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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-35.大人たち

「澁谷さん。そっちの電源車の中身、見れますか?」

『けほっ。ええ、今、入ったところです。埃っぽくて……』

「発動機はどこに?」

『これ、かしら……』

「古いですねー。接続プラグの規格が変わっていないことを祈りましょう。駄目なら、コードを剥いて銅線を直接繋げます。陽極と陰極が繋がってれば、なんとかなるでしょう」

『……そんな単純な方法でいけるの?』

「いけますよ。レールガンは単純な構造なんですから。レールガン自体に電力供給さえできれば、タッチパネルやトリガー周りのシステムも動くはずです。澁谷さん。テレビ局にゴム手袋ってありますか?」

『あるはずです! 探してきます!』

「あと、よく切れる刃物とビニールテープ。あるだけ持ってきてください!」

『了解です!』

「ちなみに、澁谷さんの学部は?」

『国際交流学部です! 勉強より、大学のミスコンで優勝する努力をしてました!』

『ミスコン取ったら女子アナの就職に有利になるものね』

『ええ! 残念ながら負けちゃいましたけど! ミスコン取った女はキー局のアナウンサーに内定しやがりました!』

「でも、その女は怪物退治の様子を近くで報道はできないですよ! 頑張ってください!」

『はい! 給湯室にゴム手袋ありました! 包丁も! テープはスタジオのどこかにあるはずです!』

「よろしい。樋口さん。トラックの電源からレールガンのコードを抜いてください。あと、レールガンの取り外しもしたいので、取り付け部をよく見せてください。近くに工具はありますか?」

『探してみるわ』

「お願いします。最悪、魔法少女たちに力ずくで外してもらいますけど」

『最後の手段ね。力加減を間違えて、レールガンごと壊すのはまずいわ』

「先輩に頼っちゃいましょう。剣で一撃、すぱっと切れますよ!」

『あの子が一番心配なのよ! 卵も割れないんだから!』

「あははー。先輩もやる時はやるので、心配いらないです。じゃあ、わたしもそっちに向かいますね。怪物を打つ予定地点を教えてください」

『やることが多いのよ! まだ工具も見つけてないのに! ちょっと待って! 後で伝えるから!』

「了解です!」


 今頃樋口は、片手でスマホを持ちながら片手で工具を探しつつ、タブレットをどこかに置いて情報収集しているのだろうな。

 公安は大変だ。


 とにかく、自分もやれることをしないと。麻美は車に乗り込んで、市街地目指して走らせた。



――――



「皆さん! ご静粛に! 混乱することはありません! 怪物は魔法少女が倒してくれます! 落ち着いてそれを待ちましょう!」


 騒然とするパーティー会場を見かねた大貫市長が、壇上に飛び乗ってマイクを握り、声を張り上げた。

 呼びかけに応じたというよりは、その怒声によって静寂が戻る。それでも、混乱に収拾がついたのは間違いない。


「皆さん。落ち着いて行動してください。パーティーは中断。すぐに避難できる場所まで、ホテルのスタッフに従って移動してください。心配することはありません、魔法少女はきっと来ます」


 それから市長は、クローヴスの方を見て。


「あなたの部隊の残存戦力は、魔法少女の戦いに協力してくれるのですかな?」

「も、もちろんだ! 盾は卑劣にも奪われたが、レールガンは残っている! 兵士の生き残りも」

「兵士はいない。全滅した」


 この期に及んで状況を理解しきれていないクローヴスの言葉に、俺は割って入った。ウェイターの格好のまま、覆面だけ被って。


 覆面男だ。ここに潜入していたのかと、ざわめきが広がる。けれど参加者たちも、ホテルのスタッフに誘導されて会場からどこか別の場所への避難を始めていた。

 どこに行くんだろうか。もっと下の階で、怪物がいなくなったと判明したらさっさと帰れる場所とか。


 みんな、俺をチラチラ見ながら退避していく。なんで覆面男がここにいるのか。なぜ戦いに行かないのかが気になってる様子だな。

 とりあえず、街の権力者たちから詰められる状態から脱せられたクローヴスも、逃げたそうな素振りを見せている。その前に俺が立ちはだかる。


「仲間が確認した。兵士は全滅。トラックの片方が怪物になって、片方はぺちゃんこだ。無事なのはレールガンの本体だけ。制御系は壊滅だ。電源も使えない」

「そ、そんなことは……あのシステムは完璧」

「じゃなかったんだよ。しかも敵に奪われた。カラスの怪物も復活した。お前が、俺たちにとどめを任せず自分だけの手柄にしようと考えた結果だ。ドローンに守られたカラスは誰にも撃ち落とせない。お前のせいで被害が拡大するんだ」

「黙れ! ガキが偉そうに!」

「お前こそ、何もできない雑魚なら黙って俺の話しを聞け」


 余裕がなくなったクローヴスは、荒々しい口調になっている。俺だって怒鳴り返したいが、お互いに冷静さを失うわけにはいかない。

 もっとも、俺は今からクローヴスを激怒させることを言わないといけないのだけど。


「レールガンはもらうぞ。魔法少女に使わせれば、ドローンを突破してカラスを落とせる。電力はなんとかするが、パスがわからない。教えろ」

「黙れ! あれは俺のものだ! 魔法少女風情に渡すとでも思ったか!?」

「教えろ。じゃないと大勢が死ぬ」

「断る!」


 近くのテーブルを蹴って、乗っていた料理ごとひっくり返しながら、クローヴスは激高した。

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