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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第5章 己の属性と向き合う話

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5-41.対パンダ戦

 けど、敵としても魔法少女がいる方向に跳ぼうとはしない。つまり、ライナーがいる位置とは反対側に逃げる傾向があった。

 だから、ライナーが意識すればフィアイーターの跳ぶ方向はコントロールできる。今は、壁の方に向かわせた。


「フィアアァァァ!」


 跳躍。窓ガラスを割りながら、パンダの体がガリガリと校舎の壁面に擦れる。


「よし今!」


 セイバーがそこに向ってひらりと飛び降りた。片手で剣を持ち、片手ではしっかりスカートを押さえて。で、見事にパンダの上に着地。手にした剣を首筋にぶっ刺して、簡単には振り落とされないようにしていた。


 当然、刺されたフィアイーターは悲鳴をあげる。首を刺されても死なずに悲鳴で終わりなのだから、改めて考えてもすごい。


 とにかく、フィアイーターは突然現れた新たな魔法少女に気を取られて、姿勢が崩れた。ライナーを警戒する余裕もなかったらしい。

 これまでと違って隙だらけの着地に、ライナーの蹴りが直撃。パンダの体が大きく傾いて、校舎にもたれかかる。


「このっ! この! 手間かけさせてくれて!」


 動きが止まったフィアイーターのバネを繰り返し蹴って、ついに中ほどのところで折ることに成功した。

 足に大きな負傷をしたようなものだから、フィアイーターは立てなくなって大きな音と共に倒れ込んだ。


 上のパンダも動けなくはないらしいけど、遊具の形の問題で手足が短く、バタバタしても大した意味はない。


「散々追いかけ回すことになった恨みー!」


 自分でも身勝手なことだとは思うけど、叫びとともにパンダの横っ面を回し蹴りした。

 すると、セイバーが首筋に剣で切れ目をいれていたのが蹴られた衝撃で一気に広がり、パンダの首がちぎれかけた。首の皮一枚繋がったという感じで、目の前に漆黒の闇が広がる。


「あ! ありましたコア! そこ!」

「ええ! セイバー突き!」


 身を乗り出したセイバーが剣の先端でコアを突く。曇っているけど光のパワーは不足しなかったようで、コアが砕けて怪物はただの遊具に変わっていく。


「うわっと!」


 小さな子供向け遊具に跨った形のセイバーが、そのまま地面に倒れ込んだ。


「痛た……。急に小さくなるんだから」

「別に急じゃないですよ。セイバーの作戦で隙を作れたのはすごいですけど、なんか締まらないんですよねー」

「うるさいわね。倒せたんだからいいじゃない」

「それに、別に上から飛び降りる必要なんか無かったんじゃないですか? フィアイーターが着地した時、ふたりでタイミングずらして攻撃するだけでバランス崩せましたよ」

「いいじゃない! こっちの方が派手なんだから!」

「お姉さんばっかり活躍してずるいです」

「お姉さん言うな」

「ふたりとも」


 悠馬がやってきて、呆れ気味に声をかけてきた。



――――



 校庭で更紗の身柄を先生たちに預けて、そこに黒タイツが乗り込もうものなら先生たちで迎撃しながら避難できる状態になってるのを確認した上で、俺は校舎裏の駐車場に向かった。

 すでに怪物は殺されていたようだけど。危機が去った途端に、浅ましい言い争いを始めた。


「悠馬! このフィアイーターはわたしが倒したのよ! ライナーだけじゃ手も足も出なかったんだから!」

「黒タイツはほとんど倒しましたー! それに、壁まで追い詰めたのはわたしだし! 悠馬聞いて! お姉さんは最後に美味しいところかっさらっただけなの!」

「お姉さんじゃないもん! わたしがいないとライナーがみっともない追いかけっこしてたのは事実だもん!」

「わたしの方が!」

「わたしが!」

「おいこら。ふたりとも、とりあえず落ち着け」

「ふぁーい」

「ほら。お姉さんのせいで怒られました」

「ライナーのせいだもん」

「お姉さんが」

「ライナーが」

「だから」


 ふたりの前まで歩み寄れば、ようやく静かになった。


「姉ちゃん。更紗の車椅子が壊れたんだ。どこかが曲がったみたいで。直せるか?」

「難しいわね。素人が手出しできるものじゃなさそうだし、時間もかかるわ。麻美の家まで持っていって、素人なりに構造を調べて部品を作り直して取り替えるって、数日かかるわよ」

「そうか」


 完全に無理とは言わないあたり、自分の仕事はよくわかってそうだ。けど、今から車椅子を持ち去るわけにはいかないな。

 怪物がいなくなったことを、そろそろ教師たちも知るだろう。そして校舎に戻る。壊れたとはいえ、置いていったはずの車椅子が消えていれば問題になる。


「悠馬が気にしてるのは、あの子のこれからでしょ? 車椅子が壊れて、移動手段がなくなったのを心配している」

「あと、あの子の面倒をこれから誰が見るか、ですね。悠馬。更紗ちゃんは、お母さんたちに連れて行かれて避難したの?」

「いいや。校長室に、ひとりで取り残されていた。母親も、あの男も更紗を置いていったらしい」


 桂木もいたけど、何もしてなかったしな。


「そっか……」

「ねえ。あの男って? 両親が来たわけじゃないってこと?」

「説明すると長くなるな。姉ちゃん、そろそろ仕事に戻らないといけないんじゃないか?」

「それはそうだけど! 気になるじゃない!」

「後で説明してやるから。姉ちゃんは仕事に戻れ。麻美を待たせてるんだろ?」

「でも! なんか面白そうな話を切り上げられたら、気になって仕事が手につかなくなるのよ!」

「元からついてないだろ」

「うん! 行ってきます!」


 いや、そこは肯定するなよ。結局仕事に戻るのは立派だけど。

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