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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第5章 己の属性と向き合う話

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5-8.片足の、普通の女の子

 とにかく、俺が神箸家のピクニックに同行する様子を撮影されることはわかった。

 ちなみにこれから、ふたりでデートする所なんかも撮るらしい。


 あと、障害者支援施設の訪問も、俺に一緒に来てほしいと。


「なんでだ。俺、関係ないだろ」

「わたしがそう望んだからです! ひとりで行くより、信頼できる誰かと行きたいなって思って」

「いいのか? 俺じゃなくて、妹の方が同行者としていいんじゃないか?」


 同行者がいた方がいいのはわかる。けど、彼氏にそこまで踏み込ませるのも、なんか違う気がする。

 仲のいい家族と一緒にの方が、いくらか自然だ。


「あー。それがね。彼方にも一度お願いしてみたんだけど、断られちゃって」

「なんでだ?」

「気が進まないって。よくわからないよねー」


 遥も、本気でわからないようだった。


 中学の生徒会のメンバーで、次期会長を狙っているから人格者アピールは欠かさない子。俺に対抗意識を燃やすのも、一部はそれがあるはず。

 車椅子の姉を助けているのは、アピールポイントだ。


 テレビで障害者との交流をする場面を見せるのは、絶好の機会だと思うのだけど。


 なぜやらないかは、本人にしかわからないことだ。俺が立ち入ることでもない。


「というわけで、悠馬お願いします!」

「いいけど……彼氏連れで障害者センター……」

「そんな真面目な所じゃないからいいんだよ。障害を持つ子供たち、というか未成年者? が集まって交流したり、遊んだりする施設なんだって。放課後、親御さんの仕事が終わるまで預ける場所って意味もあるし」

「なるほど」


 遥の同年代の子もいるのだろう。テレビ的にも受けはいいだろうし、遥にとっても行きやすい。


「あと、澁谷さん言ってたよ。ドキュメンタリー全体のストーリーは、わたしと悠馬を軸にした編集にしたいって」

「いや、なんでだ」


 家族をはじめとして周囲の人に支えられながら、強く生きている少女、みたいな感じになるものだろ、普通は。


「障害者でも普通に恋をするし、好きな男の子と付き合ってもいい。普通の女子高生と同じことをしてもいいっていう映像にしたいんだって」

「……そうか。わかった。付き合ってやる」


 普通の女子高生な。遥は既にそうだ。片足がないのは大した特徴じゃない。あと魔法少女なのも同じく。


 普通に友達に囲まれて、青春を謳歌している。


 けど、世の中には障害を持ったが故に、普通を躊躇う人もいるかもしれない。

 そんな気に病むことはないと言ってやりたいけど、健常者の俺が言うよりは遥の方が適任なのはわかる。

 だから澁谷と話して、こういう方針にしたのだろう。


 単に、俺と遥が付き合ってる既成事実をめちゃくちゃ補強して、後に引けないようにする魂胆もあるのだろうけど。


「り、立派だと思うけど! 許さないからねー! うえっ。悠馬! 水持ってきて……」

「飲みすぎなんだよ、姉ちゃん」

「うん。自分でもわかってる……悠馬」

「なんだよ」

「本当に遥ちゃんと付き合っちゃ駄目だからね」

「わたしたち、付き合ってますからね」

「わたしの目の黒いうちは……うえっ」


 面倒な奴らだなあ。


「ねえねえ愛奈さん。愛奈さんって普段は、アクセサリーとかつけてるんですか?」

「ふえ?」


 ふと、つむぎが愛奈に声をかけた。机に突っ伏している愛奈は顔だけ上げて返事をする。


「アクセサリー? 現場で引っかかると危険だから、ほとんどつけないわよ」

「そっかー」

「どうしたのよ。おしゃれしたい年頃?」

「ラフィオと結婚する時に、サムシングフォーで人から借りたものを身につけるといいらしいので!」


 それ、まだ考えてたのか。


「十年早いわよ。でもまあ、今から探すのはいいことね」

「おいこら。さらっと僕とこいつの結婚を受け流すな」

「いいじゃない。妖精と人間が結婚しても。応援するわよ」

「それが許されるなら、姉弟で結婚も許されるようになるってお姉さんは思ってるんですよね?」

「お姉さん言うな。まあ、そういう魂胆はあるけど」

「あるのかよ」


 とんでもないことを平然と言うな。


「別に、結婚したからって子作りを絶対にしなきゃいけないわけじゃないもんねー。夫婦になって、他の女が付け入る隙を無くしたいだけだもの。悠馬、養って?」

「おいこら。離せ。酒臭い」

「えへへー」

「それで愛奈さん。アクセサリーですけど」

「ああ。お母さんが持ってたのが、しまってあるわね」


 俺の肩に腕を回して引き寄せながら、愛奈は思い出したように答える。


「お母さんも、人並みにそういうの好きだったわねー。わたしには何がいいのかわからなかったけど、ダイヤの指輪とかあったわね。真珠のネックレスなんかも。あと、あと……なにがあったかしら」


 思い出せないとばかりに頭を抱える。母の形見の記憶がないのは、深酒のせいか。それとも、本気でアクセサリー類に興味がないからか。

 いや、実際には。


「どっちにしろ、つむぎにはまだ早いよな。結婚の話も、アクセサリーをつけるのも」

「えー」

「悠馬もそう言ってるだろ。つむぎ、洗い物を手伝え」

「うー。ラフィオは十年後も、わたしと結婚したいって気持ちは変わらない?」

「そもそも今、結婚したいわけじゃない」

「もー。照れちゃってるんだからー」

「照れてない!」


 つむぎは結局、モフモフのラフィオがいれば十分なのだろうな。特に不機嫌にも見えず、キッチンに消えていった。

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