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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第5章 己の属性と向き合う話

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5-19.ニコニコ園

 愛奈と一緒に家を出る。つむぎはラフィオと一緒にお留守番だ。


 幸い、今日も雨は降ってない。けれど空は相変わらず曇天で、午後はにわか雨の可能性もあるらしい。

 さほど離れていない遥の家に迎えば、遥も彼方も準備を終えていて家の前で待っていた。


「本当に来るんですね、お姉さん」

「ええ。お姉さん言わないで」

「撮影の邪魔しないでくださいね?」

「あー……それは……」

「邪魔したいって魂胆、見抜かれてるな」

「うるさいわね。邪魔なんかしないわよ。わたしは単に、青少年が不順なお付き合いをしている様子がテレビで流れないか監視をするために」

「しませんよそんなこと! てか、お姉さんがやらなくてもテレビ局がしますから!」

「えー。でも高校生のテンションの高さを考えると、何かの間違いも起こるかも」

「起こりませんから! なんですか不順なお付き合いとか間違いとか! 未成年の前で言わない! 中学生もいるんだから」

「ふふん。遥ちゃんってば恥ずかしがってるー」

「姉ちゃん。そこまでにしておけ」

「あー。うん。わかった。悠馬に言われたら仕方ない」

「愛奈さん、悠馬さんの言うことは聞くんですね」

「言うこと聞かないと、明日の朝はフライパンを叩くのに気合いが入るからな」

「……フライパン?」

「試してみるか? 遥、家のフライパンとおたま、借りていいか?」

「待って! 試さなくていいから! おとなしくしてます! 撮影の邪魔はしません!」

「最初からそうしろよ」

「ふふふ。不健全なことは、悠馬の前だけで言うことにするわね」

「お邪魔します。ちょっとフライパンを」

「待ってー! 悠馬やめて! 家に上がろうとしないで!」


 俺の試みは、愛奈が必死の抵抗をしている間に、テレビ局の車が来たことで中断された。


「皆さん、今日が撮影最終日です。ここまでお疲れ様でした、最後まで頑張りましょう!」


 澁谷の挨拶に各々返事をしながら、俺たちは車に乗り込んでいく。


「あの。悠馬さん」

「どうした?」


 彼方が、少し小さな声で話しかけた。


「今日、車椅子を押すのは悠馬さんがメインなんですよね?」

「そう、なるのか? 遥が自力で動かすことの方が多いとは思うけど」


 頑張ってる姿を届けたいっていう趣旨のドキュメンタリーだし。同じ障害者が多くいる場面では特に、遥はそうしたがるだろう。

 もちろん、坂なんかでは誰かの補助がいる。そんな時は。


「彼方がやってもいいぞ」


 彼女は中学の生徒会長を目指しているし、テレビでボランティアな行為をしているのが流れるのは選挙の時の大きなアピールになる。

 だから気を遣って提案してみたのだけど。


「い、いえ。悠馬さんお願いします。わたしは、ちょっと引いた所から助ける感じで」

「……いいけど」


 そうお願いした彼方は、どこか不安そうな面持ちで。


「なにか心配なことがあるのか?」

「えっと。心配というか……」

「悠馬ー。彼方ー。早く行くよー」

「あ、うん!」


 車椅子を後部に乗せて、松葉杖で座席まで歩いていた遥に声をかけられ、彼方はそっちへ駆けていった。

 なんだったのだろうな。少し首を傾げながらも、俺も車に乗り込んだ。



 俺たちの住んでいる場所からそう遠くはない、住宅街の中心部あたりにニコニコ園は建っていた。

 遠くはないと言っても、車で十数分の距離。小中学校の校区で言うなら同じという程度の距離なのだろうけれど、俺にとっては今まで縁の無かった場所だ。


「わたしも、ここには始めて来る。こういう場所があるってことは聞かされてたけどねー」


 遥にとっても、それは同じ。前にも言ってたな。他の障害者と付き合いはないと。


「施設の人に挨拶してくるので、ちょっと待っててくださいね」


 澁谷たちが先に施設の方に向かっていく。撮影に関する打ち合わせとかあるのだろうか。


 俺たちは園の入り口付近で待たされて、なんとなく施設の様子を見つめる。

 障害者児童の交流の場所がメインの施設だけど、小さな子供たち含めた未成年者を預かる託児施設という側面もあるのだろうか。外観は児童館といった雰囲気だった。


 こじんまりとしながらも校庭のような砂地が広がっていて、小さいサッカーゴールもある。あと滑り台も。

 使う子供がいるのだろう。障害者でも運動はした方がいい。この前、遥もバドミントンしてたし。


 建物は、こちらに向いている大きなガラス窓に、色画用紙を切り貼りして作った花に「にこにこえん」と書いてある。

 その他窓には、デフォルメされた動物や虹なんかも、同じように色画用紙で作られている。


「外観を華やかにする一方で、中を覗かれにくくする意味もあるんでしょうね」


 俺の隣に立つ愛奈が、静かに言った。

 たしかに、窓が賑やかだとそっちに目がいって、中は覗きにくい。単純に窓の見える面積も圧迫されているし。


「覗く奴がいるのか?」

「ええまあ。変質者みたいなのが。子供を覗くのが趣味みたいな奴ね。障害を持ってる子なら、特に手を出しやすいって考える不届き者」

「なるほど」


 障害者支援センターに限らず、幼稚園とか児童館とかでそういうことをしてるのも、似たような理由なのかも。

 表通りから、グランドとか駐車場なんかを隔てて建物があるのも、外から距離を取って覗きにくくするため。

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