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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第5章 己の属性と向き合う話

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5-2.愛奈にお姫様抱っこ

 俺も、車椅子の遥と関わり出してから心境が変わったわけで。ちょっと前までは感動ポルノがダサいと思ってた側だから。今回は協力してやろうって気になっている。


 初めてのことだから戸惑ってるだけだ。


 まあ、そこまで気負うことでもない。

 全国ネットで流されるわけではなく、二日目のお昼くらいの時間帯の、各ローカル局が地元のみでやってる枠のドキュメンタリーだ。ゴールデンの時間に全国で流れるより、見る人はずっと少ない。


 撮影スタッフも、澁谷を始めとしてこっちの事情を把握しているクルーで固めるそうだ。本来は夕方のローカル情報番組のクルーなんだけど、その番組の延長という趣旨の企画らしい。


 遥と澁谷がよく話していたのは、それの打ち合わせというか、内容の相談だ。


 ドキュメンタリーの内容も、基本的には普段の遥の様子を撮ることで、障害に負けない元気な少女の姿を見せる、みたいなもの。つまり、いつも通りにしていればいい。

 一応、山場として市内の障害者支援施設を訪問する予定があるらしいけど、それも大したものじゃないらしい。


「遥は、そういう施設に行ったことはあるのか?」

「ないよー。他の障害者と関わったこと自体、あんまりないんだよね。病院でリハビリした時、ちょっとお話した子がいるくらい」


 そうだったのか。なんとなく気持ちはわかる。


 片足がないのは仕方ないとして、それでも自分で出来ることはやるし、これまでの知り合いと同じように囲まれた生活がしたい。それが遥の方針だ。

 他の障害者を下に見ているわけではない。それは、テレビに出て力を与えたいと言ってたことからも明らか。

 かと言って、同じ障害者の仲間が必要ではなかった。それだけのことだ。


「わたしは幸せ者だなって思うよ。周りに、こんなに手助けしてくれる人がいて。彼氏にも恵まれた」

「彼氏じゃない……って、今は言っても無駄か」

「既成事実として、そうなってるからね!」


 本当に。こいつに嵌められたと言うべきだよな。なんて強かな女だ。

 しかし今回は、こいつの策略が重要になっていて。


「わたしの彼氏役、頑張ってね!」


 そうとも。俺が遥を支える周囲の人間としてドキュメンタリーに出る以上は、俺の役柄は"現実"に即して彼氏ということになる。

 そして、俺と遥がデートするという約束を拡大解釈した結果が、このドキュメンタリーへの出演だ。


 拡大解釈の度がすぎるとは思うけど、決まってしまったものだから仕方ない。


 愛奈をテレビに出すためのご機嫌取りとしてデートに誘って、そのアドバイスを求めた対価としての遥とのデートでテレビに出る。

 我が事ながら、なんでこうなったのか不可解すぎる。


「ゆうまー! お酒持ってきてー!」


 愛奈がいつの間にか起きたらしい。酔いつぶれた後に復活して言うことがそれかよ。呆れながらテーブルまで戻っていく。


「ほら。今日はもう飲むな。寝ろ」

「やだー!」

「寝ないと明日が辛いぞ」

「寝ないもん! そうだシャワー浴びなきゃ! 悠馬、お風呂まで運んで」

「肩に担いで米俵みたいな運び方していいか?」

「お姫様抱っこでお願いします!」

「なんて図々しい酔っ払いだ。でも風呂入りたいなら後でな。酔ったまま入るのは危ない」

「そうねー。わたしも、記憶無いまま悠馬とお風呂入りたくはないし」

「ごく自然に混浴を試みるな」

「ふふん。なんか遥ちゃんとテレビ出るらしいけど、所詮は偽りのカップルだってこと忘れちゃ駄目よ。悠馬の本当の彼女はわたしなんだから」

「気持ち悪いことを言うな。実の姉と付き合う奴がどこにいる」

「にゃはは。ここに。この前もデートしてるし、姉弟でカップルっていうのもありだなーって最近思うのよねー」

「酔ってるからって言いたい放題だな」


 姉として尊敬できる所はあるけど、それを全部ぶち壊してくる酔っ払いを、本人の希望通りにお姫様抱っこで部屋まで運ぶ。


 本当は、肩を支えて歩かせるべきなんだろうけど。なんかできる気がしてやってみたら、できた。

 愛奈が軽いこともあるのだろう。けど、日々の俺のトレーニングの成果が出ているような気がした。


「ふえっ!? ちょっ!? 悠馬!?」

「姉ちゃんがやれって言ったんだろ?」

「そうだけど!」


 本当にされるとは思ってなかったらしい。愛奈が、酒のおかげで元々赤かった顔をさらに赤面させる。


「待ってこれ。本当にやられると恥ずかしいわね」

「だったら降ろそうか?」

「ううんこのまま。それに、お姫様抱っこやってくれるなら、一緒にお風呂とかも押せばいけるかもって思えてきたし。ここは引かないわよ」

「入らないからな。てか、一緒に風呂入るのは恥ずかしくないのか」

「恥ずかしいわけないでしょ? 昔は一緒に入ってたんだから」

「本当に覚えがないんだよな……」

「それに下着とかは普段から洗ってもらってるし、だから下着姿見られても恥ずかしくないってことよね? そこから少し踏み込むと、裸見られてもほら、恥ずかしくない」


 お姫様抱っこは恥ずかしくて、裸を見られるのは恥ずかしくない理屈がわからない。


 なのに愛奈は、ブラウスのボタンを外して下着を見せようとしてくる。

 ちょっと照れてるように笑ってるし、指も少し震えている。なんだかんだ、ほんの少しだけど羞恥心はあるらしい。だったらやるなよ。だとしなくても、やらせないけど。


「やめろ。降ろすぞ」

「やー!」


 服を脱ぐのを中止した愛奈は俺に寄りかかってきた。体重を預けてくれた方が持ちやすいのはいいけど、これをされると体がより密着する形になるんだよな。


 実の姉が相手なのに、妙に恥ずかしくなった。もうお姫様抱っことかしないからな。

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