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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-37.ハンターと両親

「この前! 力ずくでもあんたのこと倒すべきだったと思うの!」

「フィアッ!?」


 ライナーの蹴りが、円筒形のボディに直撃。大きくへこむ。


 あんたというのはフィアイーターになる前のただのコア入れのことで、先日のカラスの個体とは別なわけで。フィアイーター自身にとっては言いがかりだろう。

 けど、ライナーはあの日の恨みを目の前の怪物に向ける。


 魔法少女などいなくても勝てるとクローヴスが得意げに言ったあの日。特殊部隊がラフィオに巻き添えを食らわせる危険を考えずに銃を撃ったあの日。

 ライナーだって奴らにいい思いはしていなかったし、コアを持っていった容器に関しても同様。


 だから蹴る。いつもより強く蹴る。


「死ねー!」


 そんな、物騒な言葉と共に蹴る。


 円筒容器のフィアイーターは、手足が生えて大人の男くらいのサイズになっている。周りを取り囲む黒タイツとも同じくらいの身長。

 しかも金属製で重い。そんな怪物が、ライナーに蹴飛ばされて宙を舞い、近くのお店のショーウインドウにぶち当たった。

 ガラスが飛び散り、中で売出し中のファッションに身を包んだマネキンが倒れる。


「あー。やっちゃった」


 ここは市街地。駅からも近い高級ホテルのすぐそば。お金持ちが集まる、ハイソな雰囲気のお店が立ち並ぶ一角。高校生であるライナーには、ちょっと手が出にくいブランドなんかもある。

 周りを巻き添えにすると、ちょっと損害額がえらいことになる。


「ま、気にすることじゃないよね。わたしが悪いわけじゃないし!」

「フィー!」

「おっと! あんたたちも死になさい!」


 掴みかかってきた黒タイツを避けて、ハイキックを食らわせる。首の骨が折れた音と共に黒タイツは消滅。


 なおも数体の黒タイツがこっちに接近しながら殴りかかってきた。フィアイーターもショーウインドウから抜け出ている。

 上等だ。ここは市街地。この時間でも明かりは多い。光が不足する心配はない。


「ええ! かかってきなさい! わたしが全員ぶっ殺してやる!」


 黒タイツの拳を受け止め、そいつの腹に膝蹴りを食らわせながら、ライナーは吠えた。



――――



「なるほどね。じゃあ、円筒形のフィアイーターはライナーに任せましょう。あなたたちは、カラスとトラックの方に向かって」


 樋口は耳元にスマホを当てて話しながら、地面にタブレットを置いて魔法少女たちに見せる。麻美や澁谷にも話は聞こえているはず。


「二体のフィアイーターは既に合流しているわ。ドローンに守られて下に羽を飛ばして攻撃しながら、市内を東の方に向かって飛んでいる」


 タブレットに地図を表示させて、フィアイーターの現在位置と進路予測をそこに書いて。


「敵は上空高くにいるから、羽で攻撃と言っても狙いは雑で、今のところ被害はあまり出てないわ。けど、奴が向かう先が問題ね。住宅街にまっしぐら」

「ほんとだ。というか、わたしたちの近所ね」

「ええ。家を壊されたくなかったら、頑張りなさい」

「はい! わたしに任せてください! おっきいモフモフ、撃ち落とします!」

「あなたが言うなら安心ね、なんとしても手の届くところに落すって執念を感じるわ」

「あの……」


 指示を出している途中で、不意に第三者から話しかけられた。

 女の声。ホテルから逃げるために車を使おうという客だろうか。


「あ。おか……なんでもないです! ラフィオモフモフ!」

「おい!」


 ハンターが自分の正体をバラすようなことを口走りかけて、ラフィオの体毛を握りしめることで誤魔化した。

 その人物が誰なのかは、樋口にもわかった。


 御共夫婦。つむぎの両親。そして。


「あの。このトラックは本当に……怪物にされたのでしょうか」


 コントラディクションシステムの根幹の開発者。特に、今は敵の手に渡って問題となっているドローンの制御装置の生みの親。


 自分たちが作ったシステムが怪物になって、それを動かす人員は全滅したとは、会場にいた悠馬の口から聞いているはず。気になって様子を見に来たのだろうな。

 そこに、魔法少女たちがいたから話しかけた。


 なぜかレールガンだけ取り外して話し合っているのだから、気になるのは当然だ。


 周りには凄惨な死体が数多く転がっている。その光景に、夫婦は明らかに具合を悪くしている様子。


「え、あ。ええっと。その……いつもお世話に? 違うな。なんというか……」


 セイバーが返事をしようとして困っていた。この夫婦とは顔見知りで、でも今は正体を隠した魔法少女なわけで。

 バレないように話そうとして、逆に不自然になっていた。


 ハンターも同じで、うっかりボロを出さないように口を閉じている。

 まったく。


「ええ。あの特殊部隊の使っていたトラックは、システムごと敵に乗っ取られたわ。……あなたは御共さんね」

「あ、はい」


 夫婦、というか話しているのは妻の方ばかりだけど、名前を言い当てられて驚いている様子だった。


「心配しないで。魔法少女たちが怪物を倒す。あなたたちの作ったシステムに悪事はさせない」

「はい。よろしくお願いします……えっと、あなたが、シャイニーハンターさん、よね?」

「は、はい!」


 不意に母親に話しかけられて、ハンターは上ずった声で返事をする。正体がバレたというわけではなさそうだけど。

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