ってたのに! けど遅くなって近所に被害を出すわけには……」

「麻美さんの方も急ぎたいようです」

「そっちも!? あー! もう! 後輩のためよ! ハンター聞いた!? わたしは麻美の方行くから、ハンターはこの車が早く着けるように」

「わたし、先に合流地点行きますね!」

「え? ちょっ!」


 こっちの話しを聞いなかったわけではないだろうけど、ハンターがラフィオに乗ってどこかに行ってしまった。車の進路方向から完全にずれていた。



――――



「ねえラフィオ」

「どうした?」

「この銃、重い。それに持ちにくい」

「まあ、それなりに大きさがあるからな」


 ラフィオはこの銃をふたつまでなら搭載して走れる。魔法少女のハンターだって、持ち運ぶこと自体は可能だろう。

 けど、本来は台座に固定して使うものだ。扱いにくいのは間違いない。


 特にハンターは、これを使って敵を狙い、一撃で射抜かないといけない。ただ持ち運べればいいわけじゃないし、いつも使ってる弓とは勝手が違いすぎる。

 小さな体では、狙った姿勢を保持するのも大変だろうな。


「なんかね。ロープとかあれば、首から銃を下げて狙いやすくできるんだけど」

「ロープか。車の中にあるかな」


 たしか、ビニールテープはあるんだっけか。最悪それを使うしかないかな。


「でも、澁谷さんたちも忙しそうだし、邪魔しちゃ悪いよね」


 走る車の上で、夜風に当たりながら話す。いつフィアイーターが見えてくるかわからない状況で、ハンターはマイペースだった。


「絶対に、トラックの怪物は倒さないといけない。あれは、お母さんたちがわたしのために作ったんだから。人を傷つけさせたりしない」

「そうだな」

「わたしを守るために。わたしの力になるために」


 ちらりとハンターの方を見る。ラフィオにまたがっているハンターは、嬉しそうな顔をしていた。

 結果はどうあれ、彼女は両親から愛されている。それがわかったのが嬉しいんだ。


 だからこそ、御共つむぎは勝たないといけない。両親の作った最強の盾を、最強の矛で貫いて。


「あ! ラフィオ! あっちの方に走って!」

「え? あっち!?」

「いいから! カラスさん倒すためだから!」

「ああもう! 仕方ない!」

「わたし、先に合流地点行きますね!」


 最後にハンターが車内に声をかけるのを聞いてから、ラフィオは電源車から降りて指示された方向へ駆ける。車道を横断して走ってくる車を避けつつ向かう先を見れば、住宅地のようだった。

 つむぎの通う小学校とも、ここは近いらしい。確かに向こうに、我が家が見える。


「ええっとたしか……そう! あの家! ラフィオあそこ! あそこの窓の上の屋根に降りて!」

「あの家がなんなんだ!?」

「ももちゃん!」


 ハンターはラフィオへの返事と、家の部屋の中の住人の呼びかけを同時におこなった。


 ここは、綾瀬桃乃の自宅。そして部屋らしい。彼女は今、ベッドの上でスマホを見ていた。

 窓枠にぶら下がって中に呼びかけるハンターと、小さな妖精になってハンターの肩に乗ったラフィオ。レールガンは屋根に置いておいた。


 桃乃はすぐに気づいて、窓を開けて友達を家に入れた。


「ももちゃん! なにか貸して!」

「ええっと。何を?」

「紐とか! 細長い布とかでもいいよ! 細く丸めればロープの代わりになるやつ! ももちゃんの家が近いってわかったから、借りるならここしかないって思って!」

「??」


 一方的にまくしたてるハンターに、桃乃は困惑顔。けど、親友が魔法少女として頼ってくれたのはわかったらしい。


「よくわからないけど、必要なんだよね? なにがいいかな。ええっと……エプロンならあるけど」

「うん! それがいい!」


 つい先日、家庭科の授業で塗ったというエプロンが、壁にかけられていた。

 猫の柄のエプロンだ。

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