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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第4章 偽物

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4-48.模布駅のエスカレーター

 看護師に見送られながら病院から出たタイミングで、周りのスマホが一斉に警報音を出した。

 フィアイーターか。昨日の今日で忙しい。


「金時計の所か……」


 SNSで金時計と調べると、黒タイツやフィアイーターが暴れている動画が既に投稿されていた。

 その中で、赤い魔法少女が果敢に戦っているのも。しっかりと、あのトンファーを駆使していたし、黒タイツを殺す勢いで殴っている。


 さすがにフィアイーターには勝てないようで、そちらからの攻撃は避けるしかない様子だけど。


「岩渕先輩? なんでまた」


 戦うことを期待しているとはいえ、フィアイーターが出たのはついさっきだ。現場に行くには早すぎる。

 あらかじめキエラの行動を予想していたのか。あるいは。


「覚悟を示すために、わざとキエラを呼び寄せたのか? 挑発するとかで」


 まったく。やることが突拍子もない。これで敵を倒せればいいのだけど、怪我でもしたら元も子もない。


 実際、魔法少女の力がなければフィアイーターまでは倒せないし。キエラたちも近くにいるようだ。


「麻美。俺も行きたい」

「ええ。ちょっと遠いわね」

「どれくらいかかる?」

「車で十五分ってところかしら。乗って。それから、後部座席の足元に工具箱があるでしょ?」

「あるな」

「底の方にナイフの予備がいくつか入ってるから。遥ちゃんに渡すつもりだったけど、直接渡すことになったわね。持っていって」

「ありがとう。使わせてもらう」


 数本持ってポケットに入れた。


「じゃ、飛ばすわよ。警察に目をつけられない程度に安全運転で、急ぎます!」


 俺がシートベルトしたのを見ると、麻美は車を急発進させた。思ってたより運転が荒い。急いでるからなんだろうけど。



――――



「赤い魔法少女さん! 助けに来ました!」


 ラフィオが現場に到着すると、乗っていたハンターが剛に挨拶をした。

 コスプレした男だけど、周りに名前を知られないようにと配慮しているのか、それとも魔法少女のひとりと認めているのか、そんな呼び方だ。


「助かります! 魔法少女さん!」

「あんたね! 戦えとは言ったけど、ちょっとタイミング良すぎないかしら!? わたしたちより早く着くなんて」

「もしかして、先輩がこのフィアイーター呼んだんですか?」


 セイバーの呼びかけに、ほぼ同じ頃に着いたライナーが答える。家が近いから、到着時刻も似たようなものだ。


「はい! 俺……わたしが呼んだ!」

「いや。なんでよ」

「戦うって意思を見せるためだろ。やり方については話し合いがいるけどな! とにかく今は敵を殺すことが優先だ!」

「ラフィオ!」


 青い魔法少女のコスプレをしたキエラが、ティアラとパインを引き連れて立っていた。そして、期待に満ちた声でラフィオに呼びかける。


「ねえ! この男は誰なの!? 昨日からウザいんだけど!」

「お前と話してる暇はない! セイバー、お前は赤い奴の近くに行ってやれ。残りでフィアイーターの排除だ」


 ラフィオは敵を見た。フィアイーターは大きい。元々背の高かった金時計に足が生えているから、より高くなっている。

 胴体の部分だけで四メートル半くらいありそうだ。しかも胴は金色の支柱で細長い。そこから生える手足も細い。時計部分が顔だな。


 細いゆえに攻撃が当てづらいが、当たればダメージは大きそうだ。コアは、細い胴や手足にあるとは考えにくい。ということは頭部だろう。


 敵も攻撃を食らうのが致命傷に繋がるとわかっているのだろう。ちょこまかと歩き回りながら、狙いを定めにくくしている。


 周りを見る。金時計があったと思しき箇所の近くには、少し高い位置に繋がるエスカレーターが四本。上がりと下りのエスカレーターを二本ずつ作ってる理由はわからないけど、上に通路があり、手すりがついていて下を見下ろせるようになっている。

 つまり、上からハンターに敵を狙わせられる。背の高いフィアイーターの頭部も、高いところからなら狙いやすい。


「ハンター! 上に行くぞ! そこから敵を狙え!」

「ああっ! ラフィオ待って!」


 先に返事をしたのはハンターではなくキエラだった。黒タイツどもをかき分けてこっちを追いかけてきた。


「ハンター! あいつの首を射抜け!」

「うん!」


 稼働中のエスカレーターの手すりに乗り、器用に登っていくラフィオ。その上でハンターは、やはり器用に上体を反らせて後ろを向きながら矢を放つ。

 本来なら黒タイツやフィアイーターをめがけて放つはずの矢は、自身と同じ格好で同じ年頃の少女に向けられることとなった。

 それでも狙いは正確。エスカレーターを駆け上がっていくキエラの首に当たる軌道だ。


 けど、向こうも強敵だった。


「うざいの! あんた!」


 キエラはラフィオと同じような存在。だからモフモフの獣になることもできるし、そのまま大きくもなれる。


 ピンク色の四足歩行の獣がエスカレーターの上で身を伏せ、矢がその上を通り抜ける。さらにキエラは跳躍。エスカレーターの行き着く上に、先に舞い降りた。

 そこへラフィオが突進をかける。キエラの体を押さえつけた。


「今だ殺せ!」


 ラフィオの、自分の同族の存在に対する本気の殺意。ハンターもそれをわかっているから、キエラの顔に向けて弓を引き絞る。

 殺意を真剣に受け取っていないのはキエラだけだった。

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