表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第4章 偽物

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

169/746

4-14.魔法少女のコスプレ

「なんの格好なんだろう」

「わかんないけど、モフモフじゃないよね!」

「それは見た目でわかるな!」

「フィアアアア!」

「おっと!?」


 フィアイーターが力をこめて棚を殴ったものだから、金属製のそれがひしゃげてラフィオが乗れる状態ではなくなった。


 ハンターが床の上の黒タイツの頭部を射抜いて殺して消滅させ、ラフィオがそいつの位置に着地。数メートルの距離でフィアイーターと対峙。棚で仕切られた通路だから。左右は塞がれてる形だ。敵が棚を登ってくることはあるだろうけど。


「イケメンが着れば格好いいんだろうな」

「あ、こういう格好、女の人がよくやるらしいよ!」

「そうなのか……? 人間の文化は奥深いなあ」

「女の人がやった方がイケメンに見えたりするらしいよ」

「それはなんとなくわかる!」


 ハンターはフィアイーターと対面して、コアに当たればいいなと思いながら体のあちこちを射抜く。首。額。心臓。当たれば人間なら死ぬ箇所だけど、そこにコアはないらしい。


「むうー!」

「手足を射抜いて動きを止めろ! あと体の向きを変えろ!」

「なんで!?」

「フィー!」

「あ! わかった!」


 後ろから黒タイツの声が聞こえたものだから、ラフィオはそっちに対面。またがってるハンターは前後を反転させて逆方向を向く形に。

 ラフィオは黒タイツを前足で踏みつけて動きを止めながら、体重をかけて頭部を踏み潰す。黒タイツはこれで死んで消滅する。が、黒タイツは次々に出てくる。


「ああ。面倒だ……」

「ラフィオ! こいつ死なない! 足にはコアなさそう!」

「だろうな!」


 ちらりと振り返れば。膝に十数本の矢を受けたフィアイーターが倒れているところだった。足止めにはなるな。格好いい王子様のズボンがボロボロだ。


 このまま黒タイツを片付けてから、こいつをハリネズミみたいになるまで完膚なきまで矢を刺せば、いつかは殺せるかもしれない。天井の照明があるから矢が尽きることはなさそうだし。

と考えていたのだけど。


「はぁい! ラフィオ!」

「……は?」


 フィアイーターから前方の黒タイツに視線を戻す途中、棚の上に視界が向いた。

 そこに、見覚えがあるが見たくない光景が広がっていた。


 敵は、しっかり見てほしいのだろう。黒タイツたちの動きが止まった。フィアイーターは、膝の矢を必死に抜こうとしているけれど。どうやらハンターもそれを阻止するどころではなかった。


「ラフィオ! 似合っているかしら、この格好!?」

「キエラ……その格好は……」


 ハンターの格好をしたキエラと、ライナーの格好をしたティアラが棚の上に立っていた。魔法少女の衣装に完全に合わせている上に、ウィッグまで被って完全に似せていた。顔が知っている相手だから、何者なのかはすぐにわかったのだけど。


 ラフィオのすぐ頭上に近い位置ということで、スカートの中のショーツが一瞬見えてしまって、ラフィオは一歩退いた。


「この格好、着るの時間がかかるのね。形が複雑だし、パーツが多いのよね」

「ウィッグっていうのも面倒だよね。初めてだから、どうすればいいのかわからなくて、時間かかっちゃった」

「でも、そのおかげでラフィオに完璧なコスプレを見せられたわ。どうかしらラフィオ? 似合ってるでしょ? そのガキより、わたしの方が可愛いでしょう?」

「わたしの方がかわいいもん!」


 楽しそうに語るキエラに、ハンターは敵愾心を隠すことなく矢を放った。キエラはそれを難なく避ける。


「あなた……嫌い! 人間のくせにラフィオと仲良くして! いい!? 青い魔法少女にふさわしいのは、あなたじゃないの! わたしなの!」

「シャイニーハンターはわたしです! あとラフィオの恋人もわたしだから!」

「いや。僕に恋人はいない。今の所誰でもない」

「ラフィオ! こいつやっつけていい!?」

「それはいい。あと訊くまでもなく殺す勢いだろ」


 キエラのしている格好も、察せられたその理由も、見事に乗っかって対抗意識を燃やしているハンターも、ラフィオの気力を削ぐには十分だった。


「ティアラ。なんでラフィオはわたしを見てくれないのかしら」

「んー。なんでだろ……わからない。こんなに綺麗な格好してるのに」


 ハンターの矢を器用に避けながら、キエラとティアラは正気とは思えない会話をしている。

 この店を襲って、コスプレ衣装を盗んで現れているのが自分のためだと確信できた。


「勘弁してくれ……」

「ねえラフィオ! 絶対、わたしの方がキエラより可愛いよね!?」

「あー。うん。それはそう。キエラは嫌いだし可愛くない。お前も恋人ではないけれど」

「やったー! やっぱりわたしたち、いいカップルだよね!」

「なんで都合の悪いところだけ聞こえないんだろうな」

「やっぱりあの女むかつくわ! やっちゃって! わたしも戦う!」


 カップルであることは否定したけれど、キエラにとってはハンターとラフィオの関係は怒りを生むのに十分だったらしい。

 膝の矢を抜き終わったフィアイーターがヨロヨロと立ち上がる。黒タイツどもも、ラフィオに向かってきていた。


 さらにキエラとティアラも戦いに参加するって? あいつらがどれだけ強いかは知らないけど、ちょっと戦力差がありすぎないだろうか。

 ラフィオが焦った瞬間に。


「おまたせ! 魔法少女シャイニーライナーです! ラフィオ! フィアイーターどこ!?」


 ようやく味方がやってきた。自分の気苦労を少しは分かち合えるという意味でも、貴重な味方だ。


「えっ!? ちょっと悠馬! あれなに!? てかフィアイーターがコスプレしてる! あとティアラがわたしの格好してる!」


 うん、まずはそこに驚いてくれるよな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ