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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-17.幸せな家族

「お姉さんなに言ってるんですか!? 弟と結婚とかありえないでしょ!? というか、悠馬の結婚相手勝手に決めないでください!」

「えー? でも、悠馬は永遠にわたしと一緒に住みたいよねー? わたしを養いたいよねー?」

「養わないからな」

「ほらー! 悠馬だってわたしと一生を添い遂げたいって言ってる!」

「言ってませんから! お姉さんにはなにが聞こえてるんですか?!」

「わたしはお姉さんじゃありませーん。悠馬、すき!」

「あっ!」


 遥に負けない素早さで俺の後ろに回り込んで抱きつく愛奈。そして。


「悠馬! 言って! お姉さんよりわたしの方が好きって」

「ふたりとも俺から離れろ」

「ほらー! 聞きましたかお姉さん! 悠馬もお姉さんには離れて欲しいって言ってます!」

「ふたりともどんな耳してるんだ」


 愛奈と遥にそれぞれ別方向から抱きつかれた俺は、自分で思ってるより疲れた声での抗議をしてしまった。

 ふたりとも離れる気配はないし。柔らかい感覚が脳を狂わせそうになる。


「ね? うざったく思いながらも、力ずくで振り払ったりしないでしょ? ふたりが、こうしてるのが心地良いって思える行動を自然にしてるの」


 樋口がこっちを見ながら、ニヤニヤと笑みを浮かべて言ってる。


「面倒見が良くて、頼りたくなる性格してるのよ。悠馬は。少なくともこのふたりにとってはね」

「うるさい。助けろ」

「わたしも抱きついちゃおうかしら」

「おいこら」

「なに言い出すんですか樋口さん! あなたまでわたしの悠馬を奪おうとすの!?」

「そうですよ! お姉さんだけでも面倒なのに、公安が絡んでこないでください!」

「ラフィオー。わたしもラフィオを抱っこしていい!?」

「駄目だ」

「わーい! ラフィオ好き!」

「人の話を聞け!」


 ああ。面倒だ。なんか、会話が通じてないカップルがもう一組いる。


 でもまあ、悪い気はしてないのだけど。



 樋口のタブレットでは、クローヴス一家が仲睦まじい様子を見せつけていた。聴衆の目の前で一通りの演説を終え、ケンゴ氏は妻とキスを交わしていた。

 仕事と金の都合で三ヶ月前に結婚した、ほぼ偽装とか契約結婚の関係なのに、その様子は全く見せない。


 傍らには少女。娘みたいな顔して立っているし、髪色は両親と同じ金髪だけど、彼女は見た感じ十歳くらいに見える。当然、クローヴス夫妻の実子ではない。

 そういえば昨日、樋口はクローヴスが養子を引き取ってたと言ってたな。どう考えても、家族の演出。

 両親の髪色に合わせたブロンドで、やはり見栄えを重視してした可愛らしい顔つき。清楚そうな白いワンピース姿で、はにかんだような笑みを人々に向けていた。


 心からの笑顔なのかは知らない。


「なあ樋口。あの子供、養子ってことだけど」

「やっぱり今日も飲もうかしら」

「おい」

「地元の公安が色々調べてるところよ。わたしはその報告を受け取るだけ」

「それでいいのか警視庁の公安」

「ふふっ。この幸せな家庭で過ごすの、わたしは好きなのよ」

「だとしても仕事はしろ」

「やってるやってる。昼は頑張ってる」


 どこまで信頼していいものだろうか。



――――



 模布市の中心部にある高級ホテルのスイートルーム。そこがケンゴ・クローヴスの日本滞在の拠点だった。

 そこから眺める夜景は、彼にとってはあまり魅力的なものではないが。トライデン本社ビルの彼のオフィスからの景色の方が、ずっと都会的できらびやかだ。


 さらなる出世が見込めるからこそ、こんな異国の田舎町まで足を運んでやったのだ。その成果は出さなければいけない。


 クローヴスはこの国に、微塵も愛着など持っていない。母の故郷だからなんだと言うのだ。祖国では、半分流れているアジアの血のおかげで、随分と差別を受けてきた。

 純粋なアメリカ人でありたかった。ケンゴは日本が嫌いだった。日本人に愛想を振りまく仕事にも反吐が出る。


 とはいえ、この国で快適な滞在をしているのも事実。

 既に法を犯している身ながら、政治家たちへの根回しは完璧。故に警察が踏み込んでくる気配はない。

 怪物を相手に、人間自身がその科学力を駆使して対抗するという部隊のコンセプトも大衆に受けている。


 魔法少女なる女どもも人気を集めているようだが、得体の知れない力に守られることへの忌避感を抱く者もいるらしい。科学力なら、その心配はない。

 単純に魔法少女を支援する組織への好感もあるらしく、世論は支持の方向に傾いていた。


 完璧だ。クローヴスはほくそ笑む。


 この国が、銃の存在を許容するなんて。それも、市民と政治家両方がだ。怪物の驚異がこれほどのものだったとは。


 トライデン社が模布市に来て怪物と対峙した理由は、開発が進められていたレールガンの宣伝のため。それは成功して、本社には仕事の話が次々に舞い込んでいるという。しかしそれだけではない。

 この平和ボケした国から銃の存在への忌避感を薄れさせること。そして今回の件で繋がりが出来た政治家たちに、銃を持つことの法規制を弱めさせること。

 対怪物部隊は、この国を武器を売りつける市場とするための第一歩だった。


 成功すれば、先駆者であるトライデン社は莫大な利益を得られる。立ち回りによっては、この国の市場を独占できるかも。


 そうなればクローヴスの未来は明るい。

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