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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第6章 新装備、新フォーム

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6-3.つむぎの発熱

 その後、つむぎは売店でモフ鳥の一番大きなサイズのぬいぐるみを買った。


 両腕で抱えないと持てないようなサイズに見合った、小学生にはちょっと手が出せなさそうな値段だったけど、つむぎは大して迷うことなく財布から紙幣を出した。


「つむぎちゃんってさ、もしかしたらお小遣い多めにもらってるのかな。前もおっきなモッフィーのぬいぐるみ買ってたし」


 遥が俺に小声で尋ねてきた。

 御共家の家計についてはよく知らない。けど。


「ありえるかもな。生活費含めて、お金渡してるのは」


 特にここ最近は、彼女の両親が家に帰ってるところをほとんど見ていない。ゆえにつむぎは毎晩のように俺の家に夕食を食べに来ている。

 それで浮いたお金が、あのモフ鳥に行ってるのかもしれない。そうじゃなくても、両親から一緒に過ごせない代わりとしてお小遣いを多めに貰ってる可能性はある。


 全部推測に過ぎないし、本当のことを確かめる気もないけれど。


 お隣さんで、魔法少女の仲間。けど、知らないことも多いんだよな。


「つむぎちゃんのご両親って、なんの仕事してるんだろう」

「製造業って言ってたぞ。この市で働いてるのは間違いない」

「じゃあ、会社の種類は愛奈さんと同じなんだ」

「製造業って言っても色々あるからな」


 愛奈の会社は金属切削設備。剛の父の会社は自動車部品メーカー。その上には自動車そのものを作る会社もあるし、別の製品を作る会社もすべからく製造業だ。

 この模布市には、そんなものづくりの会社が無数にある。大企業から小さな町工場まで、作る製品も様々だ。


 忙しいってことは、それなりに高給取りなんだろうけど、つむぎの両親がどんな仕事をしてるかは知らない。


「お待たせしました! 帰りましょう!」


 一応、周りを待たせていた自覚はあったのか、つむぎはモフ鳥ぬいぐるみを抱きしめたままペコリと頭を下げた。


 みんな、子供の可愛らしい仕草だと、怒ることもなく受け止める。そしてテレビ局の車に乗って、それぞれの家まで送ってもらった。


「ねえラフィオ」

「今度はなんだ」

「この前、ラフィオと一緒にお風呂入ったよね?」

「入らされたな。お前は水着を着て」

「またやりたい」

「駄目だ」

「えー。だって、あの後乾かしてブラッシングしたラフィオ、すっごくフワフワだったんだよー!?」

「で、お前に嫌というほどモフモフされた」

「もう一回させて!」

「駄目だ!」


 車の中でも攻防は続いていた。


 その夜も、いつもの通りの時間を過ごすこととなった。

 遥とラフィオが夕食を作り、愛奈は酒を飲む。


 つむぎは隙あらばラフィオをモフろうとするけど、今日は買ったばかりのモフ鳥を抱きしめていたからそんなに狙ってはいなかったのが、ちょっとした差異。


 夜遅くなる前に、遥を家まで送ってつむぎも隣に帰す。今日も両親が帰ってきている気配はなかった。

 つむぎはラフィオと一緒に帰りたいと言ってたけど、ラフィオ本人の強い抗議で実現はなかった。一晩中モフモフされることへの恐怖は並大抵のものではないらしい。


 そうやって、普段の日常を送りながら一日が終わる。



 翌朝は、日常から少し外れた出来事が起こった。


 いつものように愛奈をフライパンで起こして、下着姿を見ないようにしつつ着替えを命じてからリビングに戻ると。


「悠馬。なんか通知が来てるぞ」


 テーブルの上の俺のスマホに目をやりながら、ラフィオが教えてくれた。

 見ると、メッセージが一件。つむぎからだった。


『ゆうまさんかぎあけて』

「……なんだこれ」


 もう少ししたら、いつものように外に出て、同じタイミングで出てくるつむぎと顔を合わせるはず。わざわざこんなメッセージを送ってくる理由はなんだ?

 すると今度は、玄関の方からドンドンと扉を叩く音がした。


「ら、ラフィオー。悠馬さん。愛奈さん。た、たすけて……」


 つむぎの声だ。様子がおかしい。そんな体力はないのに、頑張って声を張り上げているようなか細い声。

 ただごとじゃない。


「なんで名前を呼ばれるの、わたしが最後なのかしら」


 ぴしっとスーツを着て、形だけは立派な社会人に見える愛奈の問いを無視しながら玄関まで急ぐ。そんなの訊かなくてもわかるだろ。


 ドアを開けると、マンションの廊下の手すりにつむぎが力なくもたれかかっていた。

 水色のパジャマ姿で、汗でぐっしょりと濡れている。息が荒く、こちらを見る目も潤んでいる。頬は真っ赤だ。


「悠馬、さん。げほっ」


 かなりしんどそうにこちらを見つめて、咳をした。

 しゃがんで、つむぎの額に手を当てる。すごい熱だ。


「風邪か? とにかく中に入れろ。僕の部屋まで連れて行くんだ」

「えへへー。ラフィオの、げほっ。へや……」

「具合が悪いなら喋るな」

「ラフィオすきー。だいすきー」


 熱で浮かされてるような言い方をする。内容自体はいつも言ってることだけど。

 つむぎの体を抱え上げて、ラフィオのベッドまで運ぶ。これまでお姫様抱っこしてきた中で、一番軽かった。


「あ、麻美? ごめんね、つむぎちゃんが熱だしちゃって。病院行かせなきゃいけないから、今日はお休みしますって課長に言っておいて。うん、そう。ありがとう。今日の仕事任せていい? イワイテックさんと藤岡工業さんに納入する部品は机の上にあるから。何かあったら連絡して、ええ。ありがと。お願いね……よし」

「おい」


 部屋から出ると、愛奈が麻美に電話をかけていた。有給取る理由に使うな。あと上司への連絡を後輩に頼るな。

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