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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-32.武装集団の全滅

「フィアアァァアア!」


 フィアイーターがパーテーションを破壊しながら暴れまわる。隣のトラックも足蹴にしたら、荷台がひしゃげてバキバキに壊れながら横転した。

 それを思いっきり踏み潰しながら、フィアイーターは兵士の方に向く。


「なんだ!?」

「敵! 敵だ! 盾を取られた!」

「撃て! 撃て!」

「システム! システムは起動するのか!?」

「駄目だ動かない! 通信途絶!」


 兵士たちの狼狽える声。何人かが銃を手にして、フィアイーターに発砲。

 荷台の背中から四機のドローンが出てきて、銃弾からフィアイーター本体を守り始めた。ああ、このトラックはドローンの方だったのね。


 湾曲したドローンの盾に銃弾が跳ね返り、あちこちに当たる。運の悪い兵士のひとりのヘルメットを、跳弾が貫通した。


「あはは! かわいそう! でも、どうせみんな死ぬんだから同じよね!」


 人の死、というよりは死に臨んだ際の恐怖を見てキエラは上機嫌。顔を隠して正確に仕事をする兵士たちも、ちょっと想定外が起これば面白いように狼狽える。なんて愉快なんだろう。


 ドローンのおかげでフィアイーターにはほとんど傷がついていない。敵の銃の数が多いから全部を防げたわけじゃないけど、銃創程度ならフィアイーターはすぐに塞いでしまうから問題はない。

 ちっぽけな銃でフィアイーターは倒せない。頼みのレールガンは、搭載していたトラックが踏み潰されてぺちゃんこだから使えない。


 人間風情が思い上がるから、こうなるんだ。


「フィアアァァアア!!」


 フィアアァァアアが跳躍した。トラックにはありえない動きを兵士たちは呆然と見ていて、その結果何人かが踏み潰されて死んだ。


「フィー!」

「フィー!」


 兵士の隊列にフィアイーターが達した途端、荷台に隠れさせていたサブイーターも展開した。この前とは違って統率も取れていない兵士たちに殺到して、掴みかかり、殴り、地面に叩きつけて殺していく。

 兵士の反撃もなくはなかったけど、ほとんど効果はなかった。


 そんな乱戦の中に、妖精姿のキエラは降り立って駆ける。兵士やサブイーターの足元をすり抜けていきながら、もはや誰も守っていない容器の前に立ち、コアを入れる。


「フィアアアアァァァァ!」


 もう一体のフィアイーターの完成だった。


「さあ! 体の中の物を出して!」

「フィアア!」


 容器ではなく、フィアイーターとしてキエラの命令を聞いたそれは、厳重なロックがかかっているはずのそれをあっさり開けて、カラスのフィアイーターのコアを出してくれた。

 少女の姿になってコアを握りしめたキエラは、早速本来の所に戻しに行こうとして。


「貴様!」

「あ……」


 兵士のひとりがこっちに銃を向けているのを見た。


 この声、たぶん指揮官だ。他の兵士は全滅したのか、あちこちに死体が転がっていて血の海になっている。

 最後に残った彼も、立っているのがやっとという様子で、敵をひとりでも倒そうと引き金に力を入れるところだった。


「死――」


 その言葉は最後まででなかった。ヘルメットを掴んだ手が、中の頭ごと捻って彼の首を捻じ曲げて殺したから。


「もう。油断しちゃ駄目だよ、キエラ。わたしと違って、撃たれたら命に関わるんだから」

「ティアラ!」


 彼女が助けてくれた。お留守番しててもいいって言ったけど、わたしが心配だから来てくれた。そして敵を殺してわたしを救った。

 なんていい子なんだろう。


「コアは手に入れた?」

「ええ。トラックと、この容器のフィアイーター。そしてカラスを復活させれば三体のフィアイーターが同時に出てくることになるわね」

「キエラ、楽しそう」

「ええ。恐怖がたくさん集まるもの! それに、ムカつく奴らは死んだしね」


 兵士たちの死体を一瞥しながら、キエラは穴を通ってエデルード世界に戻る。そして別の穴から、カラスの体が保管されている場所へ移動した。

 駐車場では、周りの車を跳ね飛ばしながらトラックのフィアイーターが外へ向かっている。その周りを四機のドローンが飛び回っていて、さらに後ろに大量のサブイーターと容器のフィアイーターがついていっていた。


 カラスのフィアイーターは倉庫街の端に移動させられて、警察の規制線で囲まれた上で制服警官の見張りまで立てて、誰も近づけないようにされていた。

 キエラには無意味だけど。


 一週間と少し、ここで野ざらしだ。警察も処理に困って、ここに置いておくしか無かったのだろう。捨てるにしても、目の届かない所に置くと何があるかわからない。監視し続けるしかないか。


「ごめんね。長い間、このままで辛かったわよね。生き返っていいのよ」


 穴によって規制線の内側に入ったキエラがコアを当てると、フィアイーターは即座に復活した。

 止まっていた時が戻るように、傷が即座に塞がっていき、咆哮をあげる。


 見張りは、勝てないと悟って退避しながら誰かに連絡するしかなかった。


「街の方まで飛んでいって。それで、仲間と合流して。あなたに盾を与えるわ。そうなったら、誰もあなたを傷つけられない」


 魔法少女たちに、空を飛ぶ鳥を落とす手段は限られている。あのムカつく青い魔法少女くらいだけど、あの矢もドローンを貫けない。

 銃をぶっ放す人間はみんな死んだ。だから後は、フィアイーターが上空から恐怖を振りまくだけだ。


「フィアアァァアァ!!」


 傷を完全に癒やしたフィアイーターが翼を広げて飛んでいくのを、キエラは満足げに見送った。

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