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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第5章 己の属性と向き合う話

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5-30.ずぶ濡れの帰宅

「うちのマンションはあそこね! レッツゴー!」

「後で覚えておけよ!」

「ねえ悠馬! 外から家のある四階まで直接飛び移るの、結構楽しいのよ!」

「姉ちゃんはいつもやってるからいいかもしれないけど!」

「前の山本さんの家の屋根から飛び移るのがコツよ」

「めちゃくちゃ慣れてるな!」


 いつも以上にテンションの高いセイバーに、俺は呆れながら抱えられ続けた。


 たぶん、深刻な場に長くいすぎて疲れたのだろう。緊張の糸が限界を迎えて、こうでもしないとやってられなくなったのか。


 実際のところ、帰宅には成功した。雨の中を飛んでいるカラスに二回ほどぶつかったのも、まあ気にするほどのことじゃない。

 雨にぶつかりに行くような速度での走行で、服の中にまでびしょ濡れだ。しかも向かい風のせいで体の冷えが尋常ではない。


「ただいまー」

「ラフィオ! この馬鹿にありったけのバスタオルぶん投げてやれ!」

「おかえり。セイバーはまた、私用で変身したのかい?」

「早く家に帰りたいからだもんねー。寒い寒い。悠馬、お風呂はいろ!」

「俺が先に入る」

「一緒に」

「駄目だ」

「で、でも! すごく寒いし! このまま放置とか嫌!」

「姉ちゃんは動いてたから体が温まってるだろ! 俺の方が深刻なんだよ。あと、魔法少女だから寒さに強いし風邪引く心配もないだろ」

「そうかもしれないけどー! でも寒いのよー!」

「バスタオルにくるまってろ」

「やだー! せめて、わたし服脱がないから! 魔法少女の格好のままでいるから、一緒にお風呂入ろ! だったら寒くないでしょ! お願い!」

「駄目」

「わーん! 悠馬がグレた! 反抗期だー!」

「騒がしいなあ……。ほら、セイバー、とりあえず体を拭け」

「ふぁーい……」


 俺が風呂に消えた後、セイバーはしばらく変身した姿のまま、脱衣所で立ってたそうだ。床が濡れるだろとラフィオに怒られて、バスマットの上で髪を拭きながら。

 そして魔法少女でも寒いものは寒いと、大量のバスタオルにくるまっていた。


 こんな状況でも隙あらば俺のいる浴室に入り込もうとする。入れなくても覗こうとする。ピンク色の髪と衣装の魔法少女がだ。

 ちょっとしたホラーだな。


「姉ちゃん、タオル一枚くれ。あとラフィオに、着替えをこっちに持ってくるよう言ってくれ。姉ちゃんは脱衣所から出てくれ」

「もー。一日頑張ってたお姉ちゃんに、注文多くないですかー?」

「普通は言わなくてもいいんだよ。姉ちゃんがそこに立ってさえなければ、なんの問題もないんだよ。おとなしくリビングで体を拭いててくれればいいんだよ」

「えー。やだ!」

「やだじゃない! さっさと行け!」

「あ、悠馬の着替えはわたしが持ってくるわねー。パンツ含めて」

「わかったから! 早く持ってきてくれ。それで姉ちゃんも風呂に入れ冷えてるだろ」


 ちょっと恥ずかしい気持ちはあるけど、姉弟だしそこまでじゃない。俺も姉ちゃんの下着洗ってるし。


「じゃあ悠馬。今日は諦めるけど、わたしは諦めないからね。一緒にお風呂入るの」

「諦めてくれ」

「よっ、っと、はっ……やっ、たあっ! はい、持ってきたわよ。早いでしょ、変身してるから」

「つまらないことに魔法少女の力を使うな」

「わたしもお風呂入りたいから、早く出てねー」


 セイバーが立ち去るのを確認してから、俺はようやく風呂から出られた。風呂に入るだけで、この労力だよ。



 愛奈がシャワーを浴びている間、俺はラフィオとつむぎに、さっきあったことを話した。


 今日は神箸家は一緒になって過ごすべき。そして、今後のことを話し合わないと。週が明ければ、彼方は学校で更紗と鉢合わせすることになる。

 険悪な雰囲気になるのは避けられないし、お世話係はしないと断言している以上は周りが不審がる。生徒だけではなく、教師も不審がるだろう。


 そして、更紗の世話をなんとか彼方に継続させようとする。あの桂木なら、そうやって現状維持を望むはず。彼方の気持ちなどお構いなしに上から目線で命令するだけだ。

 まあ、やる気がないから説得も大して力が入らないだろうけど。でも、中学生にとっては大人って大きすぎる相手だからな。


「なんだか、その教師のことがかなり嫌いなようだね。ずっと存在を忘れていた割には」

「あー。まあ、うん」

「嫌いだから、さっさと存在を頭から消したかったのかい?」

「それはあるかも」

「そうか。もっとも、今回は遥の家の問題だ。悠馬が直接、そいつに手を下すことは無いと考えてるんだろ?」

「……まあな。よっぽどのことがなければな」

「あるかもと考えているのかい?」

「それは……ないと思ってるけど」

「未練を隠しきれてないな。とりあえず、遥たちにアドバイスして、その教師に都合がいいことが起こるのを阻止する役目で溜飲を下げろ」

「クビにできたりしないかなー? わたしも、再来年にはその中学に通うんだよね?」


 つむぎが話しに入ってきた。彼女にとっても他人事ではない。


 どっちかというと、俺にラフィオが取られている事の方が重要案件で、いずれ通う学校の教師なんか別に気にしてないのだろう。


 家庭に問題がなければ、ただの無気力な教師だし。あと、つむぎがそういう大人に気持ちを左右されることってなさそうだし。

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