表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第5章 己の属性と向き合う話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

249/746

5-39.校長室

 更紗を少し脅かした後、もう一体の黒タイツを殺すために校長室の扉に手をかけて。


「ぎゃっ! やめろ! 来るな! 離せ! ぎゃぁっ!」


 野太い悲鳴が中から聞こえて、慌てて中に入る。桂木も逃げてなかったのか。


 緊急事態に生徒の安全確保をすることなく、ここで隠れていたのか。そこに俺が黒タイツを放り込んだ。物陰に隠れていたらしい桂木は少しの間は無事だったけど、見つかった途端に痛めつけられた。


 扉の向かいに置いてある校長のデスクの向こうで、桂木が床に転がっているのが上半身だけ見えた。

 右腕を押さえて痛がっている。つまり、死んではいない。黒タイツに折られたかな。


「こっちだ化け物!」


 反応があるかはあまり期待しなかったけれど、呼びかけながら机に向けて駆ける。


 さっきまで彼方たちがいたと思しき、部屋の中央に鎮座する背の低いテーブルの上に乗って、校長の机の上に飛び乗って黒タイツに肉薄。

 黒タイツ本人は、体を丸めている桂木の背中をガンガンと蹴っていた。苦しそうな悲鳴がクソ教師の口から漏れている。ちょっと嬉しかったのは内緒だ。


 桂木を蹴るのに忙しかった黒タイツだが、俺の存在を忘れてはいなかった。俺が駆けつけるタイミングで蹴りを中断し、対峙する。

 机に飛び乗った俺の蹴りを回避。俺は勢いのまま床に着地。桂木と黒タイツの間に立つ。


「おい! あんた! 助けてくれ! 正義の味方なんだろ!?」


 さっき女子中学生が言ってたのと同じように助けを求めるクソ教師。お前が生徒を助ける立場なのに、それは頭から抜けたらしい。

 しかもこいつは、無事な片手で俺の服を掴んだ。


「助けてくれ! 殺される!」

「うるさい。掴むな!」

「ぎゃあっ」


 後ろ蹴りで桂木を剥がした後、校長の机の上の何かのプリントの束を掴んで黒タイツに投げる。


 紙だからダメージにはならない。けど襲ってくる黒タイツの目くらましにはなって、奴の手は空を掴んだ。そいつの腹を蹴飛ばして、何か武器になるものはないか探す。

 机の端に花が生けてあった。あまり大きくはないが、細長い花瓶は鈍器になる。


「こいよ化け物!」


 口悪く挑発しつつ、後ろの桂木にチラチラ目を配りながら身構える。


「フィー!」


 飛びかかってきた黒タイツの攻撃を、身を引きながら回避しつつ机の引き出しを開けた。


 黒タイツの腰が飛び出た引き出しに直撃。痛みに悶ているそいつの頭に花瓶を振り下ろす。

 花と水を飛び散らせながら割れる花瓶。怯んだそいつの首根っこを掴んで、引き出しに何度も叩きつけた。


 引き出しがひしゃげるほど力を込めれば、黒タイツの方も無事では済まない。手足をバタつかせて抵抗していたのがだんだん弱くなり、死んだ。

 外では戦闘している音が聞こえる。ライナーが頑張ってるのだろうけど、複数いる黒タイツを全員一度に倒すのは無理だ。


 次にいつ、黒タイツが襲ってくるかわからない。周りを見て、少しゴツめのボールペンがあったからポケットに入れる。


「なあ! 助けてくれ! 頼むよ! 怪我してるんだ!」

「あんたは自力で歩けるだろ。さっさと逃げろ」

「俺を守ってくれ!」

「うるさい。あの子を助けるのが先だ」

「おごっ!?」


 すがりついてくる桂木の顔面を殴って黙らせる。四年前の恨みが無かったとは言えないな。


「ほら、行くぞ」

「え……」


 周囲を警戒しながら更紗の所に戻る。驚いた顔をした更紗に目をやりながら、倒れた車椅子を起こして軽く動かした。

 駄目だな。倒れた衝撃で、どこかが曲がってる。動かせない。


 そういえば、この車椅子が最初に動いたのを見たときも、軋む音がした。

 元から安物なのか、メンテナンスを怠っていたかだ。遥は自力でできるけど、更紗には無理。親や、あのまともではない男もやらないだろう。


 そうやって傷んできた車椅子が、このタイミングで壊れたわけだ。


 仕方ない。正直かなり気が引けるけど、慣れてはいる。四度目だから。


「手足は全然動かせないのか?」

「足はほとんどだめ。手は……スマホを動かすくらいなら」

「そうか。弱くてもいいから、俺の肩に掴まれ。胴体は動くんだな? だったら体重を俺にかけるようにしろ」

「あっ……」


 更紗をお姫様抱っこする。なんでこう、繰り返すことになるんだ。


「こういう時、避難場所は校庭か? 体育館?」

「校庭……」

「そうか」


 とりあえず一階に降りよう。下足箱の位置も校庭への行き方もよく知ってるとも。


「なんで助けてくれたの? さっきは助けたくないって言ったくせに」


 更紗が、少し険のある言い方で俺に話しかけてきた。

 とはいえ、普段と比べればしおらしくなってるな。


 俺の彼女を名乗る車椅子少女がお前を気にかけているからだ、とは言えない。


「さあな。特別だ。次は助けてやれないかもしれない」

「でも」

「お前、普段からあんな態度なんだろ。だから誰も助けてくれなかった。お前を校長室まで運んだ奴も、お前より自分の安全を優先した」

「……お母さんもヒョウさんも、あたしのことなんてどうでもいいんだ。死んじゃえばいいって思ってるんだ」


 あの男はヒョウって呼ばれてるのか。格好いいけど、呼び名としては変だな。モフモフっぽさはあるけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ