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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-29.バニーさんの格好

「ラフィオ、今日も頑張ったねー」

「そうだな」

「あとどれくらいで魔力が溜まるの?」

「まだ掛かるかな。夏の終わり頃かな」


 樋口が用意してくれた家のリビングに描かれた魔法陣に、近くの河原から拾ってきた石を置いて中央の石に魔力を溜める。

 ラフィオとつむぎが定期的に行っている、新しい魔法少女を作るための作業だ。


 石を持って行ったり来たりするのだから、子供の手には少し余る。休みの日などは、手が空いてる者に手伝ってもらうことにしてるけど、愛奈は普段は滅多に来ない。

 休日は家でゴロゴロするのを望む人だから。


 けど、今日は違った。


「遥ちゃんがご飯作ってくれるのはいいんだけど、なんでこの家なのよ」


 愛奈がリビングの机の上で不満そうに言っている。

 誰に会うでもないけれど、最低限外出するのに恥ずかしくない身だしなみを整えている手間をかけさせられたことに、文句を言ってるわけだ。

 そのまま、河原の石拾いにも参加させられたし。


 魔法少女としての適性が誰より高く、いざ敵が出れば果敢に戦う姿はどこへやら。

 今はテーブルに突っ伏して、口にした所で何か変わるわけでもない不平を漏らしている。


「家で寝て過ごしたかったのに」

「いいじゃないですか。悠馬に加えて、剛先輩や樋口さんも頑張ってるんですから。苦労をねぎらってあげないと」


 だから、みんなで集まるためにこの家が選ばれた。


「遥ちゃん、そういう気遣いできるのは偉いと思うのよねー。将来の旦那さんが羨ましいわ」

「悠馬ですか?」

「それは許さないけど」

「そうですよね。さすがにまだ、高校生ですし結婚とか早いですよね。でも、今のまま付き合い続けたら」

「どこかで止めないと……」

「止めさせませんよー」


 そんな、いつものやりとりが繰り返されている。


「結婚かー。ねえラフィオ」

「しないからな」

「もー! わたしまだ何も言ってないよ?」

「言わなくてもわかる!」

「あ! 待って!」


 こっちも、いつも同じようなこと言ってるからな。つむぎの手をすり抜けて、少年の姿になってモフモフ悪魔を迎え討とうとする。

 その過程で背が高くなり視界が広がり、目線は下に向いて。


「……遥。これはなんだ?」


 壁際に立てかけられていた、遥が持ってきたトートバッグの中身が見えてしまった。


 別に、人の荷物をの中を勝手に覗いてからかうなんて趣味はラフィオにはない。何か見えても特に反応しないつもりでいた。

 ただ、あまりにも変なものが入ってたから、思わず口に出てしまった。


「あ! ちょっ!」


 遥が慌ててトートバッグを抱きかかえて隠した。


「えー? なになに? 遥ちゃんってば、人に見せられないような物、持ってきてるのかなー?」

「お姉さんウザいです」

「ウザっ!?」


 年長者が、それに相応しくない振る舞いをしてるのは事実だ。バッグの中を覗きこもうとして、遥に睨まれていた。


 しかし、なんとなくみんなの視線が自分に向かってるのを悟った遥は、渋々といった様子で中身を取り出した。

 雑貨量販店で売られているような、安いパーティー用のコスプレグッズ。バニーガールの格好をした女の写真が印刷された紙と、衣装がビニールに梱包されている。


「バニーさんの衣装。この前悠馬と話していたやつか」

「遥ちゃん? 悠馬とその格好で何しようとしてたのかしら?」

「変な誤解しないでくださいお姉さん! 悠馬がパーティーでバイトするって聞いて、なんか海外のセレブが開くパーティーとか想像しちゃって」

「海外のセレブも、バニーさんがいるようなパーティーそんなに開かないからね」


 うん、愛奈も悠馬と同じような考えだな。


「それは……確かにそうですけど。冷静に考えたらそうですけど。でもなんか、急に気になっちゃいまして、バニーさん」

「気になったというと?」

「着たら、悠馬喜ぶかなーって」

「いやいや。ないない」

「ですよねー。冷静に考えたらそうなんですけど。考える前に買っちゃって。買った以上は見せてあげてもいいかなって思って持ってきちゃいました」


 ノリで用意してしまったものか。遥も基本、勢いで生きてる面も多いからな。そのままバニー姿で悠馬の前に出ないだけの思慮は、まだ残っている。


「まあでも、わたしが着ても似合わないですよね。片足がないバニーさんなんて」

「そんなことないわよ。個性的でいいじゃない。好きな人はいるかもよ?」

「確かに! 悠馬も似合わないとは言わないですよね!」

「でしょうね。喜ぶかは別として」

「ちなみに、わたしとお姉さんだったら、どっちがバニーさん似合うと思います? これ、サイズ的にお姉さんでも着れますけど」

「お姉さんじゃないけどね。それはもちろん、わたしよ。美人だし」

「かわいさはわたしも負けてないですから!」


 お互い、そこの自身はあるんだよなあ。自分を堂々と美人と言える精神は立派だ。


「それに、わたしには足がないですけど、お姉さんには胸がないですし」

「むっ!? 胸は関係ないでしょ! 貧乳でもバニーさんは似合うのよ! わたしは貧乳じゃないけど!」

「貧乳というより、壁……」

「遥ちゃん!?」


 このふたりは、今日も楽しそうだ。喧嘩しているように見えるけど、仲いいんだよな。

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