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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-28.パーティー会場

 遥はなおも言葉を続けて。


「わたしもバニーさん着たいなー」

「なんのために」

「悠馬が喜ぶかもって思って。片足バニーさん」


 かなり特殊な趣味だな。


「喜ばないからな。着たいなら好きにしていいけど」

「でも、パーティーでみんなにバニーさんな格好見せるのは恥ずかしいかな」

「だから、パーティー会場にはバニーはいないって」

「ねえ。来週の土曜日は、悠馬は夜は家にいないってことになるよね?」

「そうなるな」

「愛奈さんのためだけに晩御飯作るのもなー。暇になっちゃったなー。悠馬が遅い時間に帰ってきて、そのままわたしのご飯食べてくれるって言うなら、作ってあげてもいいけどなー」

「わかったよ。別にそのままホテルに泊まるとかはないから。ちゃんと帰って飯は食うよ」

「バニーさんに着替えて待ってるね」

「それは着替えるな」


 どこまで本気かはわからないけど、本気でやりかねない危うさはある。




 その後数日間、剛からウェイターとしての振る舞いについて講義を受けたり、いつものようにトレーニングをしたりして、パーティーまでの日々を過ごした。


 当日が近づくにつれて、世間の感心は強まるばかり。クローヴスは連日のようにメディアを騒がせているし、時にはテレビに出演までした。模布市の番組ではなく、全国ネットのワイドショーだ。


 模布市に滞在しつつ、東京のスタジオまで遠征している。ビジネスマンなら、これくらいの移動は苦じゃないのか。会社の売り込みに海外まで来てるような奴だからな。


 どうも、当事者である模布市民ではなく、日本人全体へのアピールをしているようで好きになれない。


 出演したクローヴスは、特殊部隊有効性を力強く解いている。回収したコアは部隊が厳重に保管してあり、奪い返される危険は無いとのことだ。

 いつ怪物が出てきても、部隊は迅速に駆けつけて排除する。魔法よりも早い可能性もある。世界は人間の手で守る時代を取り戻す時が来た。

 いつものそんな演説を繰り返していた。


 ところで、フィアイーターはあの日から一週間あまり、出てこなかった。こういうことは珍しい。

 市民が脅かされないのだから、いいことではある。けど、クローヴスに対抗意識を持ってる魔法少女たちが、今度はきっちり怪物退治をしたいという欲求が満たされないままになっている。

 クローヴスにとっても、部隊の有効性をアピールできる機会が来ないことに苛立ってることだろう。


 なんとなく、キエラが何か企んでいるようにも思えた。



 そしてパーティー当日が来る。



「わたしも、このホテルにチェックインしてるわ。なにかあったら連絡してちょうだい」


 樋口が車で俺と剛をホテルまで送ってくれた。


 公安でもパーティーの内容までは口出しできないらしい。潜入も無理だったのだろう。

 ただし動向は探りたいと言っていたから、俺の計画に乗ってきた。


「はい、盗聴器。ポケットに入れなさい」

「好きだな、盗聴器」

「ええ。公安だからね」


 普段からそんなことしてるのか、公安。


 小さなボタン型のマイクが周りの音を拾う。先日、彼方と更紗と保護者の話し合いで彼方に取り付けたのと同じもの。

 これを身に着けた俺がクローヴスの近くにいれば、奴の会話が樋口にも伝わるというわけだ。


 樋口の車はホテルの地下駐車場に停まった。そのまま従業員用の通用口に剛とふたりで向かっていく。


 途中、駐車場の端に不自然にパーテーションで区切られた場所があった。

 見慣れてきたヘルメット姿の兵士が、さすがに銃は持ってないものの警備をしていた。


 あの部隊の待機場所が、ここか。堂々と市内に拠点を構えているというわけだ。

 樋口の言うとおり、上からの許可さえ出ればすぐにでも逮捕しに行ける所にある。

 パーティーでは、この部隊を見せるくだりもあるらしいな。


 向こうは俺たちが魔法少女に関わる人間だとは知らないわけで。俺たちはヘルメット男の前を素通りしてホテル内に入った。



 その後ホテルのバックヤードへ向かい、ウェイターらしい服に着替えたりパーティー本番の打ち合わせなんかを重ねた後、会場の準備をする。

 地上四十階の高さにある、普段はホテルのレストランとして使われている場所だ。


 市街地を一望できる立地。夜は美しい夜景が見られる。そのために、会場の一面が全面ガラス張りになっていた。


 見る人によっては、さぞロマンチックな光景なんだろう。

 夜景というのは、建物の中であくせく働いている人間を照らす光で構成されている。

 それを、社会の上流に生きる者たちがワイングラスを片手に眺めて美しいと感動するわけだ。

 ひどい話だ。 


 そんな会場に、立食形式のパーティーのための料理を並べていく。


 準備中にクローヴスが来て、晴れ舞台をこうセッティングしろとかの邪魔なアドバイスをして来るかと思ったが、期待はずれだった。

 今頃、スピーチの練習中だろうか。


 大きな窓から外を見れば、日が沈む頃。美しい夜景が見えてくる時間帯。都会は夜でも明るい。


 長い夜にならなければいいのだけれど。

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