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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第5章 己の属性と向き合う話

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5-32.学校の出方は

『もしもし、悠馬?』


 電話口の遥の口調は、落ち着いているように聞こえた。


「もしもし。家族とよく話し合えたか?」

『みんなで晩ごはん食べながら話したよ。彼方が学校で、あの子のお世話ずっとやってたこととか、他の生徒や先生が手伝う様子がなかったこと。あの子が酷いことをいつも言ってるってことも。……わたしが言われたことも、お父さんたちに改めて話した』

「そうか。辛かったな」

『ううん。私はそうでもないよ』

「本当に?」

『本当。それより彼方が、月曜日からどうするかだよ』


 確かに、そっちの方が重要だ。


「方針は決まったのか?」

『難しいねー。彼方とあの子が鉢合わせしたら、絶対に喧嘩になる』

「うん。けど、同じクラスだから嫌でも顔を合わせることになる」

『でしょ? そして、彼方が遠慮して学校を休むのも避けたい。なんか、こっちが悪いって風になりそうだし』


 理屈はわかる。彼方には堂々と登校してほしい。学生には学ぶ権利があって、それを侵されるわけにはいかない。

 悪いのは更紗の方であって、顔を合わせたくないならそっちでなんとかしろ。そういう主張だ。


「彼方が休んでる間に、あいつがクラスで自分に有利なことばかり言い張りかねないもんな」

『それもあるねー。まあ、クラスのみんなは彼方の方が正しいって思うだろうけど』

「普段の信頼度の問題か」


 そこに心配はない。となると、次は。


「向こうの出方と、学校の対応だな。連絡はしたのか?」

『んー。学校には連絡ついたらしいよ。先生も今日はお休みだけど、あの園長先生は中学校の校長先生と知り合いなんだって』


 地域が被ってるし、そういう繋がりはあるのかな。


『そこから、桂木先生だっけ。には連絡行くはずだよ。何があったのかは伝わる』

「それじゃ足らないんだよな。学校や教師の対応がまずいってことを伝えないと」

『うん。それは、お父さんたちが今やろうとしてる。桂木先生に直接電話してね。けど、まだ繋がらないらしい』

「着信無視してるとかかな」

『かもねー』

「問題を先送りにしたがっているのかな。月曜日になれば直面しないといけないことなのに。保護者からの電話を無視した不誠実な教師って評価が残るだけなのに。いや、あんな奴に今更良い評価なんてないだろうけど」

『手厳しいねー』


 本当に、自分でも驚くくらい、あの教師が嫌いらしい。


「……いや、ちょっと待て。親と話さないまま、この件を終わらせるつもりかもしれない」

『へ? いや、どういうこと?』

「生徒と、つまり彼方とあの子と桂木の三人で直接話し合うんだよ。話し合いで解決するのが一番とか、くだらない理由をつけて。で、大人とか教師の威厳を見せつけ、それっぽい理屈で丸め込んで解決ってことにするんだ」

『つまり?』

「ふたりはこれからも仲良くしろって、当人の気持ちを押さえつけて命令する。生徒は教師には逆らえないし、中学校が大人の理屈に反論するのも難しい。で、お互いに謝らせて形だけの仲直りをして、それでおしまい」


 双方とも本気で謝るわけでもないし、わだかまりは残り続ける。なんの解決にもなってないけど、桂木は仕事を果たしたことになる。

 更紗の言動は許せるものじゃないけど、彼方が暴力を振るったのは事実だ。そこを責められれば、彼方は黙るしかなくなる。


『どうしよう』

「桂木に電話するのはやめよう。明日彼方が登校する時に、親を同伴させて学校と話させるんだ」

『なるほど……じゃあ、お母さんが』

「校長と話すならそれでいいかもしれないけどな。桂木も出てくるだろう。あいつ、相手が女と見れば舐めた態度で来ると思う」

『相当、その先生のこと嫌いなんだね。わかった。お父さんに、仕事休めないか訊いてみるね』

「あと、彼方にもちゃんと言っておくんだ。味方のいない場で話し合いをしようと言われたら、すぐに逃げろ。逃げられないようなら、口を閉じて何も言うな、と」

『わかった。親もいないのに先生と話しをするなってことだね。それで、お父さんたちが同席したとして、どう落としどころをつけるのがいいと思う?』

「お互いに悪かったのは認めて、その上で和解する必要は無い」

『……学校がそんなの認めると思う?』

「思わないけど、受け入れさせるのが当人同士のためだ」


 クラスのみんなが仲良くなんて、無理な話だ。理想論が好きな教師は実現を夢見るし、桂木も己の安寧のために理想論を振りかざすだろう。

 けど無理なものは無理。クラス替えをするか、そうじゃなくても普段の接触は可能な限り避ける仕組みを作らせる。


「あと、障害者の世話を生徒に一任させている現状を変えさせたい。世話係が必要なら、その人員を学校が雇わないと」


 今回の件はそもそも、子供に子供の世話を任せているのが問題だ。無礼な子供に注意ができる大人が世話をして、児童に余計な負担をかけない仕組みを作らせれば、問題は解決する。


『なるほどねー。お父さんに伝えておく。あとは坂本さんの家がどう出るかだけど』

「ここも、家同士で直接話をするべきじゃないな。学校を挟んでやりたい」

『そうだね。わたしたちも、そもそも向こうの電話番号知らないし』

「今、樋口が素性を探ってるところだ」

『おー。悠馬ってば、公安を顎で使ってるねー』

「実を言うとな、頼む時に樋口から小言を言われた」


 だからこうやって神箸家に、高校生の浅知恵で考えたアドバイスを送っているわけだ。

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