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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-7.猫のエプロン

 ラフィオは桃乃の前で、大きい方の妖精態に変化して、すぐに戻った。目の前の光景に驚いた様子の桃乃だけど、すぐに受け入れたようで。


「そっか。やっぱりラフィオくんが、あの……モフモフだったの」

「その言い方は」

「つむぎちゃんが、学校でそう話すことがあるの」

「そっか」


 ラフィオをモフモフと認識している。ああ、わかるとも。


「今日は、学校のプリントとか持ってきたの。はい」

「ありがとう……これは?」


 桃乃が手渡した数枚の紙の下に、折りたたまれた布があった。

 広げてみると。


「エプロン?」


 猫の柄が描かれた布製のエプロンだった。手作りなのか、縫合が甘い箇所が見受けられる。


「家庭科の時間に作ったの。いくつかの柄から選んで、手で縫って。先生に提出したのが戻ってきた」

「そうか。つむぎが猫の柄を選ぶのは、わかりやすいな」

「男子とかは、ドラゴンの絵のやつとか選んでた。あとは、スポーツのブランドの柄のやつとか」

「おもしろい」

「長谷川くんは、迷彩柄だったな」

「なるほど」


 意中の男子のこと、よく見ている。おしゃれ男子と聞いている長谷川くんが迷彩柄を選ぶ理由はわからない。

 この子と長谷川くんという男子の関係性がどれだけ深まったかも、わからなかった。


「つむぎちゃん、病気ひどいの? 原因とかはわかってるの?」


 桃乃は話題を変えて、親友の容態について聞いてきた。


「ただの風邪だよ。そうなった理由はわからないけどね。しばらく寝てると良くなる」

「そっか。お願いね」

「わかってる。帰り、気をつけてね。怪物が出たらしいから」

「ラフィオくんは行かなくていいの?」

「つむぎの側にいたい」

「ふふっ。お幸せに」


 そう言って桃乃は手を降って帰っていった。お幸せにってどういう意味だよ。そんなんじゃないからな。



――――



「ねえ! つむぎちゃんがいない日に限って! なんであんなのが出てくるのかな!?」


 黒タイツの一体を蹴り殺しながら、ライナーが苛立たしげに叫ぶ。俺だって間が悪い理由は知りたい。


「手が届かない所に出てくるなんてな」

「ムキー! 降りて来なさい!」

「フィアァァァァ!」


 頭上でフィアイーターが馬鹿にするように鳴いた。


 ここは、少し離れた場所にある駅前の広場だ。主要駅というわけでもないから、周りに際立って背の高い建物があるわけではない。せいぜい三階建てくらい。少し離れた所に住宅地がある。

 その代わり、広場の真ん中にはモニュメントがあった。製作意図はよくわからないけど、少女が鳩と触れ合っている、よくありがちな銅像だ。


 その、鳩の方限定でフィアイーターになりやがった。少女の方なら、まだ殴れただろうに。


 大して大きいわけではないけど、飛ばれたら手が届かない。

 相変わらず出てきた黒タイツどもは、地を這うだけだから倒せるのだけど。


 前にカラスのフィアイーターが出た時は、ハンターの遠距離攻撃により墜落させられたな。そして今日はできない。


「とにかく! 黒タイツたちを先に全部片付けよう! 奴も飛んでるだけでは恐怖は与えられないとわかってるはずだ! いつか降りてくる!」


 黒タイツの一体の首を掴んで、ただの少女の像となったモニュメントの台座に叩きつけながら言う。


「うん! 一日寝たらつむぎちゃん快復してるとかないかな!?」

「期待したいけどな!」

「うおー! お姉ちゃん登場!」


 家から駆けつけたと思しきセイバーが、黒タイツを一体切り捨てながら登場。


「お姉さん! もうつむぎちゃんは良くなったとかないですか!?」

「お姉さんじゃないです!」

「そこはどうでもいいですから! いえ大事なことですけど!」


 軽口を言い合える余裕はあるらしい。ところが、セイバーの後ろにハンターやでかいラフィオが続く様子もないから、なんとなく察せられた。


「つむぎちゃんは寝ています! 朝よりマシにはなったと思うけど、まだ戦えません!」


 やっぱりそうか。


「それより! 今日のフィアイーターはどんなの!?」

「あれ」

「フィアァァァ!」

「ちょっと! なんで飛んでるのよ!?」


 やっぱり、そうなるよな。


 とりあえず、黒タイツはみんな倒せた。もしかしたらどこかに逃げた個体があるかもしれないけれど、とりあえず見た限りはいない。

 フィアイーターは、なおも上空を飛んでいる。前のカラスは羽を飛ばして攻撃してきたけれど、今回のは銅像なわけでその能力もないらしい。


 降りてきて攻撃してくれば、迎撃の余地はあるのだけど。


「フィアーフィアー」

「あ! ちょっと! 待ちなさい!」


 どこかに飛んでいくフィアイーター。俺たちは慌てて追いかけるけど、魔法少女の脚力に俺は追いつけない。


 フィアイーターは住宅地の方に向かっていく。少し古めかしい個人宅が並ぶそこの、一軒の二階の窓にまっすぐ突っ込んだ。


「フィーアァァァァ!」


 雄々しく突撃する勇者のような雄叫びと共にだ。


 バリンと窓ガラスが割れる音がして、奴は屋内に入る。大きさは普通のハトとはいえ、金属の塊が暴れたら被害はそれなりに大きいだろう。

 不幸な家の中から悲鳴が聞こえた。


「ちょっ! あいつ家の中に! けどこれで倒せる……って! 駄目だー!」


 セイバーがその家の屋根まで跳躍した時には、フィアイーターは再び窓を破って脱出。空を悠々と飛んでいる。

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