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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-13.協力会社たち

『これらの企業にそれぞれの部品製作やシステムの構築を依頼し、我社で組み立てることにより完成したのです!』


 そしてスクリーンに、製作に関わったと思われる市内の会社の名前やロゴが表示される。


「おー。すごい。以外に多いわねー」

「本当にふざけてるわね。こんなに堂々と名前を公表して。捕まらない自信でもあるのかしら」

「あ。うちの取引先の名前もある。うちのドリル使って部品を作ったとか、あるかな」

「……あるかもね。さすがに、あなたの会社に咎が及ぶことはないでしょうけど」

「そっか。ちなみに、あの取引先も罪に問われたり?」

「実際に罪になるかは微妙なところね。こういう形の物を作れと言われて、何に使われる物か知らずに作ったり、あるいはトライデン社が銃ではなく別の製品のパーツだと嘘の情報を伝えてたと言い張れば、罪には問われない」


 ありそうな話だ。


「地元の警察としても、地域経済を担う会社をつつきたくはないでしょうし。騙されていたのなら、なおさらね。市長も、支持層はこういう会社の連合なんでしょ?」

「そうよ。ものづくり組合の代表だった先代市長のお弟子さん」

「いい顔しないでしょうね、大貫市長。取り調べを厳しくしたら、圧力かけてきそう」


 あの人は、そういう所の道徳心は持っている。故に、罪に問えなさそうな市民を警察が脅かすのにいい顔をしないだろう。


「それに、ドローン側の技術やパーツは完全に無罪なのよね。どこが法に触れてどこが触れないか、判別するのはこっちの仕事。あの男、警察を愚弄してるのよ。手間かけさせてくれて……」


 樋口は、睨むように画面内のクローヴスを見ている。


「ねえラフィオー。プリン買ってきた? 食べさせてあげるねー」

「買ってきたけど、自分で食べる。病人はさっさと寝ろ」

「えー。さっきお粥食べさせてくれたから、お返しがしたいの!」

「また今度な。病人ができるお返しは、元気になることだ。ほら、歯を磨いて寝るぞ。早めに寝たら、明日の朝は元気かもしれない」

「元気になったら、明日学校に一緒に来てくれる?」

「考えてやる」

「やったー!」


 つむぎはラフィオの方に目を向けていて、テレビには一切興味がなさそうだった。平和だなあ。


 洗面台の方に向かったふたりを見送りながら、俺はクローヴスの話の続きを聞いた。


『もちろん、これら兵器が日本の法律に違反していることは、我々も承知の上です。我々としても、法令は遵守したい。しかし同時に、この街は法律を意に介さない邪悪な怪物に狙われているということも、常に意識してほしいのです。何より大切なのは市民の命。そうではないでしょうか』


 己の法律違反について自覚していながら、言い逃れようとしている。


 兵器の紹介の次に重要度の高いパートなんだろう。クローヴスの喋りにも力が入っている。


『市民を守る魔法少女。多いに頼もしい。だが、正体不明の個人の集まりに全てを託していいのか。我社は、市民を守るための新たな選択肢を提示したいのです。どうか、ご理解いただけますことを祈ります』


 そしてクローヴスは一礼した。


『質問事項も多いことでしょう。WebサイトやSNSで受け付けておりますので、どうかそちらにお願いします。後ほど、Web上で回答させていただきます。そしてどうか、模布市民そして日本国民の皆様においては、賢明な判断をしていただけること、期待しております。それでは』


 クローヴスの挨拶と共に映像が途切れて、ニュースキャスターが困惑気味に座っている画面に切り替わった。


「なにが賢明な判断よ。民間団体が勝手に武装組織を作って新型の兵器を人口密集地でぶっ放す? ありえないわ。さっさと逮捕してやる」

「でも、ネットでは期待する声も多いみたいですよ」

「これだから世論って奴は……魔法少女をちやほやしてればいいのよ」


 遥が見せてくれたSNSの投稿を覗き見る。人間の手で平和を守るべきとか、新兵器が格好いいとか、そんな声が出ていた。

 こんな兵器を作れてしまう日本の技術は素晴らしい、なんて意見にも多くの賛同がついている。


 もちろん、不安視する声もあるけれど。国に銃を持ち込まれたら、それこそ平和が脅かされるって意見も真っ当だ。


「あれこれ言ってる奴らのほとんどか、この市外に住んでる人間よ。魔法少女と怪物の戦いを、安全な所から見てる人たち。エンタメとして消費してるのね。奴らにとっては、トライデン社は新しい勢力として興味の対象なだけ」


 樋口は随分と冷ややかだ。気持ちはわかる。


「けどまあ、銃刀法の改正権を持っているのも、市の外なのが頭の痛いところよね。トライデン社もそこそこの規模がある会社で、既に政治家先生方に働きかけてるかも。この銃を特例で認めてくださいって。与野党の政治家どもも、地盤の支持が得られるなら悪い顔はしない。市民を守るためとか理屈をつけて、認める可能性があるわ」


 地盤ってのも、この街ではない。全国の都道府県の選挙区なわけだ。

 模布市のことなのに、模布市以外の権力で決められようとしている。


「とにかく、さっさと奴らを逮捕するわ。そしてあんたたち! あんなふざけた武装集団の力なんか借りなくても、怪物は殺せるって世間に見せつけなさい!」


 樋口の命令に、俺たちは頷いた。

 言われなくても、俺たちの街は俺たちで守る。

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