表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第4章 偽物

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

178/746

4-23.陸上部の練習風景

 小学生ふたりで行くのも危険だからと、年上のお姉さんが付き添い。わかるとも。


「懐かしいなー。小学校の遠足で行ったきりだと思う」

「遠足の定番の場所だもんな」

「そうそう。普段から行こうって思う場所じゃないけどさ。この足になってからは、気軽にお出かけとかできなくなって」


 どうとも思ってなかったお出かけスポットも、急に魅力的に見えてきたのか。


「お父さんたちにお願いしたら連れて行ってくれるだろうけど、家族じゃなくて友達と出かけたいこともあるのです」

「うん。わかる」

「つむぎちゃんたちは今回、わたしに付き添われつつ、わたしの付き添いでもあるの」

「頑張って車椅子押すね!」


 ラフィオと並んでお皿を拭いているつむぎが、こっちに笑顔を向けた。


「頼りにしてるよー」

「自分でも車椅子動かせるだろ」

「まあね! けど、人の好意は無碍にしない趣味なので」

「そっか。楽しんでこいよ」

「うん!」

「悠馬ー。お酒まだー?」

「あいつは本当に」

「行ってあげて。今だけは甘やかしてあげようよ」

「ああ。今だけ、な……」


 冷蔵庫から酒を取り出して食卓に戻る。こいつは、まだまだ飲むつもりらしい。


「そろそろ今日は寝ろよ」

「まだー」

「まったく。ほら、部屋まで運んでやるから」

「ほんと!? お姫様抱っこして!」

「なんでそうなるんだよ」

「女の子の憧れだからです!」


 持ってきた酒を煽りながら、愛奈は無い胸を張って自信満々に答える。


 そうなのか? お姫様抱っこって言うもんな。女の子はお姫様に憧れるものなんだろうな。

 この前、ライナーが俺にやってたし。あれも自分がされたいっていうのの裏返しなのかな。


「ねえ悠馬ー。やって!」

「姉ちゃん。体重いくつだっけ?」

「やだもー! 女の子に体重訊くなんてだめよ!」

「あんまり重いと、俺が持てないからな」

「大丈夫! わたし軽いから! まあ、胸の分だけちょっと重いかもしれないけど!」


 果たしてそれは冗談で言ってるのだろうか。それとも酔いすぎて自分の胸のサイズすら忘れたのか。

 けど、甘やかしてあげてもいいか。


「わかった。いずれ、お姫様抱っこできるようにしてやる」

「ほ、ほんと!?」

「ああ。今は無理だけどな。その時に備えて、姉ちゃんも太ったりするなよ」

「了解です!」

「酒も控えろよ」

「それはやだ!」


 だと思ったよ。




 酔っ払いとの戯言とはいえ。俺が体を鍛える意義があるのは間違いない。

 主に、敵との戦闘に役に立つ。決して姉を抱きかかえるのが主目的ではない。


 人間を材料にしたフィアイーターがひとり増えたのもあって、俺は翌日もトレーニングに力を入れることにした。

 つまり、遥も所属していた陸上部にお邪魔して、トレーニングに混ざるというものだ。


 ここで走るたびに思う。こいつらはすごい。ただただ走ることに青春を懸けて、俺には敵わないような体力を持っていることを涼しい顔で見せつけてくる。


 とはいえ俺も、最初のランニングをそこまで苦労せずに終えることができた。グラウンドを何周もするなんて最初の頃は無理だと思ってたけど、だんだん楽に終えられるようになってきた。

 体力がついたというよりは、疲れにくい走り方と呼吸の仕方が身についた方が大きいのだろう。


 それだけじゃ楽に運動を終えられるようになっただけで、強くはなってないのではという懸念もあるけど。


「いいのいいの。疲れにくくなったということは、それだけ練習量が増やせるってことじゃん。ここからどんどん強くなっていくよ。それに、自分の楽な動き方を自然にできるようになったなら、戦いの時もうまく動けるってことだよ。長期戦になっても疲れにくいし、悠馬は確実に強くなってる」


 そう遥に言われたら、納得するしかなかった。


「あと、楽に練習終わらせられるだけとか言うのは、みんなのやってるメニューを最後まで出来るようになってから言いなさい!」


 こう怒られもした。

 おっしゃる通りだ。


 始めのランニングこそリタイヤすることなく終えられるようになったけど、そこから続く基礎練習や個々の部員に合わせた運動なんかには全くついていけてない。


 ちなみに、短距離走の選手の練習メニューについていくことにしている。ついていけてないけど。

 これも、ひとつひとつコツを掴んで鍛えていくしかないな。


 決意を新たにしながらも、今はグラウンドの片隅で遥と並んで座ってはちみつレモンを飲んでいた。


「あいつさ」

「誰?」

「沢木」

「うん」


 遥に、陸上部所属のクラスメイトの男子の名前を出す。クラス内ではお調子者として通ってる奴だ。

 あと女好き。


「女子と付き合うことばっかり考えてる馬鹿だと思ってたけど、陸上に関しては真剣なんだよな」

「だねー。わたしも告白されたこと、あるよ」

「マジか」

「一年の時にね。断ったけど。手当たり次第に告ってるから、彼氏作るにしてもこいつはないなって」

「だな」


 『青春送るには彼女は絶対っしょ』が口癖の沢木は、少しでも関わりがある女子に告白しては、普段からの軽い言動が災いして玉砕を繰り返している。


 そんなチャラい男でも、陸上の練習に臨む姿勢は真剣そのものだった。

 当然、俺よりも運動ができるわけで。ちょっと見直した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ