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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第4章 偽物

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4-15.魔法少女のティアラ

 ライナーが目の前の光景にあげた驚きの声。俺も、ほぼ似たような感情を抱いていた。

 キエラとティアラはなんで魔法少女のコスプレなんかしてるんだ? フィアイーターの方は、そういうマネキンを変えたというのはわかるんだけど。


「あれ確か、プリクロのキャラだね!」


 フィアイーターの方を見たライナーが教えてくれた。


「……プリクロ?」

「プリンスクロニクルってゲームのキャラ! ハッセが好きなんだって! 歴史上の王様をイケメン化させたキャラのゲーム! ああいう服のキャラがいたの、見せてもらったことある!」

「へえー。なんて名前のキャラだ?」

「覚えてない! わたしが歴史の名前とか覚えてるはずないでしょ?」

「馬鹿だもんな」


 そういうゲームがあって、女に人気あってコスプレ需要もあるのはわかる。

 そんな実のない会話をしながら、俺は黒タイツの首にナイフを刺す。絶命して倒れた黒タイツがゆっくりと消滅していく。横を見れば、同じく喋りながらライナーが回し蹴りで黒タイツの首を折っていた。


「あははー! わたしもゲームやったら歴史ちょっとは得意になるかな!?」

「そこからちゃんと勉強に繋げられたらな」

「無理! 勉強嫌い!」

「そこは勉強しろよ」

「とりゃー!」


 返事をする代わりに、俺が胸ぐらをつかんだ黒タイツをぶん殴って昏倒させるライナー。真面目に戦ってくれているのは嬉しいんだけどな。


 店の入り口付近にいた黒タイツはみんな殺した。だから向こうに見える、魔法少女姿のキエラたちがラフィオとハンターに襲いかかろうとしている場に向かう。当然、俺よりもハンターの方が早く到達できる。


「やめなさい!」


 と、キエラに突っ込んでいくハンター。気合いの入った飛び蹴りをキエラは避けたけど、すれ違いざまにハンターが奴の襟首を掴んだから結局は転倒することになった。

 なんかのアニメの女子制服が大量に掛けられているハンガーラックに頭から突っ込んだキエラは、服だけではなく床に顔面をぶつけることになったらしい。


「キエラ!?」

「おい! 日野ティアラ!」


 仲間を心配して駆け寄ろうとしたティアラに、俺は声をかけた。フルネームで、注意を引くためにだ。実際、彼女の動きが止まった。


「ティアラ! こんなことはやめろ。あの女は人類を滅ぼそうと」

「でも! キエラは友達だもん!」

「ああ。そうだな。だが俺たちの、魔法少女の敵だ」


 まだ使えるナイフを手に、ティアラの方へと向かっていく。敵愾心を隠すつもりはない。話しかけたのは、キエラを助けに行くのを足止めするため。


 この手の説得でティアラを変えられるとは思わない。彼女は既にフィアイーターで、キエラから離れることはできない。彼女を救うには殺すしかなく、それをティアラ本人が受け入れるとは思わなかった。

 彼女自身も、キエラを友として扱っているようだし。一緒に魔法少女のコスプレをする間柄なんて、並大抵の親密さじゃない。


「今はわたしが魔法少女なの! キエラと一緒に! それで、キエラがあの子よりも可愛いって証明するの!」


 理解できないコスプレの理由を話すティアラの視線は、キエラとライナー、そして黒タイツたちを倒していってるハンターたちを交互に見ている。俺はあまり注目されていない。


「ああ! こいつらの言ってること、理解できないでいい! 後で説明するから今はこいつを殺すことを第一に考えろ!」

「キエラよりわたしの方が可愛いことだけわかってればいいです!」

「この馬鹿の言う事も今は無視しておけ!」


 ラフィオとハンターは仲がいいな。こんなこと言いながら、連携が取れているのだから。


 ライナーはといえば、倒れたままのキエラの脇腹を何度も蹴り続けている。床に押し付けるように上から体重をかける蹴り方だ。

 かなり殺意の高い蹴り方に、小学生女子くらいの体型でしかないキエラは身をうずくまらせて耐えている。魔法少女の蹴りで死なないのだから、こいつも頑丈だよな。ハンターを模した衣装だけは汚れて破れて、無惨なことになりかけている。


 そして俺は、語りかけながらティアラに近づいていった。早足で、けれど語りかけられながらキエラたちを気にしているから俺の接近に気づかない。


「魔法少女の敵になりたいのか? 魔法少女になりたいのか?」

「魔法少女になりたい! けど無理ってキエラに言われた! キエラは友達だから!」


 その友達を助けるべく、ティアラはライナーの方に踏み出した。俺も、最後の数歩は一気に距離を詰めてナイフを振る。フィアイーターでもナイフで傷はつけられるはずだ。

 けどうまくいかなかった。同じフィアイーターでも、人間が変化した特別製はずっと強いようだった。


「来ないで!」

「うおっ!?」


 俺のナイフを、咄嗟の動きにも関わらず完璧に見切り、そして腕を振って俺を追い払おうとした。


 洗練はされていない、大ぶりな動き。けれどそれが俺の胴に当たったらただでは済まないと察した。フィアイーターの破壊力を持っているのだから当然だよな。

 俺も咄嗟に飛び退いたけど、ティアラの方が早く、胸に強烈な圧迫感。後退していたから衝撃はある程度軽減されていたけれど、直撃していたら死んでいたかもしれない。


 実際、俺の体は宙を舞い、衣装が吊るされていたハンガーラックに背中から落ちた。クッション代わりになるものがあったから良かった。痛みこそあるけど、体に異常はなさそうだった。


「悠馬!?」

「痛いのよ! あんた!」

「おっと。あっ! 待って!」


 ライナーが俺に気を取られた瞬間、キエラが抜け出した。


「やっぱりあいつが一番弱いわよね! わたしほど可愛くはないけど、邪魔だし殺すわ!」


 まったくもって正しい判断だな。弱い奴から倒していくべきっていうのは。

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