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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-11.ケンゴ・クローヴス

「あなたも知ってるハイテク機器。例えばこういうタブレットなんかの部品を作ってるところよ」

「BtoB企業ってやつねー。お客さんは消費者じゃなくて、消費者向けの製品を作ってる有名企業」


 なるほどな。愛奈の会社もそうだし、そこの取引先もそうだ。


 誰もが知ってる製造業の下請けとして、そこの製品の細々としたパーツを作って納品する会社がたくさんある。ビジネスしている会社向けのビジネス。だからBtoB企業。

 愛奈の会社は、そんなBtoB企業が製品を作るために必要な道具を用意する企業だ。これもBtoBの一種。


 世の中の会社の多くは、そういうものだ。一般向けの製品を店で売るわけでもないし、商品のPRのためにCMを打つことも少ないから、どうしても知名度は落ちてしまう。

 アメリカにもそんな会社はあるのだろう。


「この会社、電子機器のなかでも特にハイテク兵器の制御システムに力を入れてるそうね」

「というと?」

「例えば、軍用ドローンの制御とか」

「ドローン……」


 さっきも見た、大型のドローンを思い出した。


「他にも歩兵や戦車の支援システムとか、戦場を上空から監視して状況把握をするシステムとかを開発してるようね。そういうシステムを搭載した基盤が主な製品。銃の電子制御システムなんかも開発中らしいわ。そこから拡張した、例えばドローンや銃本体なんかのガワの方は、専門ではないみたい」

「でも、あいつらは実際にドローンや銃を持ってたわよー」

「ええ。そこの謎は、記者会見を見れば明らかになるんでしょうね」


 樋口はテレビに目を向けていた。テレビもふもふの夕方のニュース番組が終わり、夜七時からは全国ネットのバラエティ番組に切り替わる。それよりはトライデン社なるところの記者会見が気になるから、国営放送にチャンネルを変えた。


 毎日、生放送でニュースをやってるからな。期待通りに、番組の始まりを告げる映像とアナウンサーの短い挨拶の後に、トライデン社の記者会見会場に映像が切り替わった。


 よくある、なにかの会議室の前方に机を並べて偉い人が座っている種類の会見場所ではなかった。

 大きなスクリーンを背景にしたステージに、男がひとり立っている。あれだな、世界的に普及しているスマホ製造会社が新製品を発表する場っぽい雰囲気だ。


「場所の特定急いで。国内ならすぐに突入するよう、所管の警察にお願いして」


 樋口が電話でなにか話してる。


『皆様、初めまして。トライデン・テクノロジー社のケンゴ・クローヴスと申します。この度は、私共の素晴らしい製品を日本の皆様に紹介できること、大変光栄に思います』


 壇上の男がそう話し始めた。随分と流暢な日本語だ。

 一方で、日本人離れたした立派な体格と、彫りの深い顔をしている。短く刈り揃えた髪も金髪。比較になるものがないからわからないけど、背も高いようだ。

 そしてかなり筋肉質な体格。それを、体型に合わせて作ったと思しき高いスーツで包んでいる。


 名前のうち、ケンゴの方は日本人っぽいな。クローヴスの方はアメリカって感じがするけど。


「トライデン社の幹部ね。日系人よ。父がアメリカ人で母が日本人。アメリカ生まれアメリカ育ち。アメリカ人の奥さんを娶って、子供には恵まれなかった。養子をひとり取っている。へえ。身長ニメートル弱あるって」


 樋口がテレビとタブレットを行ったり来たりしながら、この人物についての情報を伝えてくれた。本当にでかいのか。


 日系人とはいえ、アメリカ人なんだな。本社から、日本向けアピールとして派遣された人材なのは、なんとなく理解できた。

 画面の中でも、クローヴス氏がそんな自己紹介をしていた。日本にルーツを持つ自分が、日本のために役立てることを光栄に思ってる、みたいなことを言っていた。


 言葉遣いは丁寧だったし、言い方も表情も誠実なものに見えた。けど、なんか信用ならないんだよな。

 これから紹介する商品を素晴らしいものだと断言しているあたりが。住宅地で正体不明の銃をぶっ放した行為と乖離しているのが。



『皆様の中にも、夕方に模布市で起こった戦闘についてご覧になった方も多いと思われます。この平和な街を脅かす怪物と、魔法少女と呼ばれる人智を超えた力を持つ女性たちの戦いが繰り広げられていることは、周知の通りです。我々トライデン社は、彼女たちの奮闘を多いに評価し、その献身への感謝を表明する次第であります』


 壇上を歩き回りながら、クローヴスが語りかけてくる。


「感謝してるならお金よこしなさいよねー。そうじゃなきゃ喜べない。働かなくてもいいくらいのお金をくださーい」


 信頼できない男に対して、尊敬できない姉が野次を飛ばす。


『そこでトライデン社は、彼女たちの奮闘の一助となるべく、画期的なシステムを開発いたしました。それが、先程披露いたしました、コントラディクション・システムです。これは古代中国における、最強の盾と最強の矛を表した故事に由来しています』


 そんなものは実在しない、矛盾だという事実を知ってか知らずか、クローヴス氏は誇らしげに語る。コントラディクションって英単語の意味を知らないはずがないのに。


『このシステムは、訓練を受けて武装した特殊部隊及び、貫通力に優れた小型レールガン、そしてこれらを守る防御用ドローンで構成されています』


 背後のスクリーンに、兵士、銃、ドローンが並んで映し出される。


『レールガンが矛、そしてドローンを盾に見立て、それらを駆使し、支援を受けながら戦う部隊を矛と盾の使用者と定義しております。まずはレールガンですが――』

「レールガンってなんですか?」


 遥がキッチンからやってきて尋ねる。その後ろで、ラフィオがお盆に丼をいくつか載せてついてくる。夕飯ができたらしい。

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