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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-19.天才夫婦について

 予想より近いところに来て、遥は気まずいどころか動揺している。


『わたしも、そうはしたくない。けど取り調べは受けることになるでしょうね』

「と、取り調べですか?」

『クローヴス自身の身柄の確保は政治家たちに止められてる。となれば、システムの開発に関わった人間も即時逮捕は難しい。警察はやりたがってるでしょうけどね』


 つむぎの両親は、政治家連中の野心とか支持率を気にする意向に守られたってわけか。面倒だ。


『けど、事情聴取はすべき。そこから、クローヴスの余罪なんかも見えてくるでしょうから。そうじゃなくても、あの男に関する情報はなんでも欲しい』


 この国に銃器を持ち込んで堂々と振る舞ってる人間だ。放っておけば国家の危機に繋がるかもしれない。

 それを未然に防ぐことは、確かに公安の仕事だな。


「もし見えてきて、システム開発に関わった人間も罪に問えるとなったら?」

『逮捕せざるをえない。法律だから』

「わかった。樋口の方で、なんとか穏便に収まるよう働きかけてくれ」

『言われなくてもやってるわ』


 法律違反とはまた別の問題として、魔法少女の家庭に問題が起これば怪物を倒すのに支障が出る。樋口が危惧して俺たちに相談したのは、そういうことだ。


『そっちでも、調べてほしいことがあるの』

「つむぎの両親について?」

『ええ。つむぎ本人が、両親からなにか聞いてないか調べてほしいの。もしかしたら、両親が逮捕されそうになってて精神的に不安定になってるかもしれないし』


 そうだな。樋口は最初からつむぎの様子を気にしていた。


 クローヴスや両親の罪の可能性について、つむぎに訊けという話ではない。もしそれに関する情報が得られた場合でも樋口は喜ぶだろうけど、あくまでついでだ。


「不安に思ってたら、大丈夫だと言ってやればいいんだな」

『ええ。彼女の両親を逮捕なんかさせないわ。そう努力する』


 自分に言い聞かせるような言葉と共に、樋口は電話を切った。


「樋口さん、いい人だねー」


 車椅子の背もたれに体を預けながら、遥は笑顔で素直な感想を口にする。

 本人が聞いたら照れくさそうに否定するだろうけど、俺も同意見だ。


「よし! じゃあ帰ったら、つむぎちゃんと話しますか! 何も知らなかったそれでよし! お父さんたちと連絡が取れてて、不安になってたら安心させてあげるって方針で!」


 それがいいな。


「とりあえず、今夜のご飯はつむぎちゃんの好物だねー。何が好きなんだっけ」

「卵料理だ」

「そっかそっか。じゃあ、ちょっと豪華なオムライス作っちゃいますかー」

「ねえ。つむぎちゃんのご両親って、どんな人なの?」


 剛の質問に、全員の目が俺に向く。


「なんだよ」

「これは、悠馬が一番詳しいだろ? 僕は今聞いた彼らの職業以外は、ほとんど何も知らない。つむぎが風邪をひいたら、温泉卵入りお粥を食べさせたことくらいだ」


 それは俺も初耳だけど。


「だよねー。わたしも、お隣の悠馬の家には何度も行ってるのに、ご両親の顔見たことないし」


 そうか。俺以外は顔も合わせたことがないんだな。


「母親は普通の人だよ。社交的で、人と接するのに物怖じしない。ある意味つむぎと似てるかな」

「あれが大きくなった姿なのか!?」

「いや。モフモフに執着している所は見たことがない」

「よかった……」


 ラフィオの心配事はそこだけらしい。


「父親は静かな人だ。声を聞いたこともあんまりない。顔を合わせた時は、黙って会釈するだけ」

「へえー。話すのが好きじゃないタイプとか?」

「苦手らしい。頭の回転が早くて、話すのが追いつかないってさ。母親が言ってた。よほど頭がいいそうだ」

「そんな人間から、あのモフモフ悪魔が生まれたのかい? 考えるより先にモフモフに突っ込んでくるような人間が?」

「んー。でもつむぎちゃんも頭いいし。それにほら。考える前に動いても、動いてる間に考えてるから無事なんじゃないかな?」


 例えばマンションの四階から飛び降りたり、電信柱に突然登ったり。

 その状況に合わせて動いて、結果怪我一つしてないのは頭の回転のなせる技か。


 フィアイーターとの戦いでも、アクロバティックな動きが役に立ったこともある。


「基本的には僕の上からどこうとしないけどな」


 実害を受けているラフィオは、相変わらず不機嫌だった。



 とにかく、両親はそんな人。彼らは元々帰宅しないことが多かったけど、思い返せばフィアイーターが現れるようになってからは特に顔を見ていない。

 怪物出現と同時にトライデン社が彼ら含む模布市の会社に仕事を持ちかけたのだと考えれば、理由がわかる。


 三ヶ月ちょっとで、あの大きなプロジェクトを形にするのだから、現場で働く人間の労働量も増えることだろう。元から研究室に籠もりきりのつむぎの両親は、特に仕事に精を出した。

 あのシステムの根幹を担う部分だからな。


「大事なのは、つむぎちゃんに心配がバレないように、それとなく尋ねることだよね! よし、頑張ろう!」


 遥が提示した方針自体には異論はないけど。


「こ、こんばんはつむぎちゃん! 今日も学校楽しかった? と、ところでさ。なんかお母さん、とか、お父さんから連絡? とかあった?」

「? こんばんは、遥さん。お母さんたちがどうかしました?」

「ううん全然大したことじゃないんだけどね。なんか気になったというか? えっと、心配するようなことじゃない、んだけどね?」

「よし、遥お前は黙ってろ。オムライス作れ」

「はい……」


 遥自身にこの仕事は無理だった。わざとらしすぎる。

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