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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-38.両親の愛

 母親の方は、ハンターの内心には気づかなくて。


「いつも応援しています。怪物退治、よろしくお願いします」

「はい! 頑張ります!」

「……わたしたちにも、あなたと同じくらいの歳の子供がいるの。だから、どうしても他人と思えなくて。あなたたちの戦いの力になれればと思って、ドローンの制御システムの開発をしたの。なのに、それが怪物になったら駄目よね。ごめんなさい」

「いえ! おか……あなたのお子さんも、きっと喜んでると思います! 娘さん、じゃなかった。子供のためにやったんですよね?」

「ええ。その通りよ。あの子の住む街を守りたくて。仕事が忙しくて、帰ることもなかなかできないけど。それでも力になりたくて」

「立派、です。すごく、立派です」

「ありがとう。魔法少女を守るシステムだから、あんまり攻撃とかには使いたくなくて。ドローンに銃を搭載しようって意見もあったけど、それは断ったの」


 もしそうなっていたら、システムは魔法少女にも本格的に牙を剥いていただろう。止めたのは、親としての愛か。


「ごめんなさい。忙しいわよね。頑張ってね。そちらの魔法少女さんも。それからあなたも」


 母は、ラフィオの頬のあたりを撫でて。


「モフモフ、かわいい……」

「ひっ!?」


 ふとした言葉に、ラフィオは恐怖を感じて後退った。

 これ、遺伝だったんだ。悠馬が気づいてなかっただけで、彼女もモフリストだった。


「こ、こら。あまり、困らせない」


 初めて、夫の方が口を開いて妻の肩を持ってラフィオから離した。喋るのは奥さんの自由にやらせつつ、必要なら止める。ふたりの関係が見えてきた。

 つむぎも、将来伴侶を持てば、こんな風になるのかな。


「ふふっ。そうね。ごめんなさい。わたしたちのシステムの始末、どうかつけてください」


 最後に深々とお辞儀をして、御共夫婦はホテルの外へと出ていった。


「うん! 任せてねお母さん! お父さん! じゃあラフィオ、行くよ! ……この銃、重いね。それに大きい」

「ええ。軽い素材で作られてはいるそうだけど、それでも威力を出すために大型化して、六十キロとか重さがあるみたいね。ラフィオ、運べる?」

「人間ひとり分だと考えれば、いける。ただし、魔法少女のどっちには降りてもらわないと。人間ふたりと銃を載せて走るのは、さすがに辛い」

「だそうです、セイバー」

「なんでわたしが降りる前提なのよ!?」


 ラフィオの積載量は人間ふたりぶん。魔法少女ひとりと銃なら持ち運べる。

 そして、ハンターはラフィオから降りる気配がない。


「ああもう! せっかくラフィオに乗って移動できると思ったのに! 仕方ないです自分の足で走ります! 走りたくないけど!」


 セイバーが協力的で良かった。


 彼女たちの住処でもある住宅街に向かっていくラフィオたちを見送って、樋口は麻美たちにもそちらへ行くよう指示を出す。

 それから。


「あー。覆面男の正体、隠蔽しないと」


 バイトの格好で覆面を被ったなら、後でホテルの人員がバイトのリストを見て悠馬こそが覆面男だと見抜く危険がある。それは阻止しないと。


 警察から捜査の名目で圧力をかけつつ、ホテルの事務室からバイト名簿の削除。それと並行して、怪物の動向の状況把握。

 スマホにメッセージが入ってきた。魔法少女関係者ではなく、警察としての上司から。


 政府関係者がトライデン社を銃刀法違反を犯した危険因子と認めたから、関係者の所在を明らかにして、可能なら身柄を確保せよとのことだ。

 政治家たちがようやく見捨てたか。この判断がもう少し早かったら、あんな厄介なフィアイーターは出なかったのに!


 そして、クローヴスとコントラディクションシステムの関係者を逮捕しろって? 奴らの判断の遅さの尻拭いを命じられるなんて。


「やることが多いわね! 本当に!」


 お偉方のお使いなんてまっぴらだ。


 けど、世界を守る仕事自体にはやりがいがある。

 クローヴスと違って、こちらの言うことをちゃんと聞いてくれる子たちと守るのは。


 自然と口元が緩むのを感じながら、樋口はエレベーターへと向かった。



――――



「麻美さん! レールガン、そつちに向かってるそうです!」

『らしいわね! 澁谷さんの方の準備は順調!?』

「はい! とりあえず電源車は走らせてます!」


 長いこと走ってない車だったけど、なんとかエンジンはかかった。多少速度を出したところで壊れるものでもないだろう。


 今は澁谷と数人のカメラクルーで、中の発電機にガソリンを入れているところ。車内に独特の匂いが充満している。

 このガソリンは、テレビ局の駐車場に停めてあった車のいくつかから拝借してポリタンクに詰め替えたものだ。


 澁谷はアナウンサーとして、カメラに出られる服装はしていた。揺れる社内でポリタンクが揺れて、ガソリンの飛沫が服にかかる。

 すぐに揮発するからいいと考えよう。


『一応、レールガン撃つ時は車内の換気をしてね! あと服にガソリンがついたら離れること!』

「え、あ。はい! ちなみにそれ、やらなかったらどうなるんでしょうか!?」


 こっちの様子が見えてるかのように、麻美がアドバイスしてきた。


『レールガンが火花の発生にどれだけ気を使った構造かは知らないけど、揮発したガソリンに引火したら爆発するの!』

「言いつけ、守らさせていただきます!」

『ちなみに、あとどれくらいで着きそう?』

「わかりません! 今、信号に捕まりました!」

『あー。実はわたしもなの。ゆっくり行きましょう……ってわけにもいかないのに』


 信号機はいつものように動いているし、他の車も通行している。渋滞になってないだけありがたいけれど。


「樋口さんの力で交通規制とかできないでしょうか」

『そんな暇ないのよ! 頑張って!』


 向こうも忙しいのだろうなあ。

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