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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第5章 己の属性と向き合う話

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5-47.みんなでニコニコ園まで

 姉が、宿敵とも呼べる相手と対峙して、今度こそ打ち解けようとしている。その覚悟を彼方は見ていた。

 不安もあるだろう。何か力になれるかもしれないと考えているのかも。


「うん。わたしも、彼方と更紗ちゃんが喧嘩したままなのは嫌だな。でも、更紗ちゃんとはわたしが最初に話したい」

「わかった。不用意に動かないよう、彼方は俺が見ておく」

「ありがと。わたしも、ちゃんと言って聞かせるね。仲直りするかの話し合いで、暴力は絶対に駄目だって。後は、なにか決めておくことある?」

「園の近くで、みんなで待ち合わせよう。万一、彼方と更紗が君たちの視界の外で鉢合わせするのは避けたいだろう?」


 鞄の中からラフィオが話しかけてきた。


「愛奈と麻美。あとつむぎも合流するんだ。バラバラで押しかけるよりは、まとまって動こう」

「そうだな。集合場所はどこがいいかな……」


 スマホにニコニコ園の近くの地図を出す。住宅地で、待ち合わせに適したスポットはなかなか見つからないけれど。


「近くに公園があるねー。とりあえずここに集まろっか」

「隅なら邪魔にならないだろうしな。子供とかいても」

「雨降りそうだし、子供もあんまり来ないよ。彼方とつむぎちゃんに、そう連絡しておくね」

「じゃあ俺は姉ちゃんと麻美に」


 あまり間をおかず、了解の返事が返ってきた。




『坂本混亜紗と豹介が、更紗を取り戻そうとしているわ』


 昼休み、樋口からそんな電話がかかってきた。

 家に盗聴器を仕掛けるのに成功したのか、奴らが外からでも聞こえるほど大声で話していたのか。


「なんでそんな」

『世間体とか、そんなのよ。あと、豹介が強固に主張している』

「なんでだよ。実の娘でもないのに」

『わかるでしょ? あの男はまだ、女子中学生の体に未練があるのよ。障害者に手を出す躊躇いはあったとしても、見方によれば高物件よ。なにしろ抵抗しない子だから』

「物件って言い方、好きじゃない」

『ええ。わたしも。けど豹介はそう認識している。だから仕事に出る様子もなく、更紗を探しに学校に行ってたわ』

「学校に来たのか」 

『ええ。真亜紗と一緒に徒歩で来てね。校門で教師に止められて帰ったけど』

「そうか」


 彼方と顔を合わせなかったのは良かった。


『あの男女が、更紗の行動範囲として把握している箇所は少ない。更紗自身が自分で動けないのもあってね。今は家に戻っているけど、次に向かう先の検討はついているわ』

「ニコニコ園か」

『ええ。夕方を見計らって来るはずよ。気をつけてね』

「わかった。用心する」


 樋口は、俺たちがニコニコ園に行くことは知らないはず。けど、察していたのだろうな。

 あの男が更紗を連れ去りに来るなら、なおさら俺たちが行かなきゃいけない。更紗の人間性のためにも。


「そっかー。じゃあ、注意しないとね。男の人にもうひとり来てもらおっか。で、あの不良みたいな男とぶつけて威圧して帰ってもらう」

「念の為、そうした方がいいか」


 その役は、いざとなれば俺がやるつもりだったけど、人手は多い方がいい。


「岩渕先輩! ちょっとお願いがあるんです!」


 こういう時に頼れる男はひとりしか知らない。一緒に来る愛奈やつむぎの事情を知っているのも利点だ。


『いいよ。わかった』


 剛は遥の突然の電話に、快く了承してくれた。いい人だよな。




 そんな、想定外の事態には見舞われつつ、なんとかなるかもという楽観的な状態は維持できていた。

 そして放課後、俺たちは集合場所まで徒歩で向かう。空は、今にも雨が降りそうな様子だった。


 住宅街は傘を片手に下校途中の子供たちの姿が目につく。俺もちゃんとビニール傘を持っているし、校門前で待ち合わせして一緒に向かっていた剛もちょっと高そうな傘を手にしている。


「雨が降る前に部屋の中に入りたいね。帰りは傘さすことになると思うけど」


 そういう遥は、傘を持ってない。降れば、俺が車椅子を押して俺の傘をさすつもりだ。


「ラフィオー!」

「あー。来やがった」


 公園まで歩く途中で、ランドセルを背負ったつむぎの声がした。

 鞄の中で、ラフィオが心底嫌そうな顔をしていた。


「ラフィオ! モフモフさせて!」

「いいかつむぎ。僕たちはこれから、子供たちに歳の近い子供として会いに行くんだ。この妖精の姿じゃなくて、人間の格好で」

「ニコニコ園に着くまでモフモフさせて!」

「話が通じない……」


 鞄からラフィオを鷲掴みしたつむぎは、いい笑顔で抱きしめていた。


 あとは愛奈と麻美と、彼方か。既に公園に着いているだろうか。


 近くまで来ると、思っていたよりは子供たちの声が聞こえてきた。子供って元気だな。雨が降るまでは遊びたいんだろうな。

 覗いてみれば、ニコニコ園の子供たちも公園に来ている。そして思い思いに過ごしていた。園長先生を始めとして、大人たちに見守られながらだ。


「おっと。これは予想していなかった」

「まあ、考えればわかることだけどな。施設の近くの公園に、みんなで散歩しに行くのは理解できる」

「うん。確かに。どうする? 話しかけちゃおっか。更紗ちゃんは?」

「あそこ」


 公園の隅に、車椅子に座った更紗の姿があった。

 昨日壊れたのとは別の車椅子だ。園長先生が用意したのかな。障害者福祉施設だから、そういう伝手があるとかで。

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