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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-33.パーティーは中止

 フィアイーターの出現警報が鳴って、パーティー会場は騒然となった。ただひとり、クローヴスだけは落ち着いている。


「皆様、心配ありません。市内のどこに怪物がでても、弊社の部隊が即座に駆けつけて対処いたしますので」


 壇上に上がった彼はそう呼びかけた。今頃、地下の駐車場からトラックが出てきている所だろうか。


 俺も駆けつけたいのだけど、どうやら主催者のクローヴスはこのままパーティーを続けながら、自分の部隊がフィアイーターを倒すのを待つつもりらしい。つまり俺が勝手に出ていけば職場放棄で怒られる。

 俺が怒られるだけならともかく、紹介してくれた剛の顔に泥を塗るようなことはしたくない。俺には縁のない高級ホテルも、岩渕家には大切な場所だろうし。


 スマホも私服と一緒にロッカーに入れていて、状況がわからない。剛も同じだろう。

 覆面だけは、折りたたんでポケットに入れてるけど。お守り代わりだ。


 クローヴスの力強い声で、会場内は一瞬だけ落ち着きを取り戻した。

 ほんの一瞬だけだった。


 すぐにざわつきが戻り、しかもあちこちから悲鳴が聞こえだす。パーティーの招待客らがスマホの画面を見て、狼狽えていた。


 壇上ではトライデン社の社員らしい男がクローヴスに駆け寄ってなにか耳打ちしていた。

 クローヴスの顔が険しくなった。何が起こっている?


「お前の所のトラックが怪物になったぞ!」


 誰かがクローヴスに向けて、そう叫んだ。


「大変だ、悠馬。本当にトラックの片方がフィアイーターになった」


 剛が俺を会場の隅まで引っ張って、スマホの画面を見せた。


「いや、なんでスマホ持ってる」

「そこ?」


 偉い人間ばかりが来る格式高いパーティーで、ウェイターがスマホを鳴らすとかありえないから、電源を切ってロッカーに入れるように。そう、現場のチーフに言われただろうが。

 お前が俺を紹介した相手だぞ、そのチーフって。


「大変なことになりそうだなと思ったから、取ってきたんだ。大丈夫、誰も僕たちのことなんか見てないよ」


 こいつは。行動が時々大胆でわからなくなるんだよな。


 けど、それどころではないというのは確かなようだ。


 ネット上に動画が大量にアップされているし、既にニュース速報にもなっている。


 フィアイーターが出現したのはこのホテルの近く。というか、ホテルの地下駐車場から出てきたという目撃情報が複数。

 その体は、白いトラックのフロントガラスに顔がついているというもの。あと、ドアがある部分から腕が生えている。

 ご丁寧に、ドローンを四機引き連れていて、このトラックが何なのかをしっかり見せつけていた。


 前に見たトラックとの違いは、荷台に描かれたトライデン社のマーク。

 アメリカのハイテク企業のロゴを見せつけながら、怪物が暴れていた。今まさに、近くの建物にトラックのフィアイーターが突っ込んだところだった。


 会場の一面を占める大きな窓に、客たちが向かっていって下を見下ろす。はるか下の道路で怪物が暴れている様が見られることだろう。


 何人かは、クローヴスに詰め寄っていた。どういうことかと、建設的な答えが出るとも思えない質問をしていた。


 会場内は騒然としている。普段は立場あって落ち着いた態度を見せて人の上に立つ者たちが、浮足立ってキョロキョロと周囲を見回したりスマホの画面を凝視したり。


 逃げたいけれど、それはこのホテルから出るということ。そこで怪物と鉢合わせするのは危険すぎる。

 かと言ってここに留まるのも危険な気がする。フィアイーターがホテルの土台を壊して倒壊させるのは突飛な考えかもしれないけど、黒タイツがここまで駆け上ってきたら逃げ場はない。フィアイーターがここの地下で生まれたなら、その可能性は大いにある。


 判断に迷った権力者たちの苛立ちがクローヴスに向かう。そんなことしても、この大男にも対処できる問題ではないのに。


 ひとりが、ドレスの裾が翻るのも気にせず走って会場の外に逃げた。クローヴスの妻だ。

 夫の危機にも関わらず、危険から身を置きたい一心で逃げ出したってわけか。所詮はビジネス夫婦だ。


 それを見た客たちが、人数に対してさほど大きくはないドアに殺到した。互いにぶつかり合って、料理の乗ったテーブルにぶつかってひっくり返したりして、場内は大混乱だ。

 なんて醜い光景だろう。


 冷静な人間も何人かいるのが幸いだけど。市長とか。


「クローヴスの企みが最悪な形で壊れそうなのは、いいことかもしれないけどね。将来はこの人たちと仕事をすると考えると、嫌になるよ」


 大企業の跡取り候補である剛もまた、うんざりした様子だ。あまり言っていいこととは思えないけど、同意ではある。

 その時、剛のスマホに着信。複数人が会話できる会議用アプリだ。

 会議の主催者は樋口だった。



――――



「状況を整理するわよ。フィアイーターが今、三体同時に出てきてる。一体は、この前のカラスが復活したものよ。他のフィアイーターと合流するように、市街地まで向かってるわ」


 ホテルの階段を駆け下りながら、樋口がスマホを耳に当てて関係者に話しかける。

 悠馬と剛はホテルの会場。なぜかスマホを持っていて良かった。


 それから魔法少女が三人、固まって家にいる。あとは澁谷と麻美だ。


『ちょ! なんでこんな時に出てくるのよフィアイーター!』

『どう考えても、キエラがパーティーを狙ったとしか思えないですよね』

「ええ。その通りよ」


 遥の指摘には同意する。なんか、一緒にいる愛奈がものすごく焦っている様子だけど、なぜだろう。

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