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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第4章 偽物

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4-50.コスプレ魔法少女を守りながら

 攻撃よりも回避の方を重点的に見ているから、セイバーの剣が当たらない。時折は当たっているらしく魔法少女のコスプレ衣装にはいくつか裂け目ができていた。

 けど殺すには至ってないし、フィアイーターの傷はいずれ回復するもの。


 あのふたりを放っておけば、人間である岩渕先輩が襲われる。ゆえにセイバーは対処にかかりきりになっていた。


「ああもう! ちょくまかと! じっとしてなさい!」

「お姉さん! そんな戦いの素人なんかさっさと倒してください!」

「うるさいわね! わたしだって戦いの素人なのよ! あとお姉さん!」


 言うな、を省略するあたり、ちょっと余裕がなくなっている様子だ。


 セイバーがああなっているから、フィアイーターの対処はライナーが単独でやらないといけない。

 黒タイツたちは先輩がなんとかしてるけど数が多く、殺すにも慣れてないからこっちにも襲いかかってくる。


 よく見れば、エスカレーターを登ってラフィオたちの方に行く黒タイツもいるし。まあそれは、逃げ場の制限されるエスカレーターに入った時点でハンターに首を射抜かれて死ぬ運命にあるのだけど。



 さらに、攻撃よりも回避に力を置いているのは、フィアイーターも同じだった。奴は広場をちょこまかと動き回って、ライナーから逃げ続けている。

 こっちは追いかけるのも難しい。だって。


「フィー!」

「ああもう! 邪魔!」


 前に立ちはだかった黒タイツの股間を思いっきり蹴り上げて倒し、そいつの頭を踏みつけて殺す。

 こうやって邪魔があるから、フィアイーターを追いかけられない。


 広場の左右には、駅に併設されている百貨店の入り口がある。見たところそこに人の姿はないけど、上階には逃げ遅れた人もいるかも。百貨店の上はホテルやオフィスが入っている高いタワーだから、避難にも時間がかかるし。

 そうじゃなくても、広場から出て被害を拡大させる前に倒さないと。

 なのに。


「人手が足りない! ハンター! フィアイーターの足を射抜けない!?」

「無理です! 忙しいです!」


 黒タイツが、手前の仲間の屍を乗り越えてでもラフィオの方に殺到しようとする。ハンターはそれの対処に忙しいし、ラフィオもキエラと追いかけ合いをしている。

 こっちを手伝うのは無理か。じゃあ。


「先輩! いけそうですか!?」

「ああ。でも少しきつい。怪物とはいえ、殺すっていうのはエネルギーを使うね」

「そうですね! 頑張ってください!」


 先輩は早くも息が上がっているようだった。何分くらい戦い続けている? 全力で戦うのなんて、人間のスタミナでは長続きしない。長距離走だってペース配分が大事なんだ。

 それでも、彼はまだ戦えていた。


 トンファー仮面の武器を巧みに扱っている。長い方の棒を腕に沿わせる形にして黒タイツの打撃を受けた後、踏み込んで敵の懐に潜りつつトンファーを半回転。打撃をお返しして昏倒させた後、首を突いて殺した。

 使い方はネットで覚えたとかかな。元々の身体能力の高さから、ちゃんと戦えていた。


 ただし殺傷力はそれほどでもない。トンファーは刃物ではないから、一突きでは殺しきれず、執拗に首と頭部を攻撃する羽目になっていた。

 仕方ない。


「先輩! わたしの方に一体寄越してください!」

「わ、わかった!」


 飛びかかってくる黒タイツを避けた後、先輩はそいつを蹴飛ばした。ライナーの方によろめきながらやってきた黒タイツを、彼女は思いっきり蹴り上げる。


「ぶっ飛べー!」

「フィア!?」


 蹴るというより蹴飛ばされたそれは宙を舞い、広場から逃げようとしたフィアイーターの目の前を通り過ぎていって怯ませる。そして壁に当たって死んだ。

 かわいそうに。自分でやったことだけど。


 ライナーは走り、フィアイーターの前に出る。攻撃こそ当てにくいけど、足の速さはこっちの方が上だ。なんとか広場の方に押し戻さないと。


「ちょっとライナー! あの魔法少女から離れないでよ! 危ないでしょ!」


 あ、それもあった。先輩が思ったより頼りになるから、守らなくてもなんとかなるって無意識に思ってしまってた。

 そんなはずはないのに。彼だって、まだまだいる黒タイツに囲まれたらまずい。先輩自身もわかっているから。常に退路を確保できるような立ち回りをしている様子。けれど限界はある。

 しかも。


「ま、魔法少女、さん! か、覚悟!」


 パインが、短いスカートが翻るのを気にしながら先輩の方に駆けていく。動きはぎこちないけれど身体能力は高い。あっという間に先輩に接近した。けど。


「やらせない!」


 セイバーも動きが速かった。パインの背中に斬りかかり、大きな傷をつけた。ピンク色のコスプレ衣装に大きな裂け目。ブラのホックも切り裂かれたのがちらりと見えた。

 それでパインは大きく体をのけぞらせ、先輩は危機を逃れた。


 セイバーはなおも、パインの体を切り続ける。あわよくばコアを砕こうとしているのだろう。返す刀で別方向から背中を斬り、さらに追撃しようとして。


「パイン!」

「あ……」


 後ろからティアラが迫っている。セイバーはもちろん迎撃しようとしたけど、彼女が持っている剣の刃をパインが掴んだ。そのせいで、振り返る動きが止まる。

 ティアラはその隙に、セイバーに手を伸ばした。服を掴んでしまえば、あとは力ずくで地面に引きずり倒せば、頭を床にぶつけるとかで重篤なダメージを与えられる。


 そのはずだったけど。


 刹那、ティアラに横から飛び蹴りが炸裂。彼女の手がセイバーに触れる前に、ティアラの体は倒れ込んだ。

 飛び蹴りを放った者は綺麗に地面に着地。両手にナイフを持った彼はすぐに立ちあがり、セイバーを見つめた。


「弟、参上だ」


 彼、悠馬が得意げに言った。

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