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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-22.ハンターとドローン

 別のドローンもこっちを警戒するように動いているし。ハンターがふと弓を動かせば、ドローンも釣られたように動く。

 陣地外から矢を放っても、軌道を逸らされそうだ。


 魔法少女がいないと事態は終わらないのに、奴らはこっちに非協力的。

 覆面をした俺が言えることじゃないけど、表情の見えない奴らのヘルメットが気持ち悪い。


 とりあえず、奴らがフィアイーターを倒すのを見させてもらうことにするけれど。


「フィアアァァアアァア!」


 巨大なカラスのフィアイーターは、部隊の大型トラックにも負けない大きさをしていた。己の質量を武器に、部隊に損害を与えようとでも言うのだろうか。それか至近距離から羽根を飛ばす攻撃をするつもりか。トラックの荷台に真っ直ぐ突っ込んでくる。


 特殊部隊たちも一切動じることなく、トラックの上のレールガンを目標に向けている。どういう操作方法をしてるのかは知らないけど、電力は足りているからいつでも撃てるらしい。


 兵士のひとりが、銃身側面についているタッチパネルを叩いて何か入力していた。先日は下からだったから見えなかったけど、操作が必要なのかな。

 彼は下の指揮官に頷いて見せた。


「放て」


 指揮官が命令したのと、ラフィオに抑えつけられ続けていたドローンが業を煮やしたのは、偶然ながら同時だった。


 別のドローンがラフィオの側面から当たりにくる。突然の攻撃にラフィオのバランスが崩れて、足元のドローンも出力を増して脱出を図ってきた。さらにレールガンから弾丸が猛烈な勢いで発射されたことによる風圧。

 ラフィオは屋根の上で転んで俺たちを地面に放り出しそうになる。

 それを防ぐため、ラフィオは無理に体を捻った。結果、俺たちは地面に落ちるのではなく屋根の上で転んだ程度で済んだ。


 代わりにラフィオの体が地面に落ちた。兵士たちの陣地の中だった。


「ぶえっ」

「ラフィオ!? もう! 邪魔!」


 落ちたラフィオに駆け寄ろうとしたライナーの前に立ちはだかるドローン。

 一方、フィアイーターの体を弾丸が真っ直ぐに貫くのが見えた。

 

「フィアァァァ!?」


 しかし当然、殺すには至らない。やはり兵士たちの陣地の中に落ちたそれは、さすがに巨体のためにドローンで追い出すことには成功しなかった。

 倉庫街の通りに力なく横たわりながらも、暴れ続けていた。その姿は、俺からは立っている倉庫の陰に隠れて半分ほどしか見えない。


 ラフィオが落ちたのも、俺が立っているこの倉庫の陰だ。


「撃て! 動けなくしろ!」


 指揮官の指示と同時に、兵士たちの半数ほどが横に並んで、カラスに向けてライフルを発砲。でかい敵を倒すために連射してる。

 一応、倉庫に当ててはいけないと撃つ方向は考えているらしい。流れ弾が当たらないよう、射戦が道に沿う方向に撃ってるから、倉庫の上の俺が巻き添えを喰らうことはないはず。


 けど、フィアイーターの近くに倒れているはずのラフィオのことは考えているのか?


「ちょっと! やめてよ! やめてってば! ラフィオもいるでしょ!? 撃たないで! ラフィオに当たったら許さないから!」


 ハンターが、見たことないほど狼狽している。


 そうだ。助けにいかないと。けど、俺は動けなかった。


 いくつものライフルから放たれる銃声。銃が撃たれるところを生で見るのは初めて。

 自分が狙われているわけじゃないのは理解しつつ、怖かった。今まで怪物と平気な顔して戦ってて、今更なんだと自分でも思う。けど動けなかった。


 ライナーも、銃弾が飛んでいるところに飛び込むのを躊躇っている様子。



 だが、ひとりだけ例外がいた。


「もう! 許さないから!」


 かわいい言い方だけど、かなり怒っている。恐怖心が薄い小さな魔法少女が、ドローンをドーナツ状に囲っているプレートの上端を掴んで倉庫の屋根に叩きつけながら、その反動も活かして屋根から跳躍。

 空中で他のドローンが妨害しに来るけれど、ハンターの方が上手だった。ドローンを掴んだまま、体をひねってこれを回避。


 元々金属プレートを取り付けられて飛ぶドローンに、加えて人間を載せて浮遊するだけの馬力はないらしい。そのまま地面に軟着陸したハンターは、近くのトラックの荷台にドローンを叩きつける。

 荷台の外壁が大きく凹んだ。ハンターに掴まれている物以外の三機がなんとか排除を試みているけど、小柄で素早いハンターは体当たりしてくるドローンをあっさりと避けた。


 銃撃に参加していない兵士や指揮官たちは戸惑っている。彼らもハンターの排除に参加しようかと考えているのかもしれないけど、ハンターの周りを飛びまわるドローンによって近づけない。


 ハンターは掴んだドローンで、今も並んでフィアイーターを撃っている部隊の背中を思いっきり叩いた。

 ドローン自身も逃れようとプロペラを動かし続けているのに、その力を逆に利用しながら振り回しての攻撃だ。


 中央部の二名が前につんのめるように倒れて、並びの隙間が出来たためにハンターはそこから兵士の前に躍り出た。もちろん、ドローンは掴んだまま。

 ハンターは小柄な体をドローンで隠して、銃弾から守る盾にしてフィアイーターや近くのラフィオに接近するつもりか。


 ドローンに銃弾が数発当たった。湾曲したプレートによって跳ね返されて、跳弾があちこちに向かっていく。一発はレールガンの方のトラックの窓を貫いた。数発は倉庫に当たった。


「うわっ! 危ない!」


 叫びながらライナーが俺を伏せさせた。下を見ると、兵士たちも慌てて伏せている。


「中止! 発砲やめ!」


 指揮官の命令を聞くまでもなく、銃撃は止まっていた。

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