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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第4章 偽物

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4-22.パインのこれからの幸せ

 ここ、エデルードとあちらの世界を繋げる穴には、我が家であるアパートが見える。キエラの力なら、場所さえ指定すればこんなにすぐに行けるなんて。


「気持ちわかります。わたしも同じでした。わたしの場合はミラクルフォースに憧れてて。そことは程遠い、ここみたいなボロボロのアパートに住まされていて」


 アパートを見て、ティアラが隣に寄り添って手を握ってくれた。


「わたしたち、これからは楽しんで生きましょう。その資格があるはずです」

「うん。そう、ですよね!」


 そして三人揃って、アパートの前に出る。


 鍵を使って部屋の中に入ると、直後に声をかけられた。


「遅えよ! いつまで出かけてるんだ!?」


 兄の声。あんたが、コスプレの出来を上げろって言ったのに。なんで出かけると文句を言われるんだ。


「今夜もやるんだ。さっさと衣装直せよ! たかが洋服なんかにチマチマ手前かけやがって」


 こちらを一瞥もせず、床に横になりながらスマホを凝視しながら怒声を浴びせてくる。

 どうせ大した物を見てるわけじゃない。今夜の仕事を終えた後の風俗の品定めとかだ。


「あと酒だ! おい! 酒取ってこい!」


 兄の傍らには既に大量の空き缶。自分で取ってくればいいのに。わたしがいる時は、いつもそうだ。顎で使って、言うことを聞かなければ殴ってくる。

 うんざりしながら冷蔵庫に向かおうとして。


「言うこと聞かないでください」


 ティアラに止められた。


「そうよ。今のパインは強いの。魔法少女とも戦える怪物なんだから。あんなちっぽけな男の言いなりになんか、なることないわ」

「おい。誰と話してる?」


 知らない声が家の中でする。それに気づいた兄は、ようやく怪訝な顔でこちらを見た。

 ボロボロの魔法少女のコスプレをした小学生と高校生ほどの少女の存在に、彼は呆気に取られていた。


「そいつは誰だ……」

「パイン。やっちゃいましょう。どうせ、これからのパインには必要ない人間よ」

「うん。そうだよ。パインさん、わたしがついているから」


 ふたりの言葉は暖かいな。

 そうとも。わたしは、この生活から決別するんだ。


 パインは呆然とこちらを見ている兄に歩み寄り、片手で胸ぐらを掴んで無理やり立たせた。

 片手なのに、なんの苦もなくできる。体に力がみなぎっている。


「お、おい。やめ、やめろ……」

「うるさい」


 そしてパインは、拳を作って兄の顔面をまっすぐ殴った。いつも、兄からされてきた仕打ちだ。

 鼻が折れて、血がダラダラと流れる。


「あ、あがっ。ひゃ、ひゃめ」

「やっちゃえ、パイン」


 キエラの囁きに頷きながら、パインはさっきよりも力を込めて殴った。


 骨が砕ける音。兄の顔面が陥没して、全身から力が抜ける。鼻と口から、血がとめどなく流れていった。

 手を話せば、あれだけうるさかった兄はドサリと音を立てて倒れた後、ぴくりとも動かなくなった。


 パチパチと、キエラが控えめな拍手をするのがわかった。


「すごいわ。じゃあ、早速衣装を直してほしいわ。あ、その前に脱がないとね」


 キエラもティアラも、躊躇なくコスプレを脱いで下着姿になる。それを横目に、パインは衣装関係を置いてあるスペースまでふたりを案内した。


「ええっと、これが、セイバーの衣装、です」

「すごいわ。もう出来てるなんて!」

「ちょっと、手直しすることがある、から……」


 そして三人で、兄の死体があるアパートの一室で、しばらく衣装の手直しをすることとなった。


 コスプレしたら友達ができた。そんな事実を、パインは噛みしめる。なんて幸せななんだろう。


 友達のお喋りはずっと続き、アパートからエデルード世界へと場所を変えてもなお続いた。



――――



「ゆうまー。お酒出してー」

「まったく。少し甘やかしたらこれだから」

「だってー」


 樋口が、引き続きパインちゃんの身元調査を進めると言って帰れば、愛奈はすぐさま酒盛りを始めた。


「澁谷から連絡が来たぞ。撮影の原稿ができたから、都合のいい日を教えろって」

「あーうー。ビール」

「ほらよ」

「えへへー。悠馬ってお願いしたら聞いてくれるから好き!」

「はいはい。それで。都合のいい日は?」

「明日! そして週末はデートです!」

「わかった。連絡しておく」


 明日スタジオ貸してくれって言って、用意できるものだろうか。案外いけるかもな。短時間だし、愛奈の仕事が終わってからなら夕方から夜の時間帯。

 時間的余裕はあるし、スタジオを確保するくらいならできるか。澁谷にメッセージを送れば、すぐに了承の返事が来た。


「やっぱり、愛奈さんが悠馬とデート行くの、やっぱ悔しいんだよねー」


 キッチンでラフィオと並んで洗い物をしている遥に、そう話しかけられた。


「わかったから。遥ともデートするから。どこ行きたい?」

「景色がきれいな場所! あ、でも愛奈さんと被らない方がいいから、そっちのデートが終わったら決めるね」

「わかった」

「けど週末かー」


 さっきの愛奈の言葉を聞いていたらしかった。


「今週末はわたし、ふたりのデートの付き添いとなりました」

「ラフィオとつむぎの?」

「そうだよ。動物園行きたいってさ」

「なるほど」


 うんざりした様子のラフィオが付け加えるまでもなく、つむぎの希望なのはわかる。

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